海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
サインする直前でペンが止まる。式場の控室で足が動かなくなる。決めたはずのことなのに実行の一歩手前で気持ちが揺れる、そんな瞬間があります。
その足の止まり方を一言で言い表すのが「get cold feet」です。土壇場で怖じ気づく、という意味で使われます。『メンタリスト』シーズン4第13話の中盤、リズボンが上司のウェインライトに捜査状況を報告するシーンから、一緒に見ていきましょう。
「get cold feet」の意味とニュアンス
get cold feet
意味:土壇場で怖じ気づく、直前になって決心が鈍る
直訳すれば「足が冷たくなる」です。一歩を踏み出そうとした瞬間に、足の裏だけがすっと冷えて動かなくなる。その身体感覚が、そのまま心の動きを表す言い方になっています。
大切なのは、もともと臆病だったわけではない、という点です。一度は進むと決めていたのに、実行の直前で不安が勝ってしまった。決意があったからこそ「冷える」余地が生まれる、という時間の流れがこの表現には含まれています。
登場する場面は、結婚式、契約、発表、転職など、後戻りが難しい決断の直前が中心です。get のほか have や develop も使われ、about や before を添えて何に対するためらいかを示せます。話し手が相手を強く責める語ではなく、人としてありうる動揺として扱う、やわらかい響きを持っています。
【ここがポイント!】
- 一歩を踏み出す直前に足だけが冷える、という身体の絵が核
- 進むと決めていた人にしか使えない、時間の流れを含んだ一言
- about や before を添えて、何に対するためらいかを示すのがコツ
『メンタリスト』S04E13のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
CBIのオフィスで、リズボンが上司のウェインライトに捜査の進み具合を報告している場面です。容疑者の一人である実業家は、被害者との契約成立に自分の地位を賭けていました。契約が土壇場で流れたらどうなるか、という仮定から動機の話が組み立てられていきます。その仮定を口にするのが、次のウェインライトの一言です。
Lisbon: Duval was facing a shareholder revolt. He had a lot pinned on making this Theissens deal go through.
(デュバルは株主の反発に直面していました。タイセンスとの契約成立に、多くを賭けていたんです)Wainwright: So if Theissens got cold feet and backed out…
(つまり、タイセンスが怖じ気づいて手を引いたら……)Lisbon: Then Duval would look weak, and that would make his position look vulnerable. And he’d do anything to stop that from what I can tell.
(デュバルの立場が弱く見えます。地位が危うくなる。それを防ぐためなら何でもする男かと)The Mentalist Season4 Episode13(Red Is The New Black)
シーン解説と心理考察
ウェインライトの発言は、文の途中で切れています。最後まで言わずに相手へ渡すこの形が、上司と部下のやりとりのテンポを作っています。仮定を投げ、その続きをリズボンが then で受けて完成させる。二人で一つの推論を組み上げていく呼吸が表れています。
got cold feet が置かれているのは、まだ確証のない他人の心の動きを言い当てる位置です。証拠ではなく推測を扱う場面で、断定を避けながら筋書きだけを立ち上げる働きをしています。
そして and backed out がすぐ後ろに続くことで、心が冷える段階と、実際に身を引く段階が分けて示されています。二つを並べる言い方そのものが、動機を組み立てていく捜査の思考をなぞっていると言えます。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
頭では前へ進むと決めているのに、足の裏だけが冷えて床から離れない。この上半身と下半身のずれを、そのまま絵として持っておくのが近道です。
体の末端が先に止まる、という順番がこの表現の肝になります。だから決心そのものがなかった人には使えません。進む気があったからこそ、冷える場所が生まれます。
劇中では、この後ろに「そして手を引いた」が続きました。足が冷えて止まり、そのまま後ろへ下がる。二段の動きで覚えておくと、心の動きと行動を書き分けたいときに取り出しやすくなります。
例文で覚える「get cold feet」
後戻りしにくい決断の直前で、いちばん出番の多い表現です。3つの場面で見ていきましょう。
He got cold feet the night before the wedding.
(彼は結婚式の前夜になって怖じ気づいた)
友人の結婚をめぐる話題で使う場面です。英語圏ではこの結婚式の文脈と結びついた使われ方が定番になっています。
The investor got cold feet at the last minute.
(投資家が土壇場で手を引いた)
資金調達が流れた経緯を説明する場面です。at the last minute を添えると、契約直前という時間の位置がはっきりします。
A: You’re not backing out of the presentation, are you?
B: No, I just got cold feet for a second.
(A:プレゼン、まさか降りるつもりじゃないよね?)
(B:違うよ、ちょっと足がすくんだだけ)
不安そうな相手に確認を入れる場面です。for a second を足すと、一瞬の動揺にすぎないと軽く伝えられます。
あわせて覚えたい関連表現
have second thoughts
(考え直す、迷いが生じる)
一度出した結論をもう一度見直す、という言い方です。今回のフレーズが恐れを含むのに対し、こちらは冷静な再考に軸があり、会議や書類の中でも使えます。
chicken out
(びびってやめる)
実際にやめたところまで含み、相手を軽く責める色があります。今回のフレーズはためらっている段階で止められるため、同じ場面でも角の立ち方が変わります。
back out
(手を引く、撤回する)
行動の結果だけを指し、心の動きには触れません。劇中でも got cold feet と並べて使われており、原因と結果を分けて示す形になっています。
Note|足が冷えるという言い回しはどこから来たのか
なぜ「足が冷たくなる」が怖じ気づくことを指すようになったのか。この表現の来歴には、決定的な一つの答えがまだ出ていません。
英語で今の意味の get cold feet が広く使われはじめたのは、19世紀の後半とされています。由来としてよく挙げられるのが、賭け事の席に結びつける説です。持ち金が尽きた者が、そのまま席を立つ言い訳として「足が冷えた」と言った、という筋書きになっています。もう一つは、ドイツ語の kalte Füße bekommen が英語に流れ込んだとする説で、こちらも賭け事の場面と結びつけて語られることが多い言い方です。さらに、19世紀ドイツの小説に見える用例を初出とみなす立場もあります。いずれの説も、賭けや勝負ごとという「後戻りできない一歩」の場面を背景に置いている点では共通しています。ただし、どの説にも決め手となる証拠は示されておらず、辞典類でも由来は未確定として扱われるのが一般的です。
こうして並べてみると、来歴が確定しないままでも、この表現が何を言おうとしているかははっきりしています。踏み出す直前という一点に、どの説も焦点を合わせているからです。語源が一つに定まらないことより、その一点が共有されていることのほうが、使い方を決めるうえでは役に立ちます。
冷えるのは、進もうとした足だけです。
まとめ|踏み出す直前の、あの一瞬に名前をつける
get cold feet は、もともと臆病だったことではなく、進むと決めていた人の足が直前で止まることを指す表現です。決意があったからこそ冷える、という順番がこの言い方の中心にあります。
この一言を持っておくと、迷いを「やめた」と言い切らずに伝えられます。まだ引き返したわけではない、けれど気持ちが揺れている。その途中の状態を、責める調子を抜いて置くことができます。
大きな決断の前に足が止まった誰かの話をするとき、表現の引き出しに加えてみてください。


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