海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
うますぎる話を持ちかけてくる人に、思わず身構えたことはありませんか。英語には、力ずくではなく相手の信用を入り口にして奪う人を指す、専用の言い方があります。
その一語「con artist」を、『メンタリスト』シーズン4第3話、かつての顧客だった女性に向かってジェーンが自分の過去を打ち明ける場面から、一緒に見ていきましょう。
「con artist」の意味とニュアンス
con artist
意味:詐欺師、ペテン師
con は confidence、つまり信用を短くした形です。artist はその道の腕を持つ人。組み合わせると、相手の信用を得るという一点で腕を振るう人、という組み立てになります。
同じ奪う相手でも、thief が物を持ち去る人を指すのに対して、con artist が最初に奪うのは信用です。被害者は脅されたわけでも、気づかないうちに抜き取られたわけでもなく、自分から差し出してしまう。この「自分から渡した」という構図が、この語のいちばんの特徴です。
artist が付いている分、手口の巧みさへの評価がわずかに混じるのもポイントです。犯罪者を非難する言葉でありながら、どこか腕前を認めるような響きが残ります。英語圏の映画やドラマで詐欺師が主人公として描かれることが珍しくないのも、この語感と無関係ではありません。
con は動詞としても使え、con someone out of money なら「人をだまして金を巻き上げる」という意味になります。
【ここがポイント!】
- 奪われるのは金より先に「信用」だと押さえるのが近道
- artist が入る分、手口の巧みさへの評価がにじむ一語
- 人に向けて言えば断定の重い言葉になるので、確証のある場面で使いたい一言
『メンタリスト』S04E03のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
行方不明になった男の子の母親ベスは、ジェーンがまだ霊能力者を名乗っていた時代の顧客でした。彼女は今も彼を本物だと信じ、息子を捜してほしいと霊視を求めます。ジェーンは彼女を座らせ、呼吸を整えさせたうえで話を始めます。婉曲な物言いを得意とする彼が、自分の過去をどんな言葉で名指すのかに注目です。
Jane: I’m not a psychic. I never was. I was a con artist. I took your money, and I told you lies.
(僕は霊能力者じゃない。一度もそうじゃなかった。詐欺師だったんだよ。あなたのお金を取って、嘘をついた)Beth: No, they–they weren’t lies.
(違う、あれは嘘なんかじゃなかった)Jane: Yes.
(嘘だった)Beth: No. No. You– you know they weren’t. I-if you’re– if you’re not a psychic, then why are you working with the police?
(違う。違うわ。嘘じゃなかったって、あなたも分かってるでしょう。霊能力者じゃないなら、どうして警察と一緒に働いているの?)The Mentalist Season4 Episode3 (Pretty Red Balloon)
シーン解説と心理考察
まず座らせ、呼吸を整えさせてから話し出すところに、この告白の性格が表れています。相手を責めるためでも突き放すためでもなく、これ以上同じ嘘に頼らせないための手続きとして進めているのが伝わってきます。
言葉の選び方も抑えられています。間違っていた、でも、演じていた、でもなく、I was a con artist と、当時の自分に付いていた呼び名をそのまま置く。皮肉や遠回しな言い方を得意とするジェーンが、ここでは言い換えを一切使っていないのが見どころです。
それでもベスは受け取りません。嘘ではなかったと繰り返し、霊能力を否定すること自体を、重すぎる力から逃げている証拠として読み替えていきます。誠実に差し出したはずの一語が、相手の信じたい形に作り替えられていく。信用を入り口にする商売の後始末がいかに難しいかが、短いやり取りの中に凝縮されています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
con を「反対」を表す接頭辞と結びつけてしまうと、この語の姿は見えてきません。切り取られているのは confidence の頭の部分です。握手を交わし、笑顔を向け、信じてもらう。そこまで済ませてから、はじめて手が伸びる。奪われる順番は信用が先、お金は後だと覚えておきましょう。
劇中でも、ジェーンはお金を受け取る前に、息子の姿が見えると信じさせていました。差し出された手を握り返すところから始まる仕事。その手の動きごと記憶に残しておくと、thief との違いが一目で区別できます。
例文で覚える「con artist」
人を指す名詞なので、被害を語るときにも、人物評として使うときにも登場します。3つの場面で見ていきましょう。
Her grandfather lost his savings to a con artist.
(彼女の祖父は詐欺師に貯金を騙し取られた)
身内が詐欺被害に遭ったことを人に伝える場面です。同じ内容を A con artist conned him out of his savings. と動詞で言うこともでき、名詞なら人物、動詞なら手口に焦点が寄ります。
Investigators warn that con artists often target older residents.
(捜査当局は、詐欺師が高齢者を狙うことが多いと警告している)
ニュース記事や注意喚起の文書で見かける形です。複数形にすると、特定の誰かではなく手口の類型として語る響きになります。
A: He’s offering forty percent returns. Sounds too good to be true.
B: That’s because it is. The guy’s a con artist.
(A:利回り40パーセントだって。うますぎる話だよね)
(B:そのとおり。あいつは詐欺師だよ)
同僚や友人に警告する場面。人物評として言い切るときは、冠詞を付けて名詞で置くのが自然です。
あわせて覚えたい関連表現
con man
(詐欺師)
ほぼ同じ意味ですが男性に限られ、やや古風な響きがあります。性別を問わずに書ける con artist のほうが、現代の文章では選ばれやすくなっています。
scammer
(詐欺をする人)
幅広い詐欺の実行者を指す、くだけた現代語です。メールや電話、SNSの詐欺にもよく使われますが、非対面の手口に限られません。con artist と重なる場面も多く、語だけで手口や腕前を断定することはできません。
grifter
(詐欺師、いかさま師)
人をだまして利益を得る人物を指す、くだけたアメリカ英語です。小さな詐欺を繰り返す人物像に使われることもありますが、con artist より必ず規模が小さいという固定的な線引きはありません。
Note|confidence を切り取った一音節
con artist の con は、confidence の頭だけを切り取った形です。信用という長い単語が短く縮んで、詐欺を表す語の先頭に居座っている。この短さの由来は、19世紀のニューヨークまでさかのぼります。
1849年、身なりの整った男が街で見知らぬ人に声をかけ、旧知の間柄のように振る舞ってからこう尋ねる手口が問題になりました。私を信用して、明日まで時計を預けてくれますか。相手は失礼にあたることを恐れて時計を渡し、男はそのまま姿を消す。この男ウィリアム・トンプソンが逮捕された際、ニューヨーク・ヘラルド紙が彼を confidence man と呼んだことが、この語の最初の記録とされています。1857年にはハーマン・メルヴィルが同じ呼び名を題にした小説を発表し、言い方はさらに広まりました。やがて confidence man は con man へ、さらに con artist へと形を変えていきますが、信用を差し出させてから奪うという手口の核はそのまま残っています。
劇中でジェーンが自分を con artist と呼ぶとき、彼が最初に受け取っていたのも信用でした。母親は脅されて金を渡したわけではなく、息子の姿が見えると信じたから支払っていた。19世紀の時計と同じ構図です。
短く縮んだ一音節の中に、被害者が自分から差し出したという構図がそのまま畳み込まれている。con artist はそういう言葉です。
まとめ|信用を先に受け取る人
con artist は、力ずくではなく信用を入り口にして奪う人を指す言葉でした。con が confidence の断片であることを知っておくと、奪われる順番が金より先に信用だという構図まで、一語で思い出せます。
海外の詐欺被害のニュースを読むときにも、うますぎる話を持ちかけられた友人に一言添えるときにも、この語がそのまま使えます。相手の手口を説明せずに、人物像だけで警告を伝えられるのがこの表現の強みです。
握手を交わしてから伸びてくる手。その順番ごと、自分の英語の引き出しに加えてみてください。


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