海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
まず通らないと分かっていながら、それでも応募してみたことはありませんか。日本語なら「ダメ元で」と言うところですが、英語には見込みの薄さと試す価値の両方を一語で背負う言い方があります。
その表現「a long shot」を、『メンタリスト』シーズン4第3話、過去の事件から洗い出した目撃者リストを前に、リグズビーとヴァンペルトが手応えを確かめ合う場面から、一緒に見ていきましょう。
「a long shot」の意味とニュアンス
a long shot
意味:成功する可能性が低い試み、見込みの薄い候補
long shot は、成功する可能性が低い試みや候補を指します。遠くの的を狙う一撃のように、当たる見込みが薄いという感覚が中心です。成功したときの見返りが大きい場合にも使えますが、それは必須条件ではありません。
日本語では「望み薄」「可能性は低い」「ダメ元」などが文脈に応じて近くなります。人や計画を主語にして、当選・成功・解決の見込みが低いことを述べることもできます。
It’s a long shot, but … と続けて、それでも試す流れを作るのは典型的な使い方です。ただし、語そのものが「試す価値がある」と保証するわけではなく、単に見込みの低さを評価する文でも使われます。
人に頼みごとをするときの前置きにも便利です。I know it’s a long shot, but … と切り出せば、断られる前提を共有したうえで頼めるので、押しつけがましさが下がります。
【ここがポイント!】
- 核は「遠くの的をひとつ狙う」という距離の感覚
- 中心にあるのは成功確率の低さで、大きな見返りは必須ではない
- not by a long shot は「まったく〜ない」と否定を強める別物なので混同に注意
『メンタリスト』S04E03のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
同じ手口の事件が過去にも起きていたと分かり、捜査班は処理済みの事件を洗い直します。リグズビーが持ってきたのは、現場近くで作業していた作業員、車が故障した教師、隣人といった顔ぶれ。犯人につながる保証はどこにもありません。残された時間はわずかです。手がかりの細さがどう言い表されるか、そして複数の候補をまとめて指すために複数形が選ばれている点にも注目です。
Rigsby: So I dug up a few possible witnesses in the first two cases. Power company guy on a job near the first killing, a teacher whose car broke down on the second, and the neighbor of the second kid, like that.
(最初の2件で、目撃者になりそうな人間を何人か掘り起こした。1件目の現場近くで作業してた電力会社の男、2件目で車が故障した教師、2件目の子の隣人。そんなところだ)Van Pelt: Long shots. We’d do better using that psychic.
(望み薄だな。例の霊能力者を使ったほうがマシだ)Rigsby: I thought you liked all that spiritual stuff. What about your psychic cousin Yolanda?
(そういう霊的なもの、好きなんじゃなかったのか。いとこの霊能力者、ヨランダは?)Van Pelt: Yolanda’s real. That guy’s a fake.
(ヨランダは本物だ。あいつは偽物だよ)The Mentalist Season4 Episode3 (Pretty Red Balloon)
シーン解説と心理考察
リグズビーが並べているのは、犯人と結びつく理由が何ひとつない人たちです。たまたま近くで作業していた、たまたま車が壊れた、たまたま隣に住んでいた。それでも当たるしかないところに、捜査の行き詰まりが表れています。
返ってきた Long shots. は、その細さを一語で言い当てたものです。ただしここで見どころなのは、そう言いながら誰も手を止めていないこと。直後に二人はそれぞれ聞き込みへ向かい、実際にこのリストから事件を動かす証言が出てきます。望み薄だと口に出すことと、やらないこととは別だという姿勢がはっきり表れています。
続く軽口も、緊張を抜くための処理として読めます。本物と偽物を分ける基準がいとこかどうかという答えの雑さに、深刻な話題から一瞬だけ距離を取ろうとする空気が漂います。時間の限られた捜査の合間に交わされる、短い息継ぎのようなやり取りです。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
弓でも銃でもかまいません。遠くにぽつんと的があって、手元には一発だけある場面を思い浮かべてみましょう。距離が長いほど当たらない。けれど当たれば、それで終わる。この距離感がそのまま確率の低さになっているのが a long shot です。
劇中でも、望み薄だと言った直後に二人は聞き込みへ出ていきます。的が遠いと分かっていて、それでも構えて撃つ。その一連の動作ごと覚えておくと、狙いすら定まっていない a shot in the dark との違いも同時に押さえられます。
例文で覚える「a long shot」
見込みの薄さを認めながら前に進む表現なので、but とセットで覚えると使いどころが見えてきます。3つの場面で見ていきましょう。
It’s a long shot, but I’m applying anyway.
(見込みは薄いけど、とにかく応募してみる)
難関の求人や奨学金に挑戦するときの一言。but のあとに行動が続く形が最も典型的で、前半で期待値を下げ、後半で前に進む流れを作れます。
At this point, their playoff hopes are a long shot.
(この時点で、彼らのプレーオフ進出はかなり厳しい)
順位表を見ながら状況を評価する場面。名詞として文の中心に置くと、感情を挟まずに可能性の低さを述べる中立的な言い方になります。
A: I know it’s a long shot, but could you ask your brother about the tickets?
B: I’ll try. No promises.
(A:難しいのは分かってるけど、お兄さんにチケットのこと聞いてもらえない?)
(B:やってみる。期待はしないで)
無理を承知で人に頼む場面。前置きに置くことで、断られても構わないという姿勢を先に伝えられます。
あわせて覚えたい関連表現
a shot in the dark
(当てずっぽう)
同じ撃つでも、こちらは狙いそのものが定まっていません。a long shot には狙う的があるのに対し、暗闇に向けて撃つこちらは根拠のない推測を指します。
slim chance
(わずかな可能性)
確率の低さだけを述べる中立的な言い方です。a long shot が持つ「それでも試す価値がある」という含みはなく、事実として可能性が薄いと伝えるときに使います。
a Hail Mary
(一か八かの土壇場の賭け)
残り時間がないという切迫感が加わる表現です。a long shot は時間に追われていなくても使えるのに対し、こちらは最後の手段という色が濃くなります。
Note|賭けの言葉が日常語になるとき
英語の日常会話には、賭けの現場から流れ込んできた言い回しが数多く紛れています。a long shot もそのひとつと考えられていて、由来については遠距離の射撃から来たという説と競馬から来たという説の両方が語られています。どちらにしても、当たりにくいものに賭けるという発想は共通しています。
同じ系統の表現を並べてみると、その厚みが見えてきます。a safe bet は手堅い選択、a sure thing は確実なもの、the odds are against us は分が悪い状況、all bets are off は前提が崩れて何が起きるか分からない状態。どれも本来は賭け金と確率をめぐる言葉でしたが、今ではオフィスでも家庭でも普通に使われています。英語圏では、確率を語るための語彙がそのまま賭けの語彙と重なっているとも言えます。日本語の「一か八か」「分が悪い」も博打から来た言い方ですから発想は近いのですが、英語のほうが種類も使用頻度も多いのが特徴です。
劇中で Long shots. と返されたのも、捜査の手がかりを賭けの対象のように評価している言い方でした。当たる確率はどれくらいか、賭ける価値はあるか。事件の話をしながら、語彙だけは賭場から借りてきている。そう見ると、この短い一語の背後にある広がりが見えてきます。
数字を口に出さずに確率を語れる。それが、賭けから来た言葉が日常語として生き残った理由のひとつなのかもしれません。
まとめ|遠い的に一発だけ撃つ
a long shot は、成功する見込みが薄い試みや候補を表す言葉でした。遠くの的と、そこへ向かう一発。この距離の感覚を押さえておけば、挑戦を続ける文にも、可能性を冷静に評価する文にも使える幅が理解できます。
応募や交渉、人への頼みごと。うまくいく保証がない場面で It’s a long shot, but … と切り出せば、期待値を下げながら前に進む言い方ができます。断られる前提を先に共有できるので、相手にも負担をかけません。
遠くにぽつんと見える的。その一発ごと、自分の英語の引き出しに加えてみてください。


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