海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
自分の機嫌の悪さや疲れを、本当は関係のない相手にぶつけてしまって、後から気まずくなった経験はありませんか。
そんな身に覚えのある場面にぴったりの「take something out on someone」を、『モダンファミリー』シーズン2第11話の中盤、標識を外すフィルと、その標識に苛立つ顧客のローラが標識をめぐって言葉を交わす場面から、一緒に見ていきましょう。
「take something out on someone」の意味とニュアンス
take something out on someone
意味:(原因とは無関係の)人に八つ当たりする
take something out on someoneは、自分の中にたまったストレスや怒りを、その原因とは何の関係もない人にぶつけてしまう時に使う口語表現です。somethingの部分にはit、anger、frustrationのような怒りや不満を表す語が入り、outは押し込められていた感情が外に「取り出される」イメージ、onはその感情が向かう先を示しています。本人にとっては筋違いだと分かっていても、身近にいる相手についぶつけてしまう、そんな人間らしい弱さがにじむ表現です。怒りの矛先を選ぶ余裕がないほど追い詰められている状況を表すことも多く、単に不機嫌な様子を伝えるだけでなく、その裏にある事情まで想像させる言い回しでもあります。八つ当たりされた側の戸惑いを説明する場面でも、この表現が使われることがあります。
【ここがポイント!】
- 核心は、ため込んだ感情を無関係な相手にぶつけてしまうイメージ
- somethingにはit・anger・frustrationなど怒りや不満を表す語が入る
- 自分にも心当たりがある表現だからこそ、謝罪の場面でもよく使われる
『モダンファミリー』S02E11のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
近所に立てられた減速を呼びかける標識を外すフィルを、顧客のローラが見とがめる場面です。標識の正体を明かせないフィルと、その標識に苛立ちをぶつけるローラの、かみ合わないやり取りに注目です。
Laura: What are you doing?
(何してるの?)Phil: Taking this sign down. I recognized your license plate. This is ridiculous.
(この標識を外してるんだ。君のナンバープレートに見覚えがあってね。バカバカしいったらないよ。)Laura: I know. They’re all over the neighborhood. What kind of lunatic does something like this?
(そうなのよ。近所中あちこちに立ってるの。一体どんなイカれた人がこんなことするわけ?)Phil: Who knows?
(さあね。)Laura: It’s probably some bored housewife who hates her husband and hates her life so she takes it out on the rest of us!
(たぶん、夫も人生も嫌いな退屈しきった主婦が、私たちみんなに八つ当たりしてるのよ!)Modern Family Season2 Episode11 (Slow Down Your Neighbors)
シーン解説と心理考察
「何してるの?」と尋ねるローラに、フィルは「この標識を外してるんだ。君のナンバープレートに見覚えがあってね。バカバカしいったらないよ」と答えます。実はこの標識、フィルの妻が近隣の安全のために立てたものですが、フィルはそれを伏せたまま、自分もただ迷惑している一人であるかのように振る舞っています。ローラが「近所中あちこちに立ってるの。一体どんなイカれた人がこんなことするわけ?」と憤ると、フィルは「さあね」ととぼけた返事に終始します。そのうえでローラは「たぶん、夫も人生も嫌いな退屈しきった主婦が、私たちみんなに八つ当たりしてるのよ」と言い放ちますが、その「退屈した主婦」こそ、まさに目の前にいるフィルの妻その人であることをローラは知りません。誰にも本当の事情を明かせないまま、フィルが板挟みの状況に立たされていく皮肉が浮かび上がる場面です。ローラの言葉は本人にまったく悪気のないものだけに、聞いているフィルの心中の複雑さが、かえって際立って伝わってきます。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
心の中にたまった怒りやいら立ち(something)を、両手で引っ張り出して(take out)、たまたまそこにいた人の上にどさっと置いてしまう(on someone)ような場面を思い浮かべてみましょう。
ローラが、標識を立てた見知らぬ「退屈しきった主婦」は近隣住民に八つ当たりしているに違いないと決めつけたこの場面も、まさに感情の矛先を勝手に決めつけた瞬間でした。誰かの行動の裏にある事情を、確かめもせずに決めつけてしまいそうになったとき、take something out on someoneという表現の意味がより実感を持って理解できます。
例文で覚える「take something out on someone」
身近な人間関係のトラブルからビジネスの場面まで、take something out on someoneが使われる3つの状況を見ていきましょう。謝罪の場面でよく使われる表現であることにも注目です。
I’m sorry for snapping at you. I shouldn’t take my stress out on you.
(きつく言ってごめん。ストレスを君にぶつけるべきじゃなかった。)
謝罪する場面で使われる一言です。stressという具体的な原因を添えることで、何にいら立っていたのかが伝わりやすくなります。
He had a bad day at work and took it out on his family.
(彼は仕事で嫌なことがあって、それを家族にぶつけてしまった。)
家庭内のトラブルを振り返る日常会話です。had a bad day at workという背景を示すことで、八つ当たりに至った経緯が伝わります。
A: Why are you so short with me today?
B: Sorry, I’m just tired. I shouldn’t take it out on you.
(A:今日、なんでそんなに冷たいの?)
(B:ごめん、ただ疲れてて。君に八つ当たりすべきじゃなかった。)
誤解を解く場面での会話です。just tiredという率直な説明が、相手への謝罪をより自然にしています。
あわせて覚えたい関連表現
lash out at someone
(誰かに(感情的に)当たり散らす)
take something out on someoneが原因とは無関係な相手への八つ当たりに焦点を置くのに対し、lash out at someoneは相手が原因かどうかを問わない、感情の爆発そのものを指します。
vent one’s frustration
(不満を発散する)
take something out on someoneが特定の相手にぶつける行為を指すのに対し、vent one’s frustrationは相手を問わず不満を吐き出す行為全般を指します。
take it out of someone
((体力・気力を)消耗させる)
形は似ていますが意味は異なり、take it out of someoneは「人を疲れさせる」という意味で、八つ当たりのニュアンスはありません。前置詞ひとつの違いで意味が大きく変わる、紛らわしい組み合わせとして覚えておくと安心です。
Note|take something out on someone / lash out at someone / vent one’s frustrationの使い分け
「怒りをぶつける」という意味を持つ表現はいくつかありますが、それぞれ焦点の置き方が異なります。take something out on someoneは、原因とは無関係の相手に感情をぶつけてしまう、という「筋違いの矛先」に重点があります。仕事のストレスを家族にぶつける、といった構図が典型です。
一方でlash out at someoneは、相手が原因かどうかを問わず、感情が爆発する瞬間そのものを描写します。誰かに強く言い返された、批判された、といった直接的なきっかけがある場面にも使われる点が、take something out on someoneとの違いです。vent one’s frustrationになると、特定の相手にぶつけるというより、不満そのものを外に吐き出す行為全般を指すため、話し相手を問わずに使える表現になります。
このシーンでローラが、標識を立てた人物は近隣住民全体に八つ当たりしているのだと決めつけていた場面は、まさにtake something out on someoneが表す「筋違いの矛先」の典型でした。3つの表現はいずれも、感情の出どころと向かう先がずれている様子を描く点では共通していますが、ずれの種類が少しずつ異なります。3つの違いを意識しておくと、誰に対して、どんな種類の感情の動きが起きているのかを、より正確に描き分けられるようになります。特にtake something out on someoneは、後から振り返って「あの態度は八つ当たりだった」と自分で気づく場面にもよく使われる、反省を伴う表現でもあります。
まとめ|矛先を間違えないための一言
take something out on someoneは、自分の中にたまった感情を、本当は関係のない相手にぶつけてしまう様子を表す表現です。
疲れやストレスがたまっているとき、つい身近な人に強く当たってしまいそうになったら、この言葉を思い出すと、矛先が正しいかどうかを一度立ち止まって考えるきっかけになります。
標識をめぐる誤解の中で、ローラが見知らぬ相手を「近隣住民に八つ当たりしている人物」だと決めつけたこの場面のように、感情の行き先を勝手に決めつけてしまうことは誰にでも起こり得ます。表現の引き出しに、この言葉も加えてみてください。


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