海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
やめておけと言われたのに押し切ったあと、そういえば忠告されていた、と思い出す。あるいは自分が忠告する側に回って、あとは好きにすればいい、と突き放したくなる。そんな場面に覚えはありませんか。
そんなときに使われる「at your own peril」を、『BONES』シーズン1第5話の中盤、寄付者を招いた晩餐会の招待状を配りにきた所長グッドマンが、渋る研究員たちに念を押すシーンから、一緒に見ていきましょう。
「at your own peril」の意味とニュアンス
at your own peril
意味:自己責任で、どうなっても知らないぞ
ある行動を禁じるのではなく、選んでもよい、ただし結果は自分で引き受けろ、と告げる言い方です。多くは Ignore it at your own peril のように、命令形のうしろに添えて使われます。
鍵は peril という語の重さにあります。risk が損得の振れ幅を指すのに対して、peril は身の安全に関わるような差し迫った危険を表す、やや硬い語です。語源はラテン語で試練や危険を意味する語にさかのぼり、文学や法律の文章に馴染んできました。日常会話では大げさに響くため、選ばれるだけで話し手の構えが伝わります。
構文としては、責任の所在を相手側へ移すのが役割です。禁止でも命令でもないので、表向きは相手の自由を認めています。それでいて、選んだあとの面倒は見ない、という予告が入っている。丁寧な言い方をしているのに冷たく響くのは、この二重構造のためです。
【ここがポイント!】
- 禁じるのではなく、選ぶ自由ごと責任を相手に返す構えの一言
- risk より重い peril を選ぶことで、警告の格が一段上がる表現
- 命令形のうしろに添えるだけで成立するので、形として覚えやすいのがコツ
『BONES』S01E05のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
舞台はブレナンの部屋です。研究所の所長グッドマンが、寄付者を招いた晩餐会の招待状を配りに現れます。彼らの寄付が研究を支えていて、見返りは科学者と少し話せることだけだ、と所長は説きますが、研究員たちは口々に欠席の理由を並べます。ザックがのんきに料理の話を持ち出したところで、所長の言い方が変わります。
Zack: What kind of food will there be?
(どんな料理が出るんですか?)Goodman: When I said you should think of this invitation as a summons, I understated. It’s a subpoena. A grand-jury subpoena. Ignore it at your own peril.
(この招待状を召喚と思えと言ったが、控えめに過ぎたな。これは召喚令状だ。大陪審の令状だと思いたまえ。無視するなら自己責任でどうぞ)Brennan: You’re not gonna fire us if we don’t go.
(行かなかったからといって、私たちを解雇はできないでしょう)Goodman: No, not fire you, but I can move your parking spot to Lot M. Enjoy the shuttle ride.
(解雇はしない。だが駐車場をM区画に移すことはできる。送迎バスの旅を楽しみたまえ)BONES Season1 Episode5 (A Boy in a Bush)
シーン解説と心理考察
グッドマンは、招待から召喚、さらに令状へと語を段階的に重くしていきます。同じ紙一枚を指しながら、呼び名を変えるだけで拘束力が増していく。言葉の格で相手を動かそうとする話し方が、この人物の輪郭をよく表しています。
そこに at your own peril が置かれることで、宣告は完成します。出席しろ、とは一度も言っていません。無視してもよい、と形のうえでは自由を残したまま、結果だけを相手の側に積み上げている。命令より逃げ道がない構えとして響きます。
ところが直後に出てくる報復の中身が、駐車場の移動と送迎バスです。令状という重い語で持ち上げた緊張が、生活感のある不便さへ一気に着地する。研究所の力関係と、この所長のユーモアの匙加減が、この落差ににじみます。
『BONES』流・覚え方のコツ
柵のない崖の手前に立っている場面を思い浮かべてみます。案内人は柵を作りません。行くなとも言いません。ただ、この先は自分の足で進むことになる、と告げて一歩下がる。at your own peril が置いているのは、この一歩です。
劇中のグッドマンも、扉を閉めてはいませんでした。無視してもいい、と道は開けたままにしておいて、その先の落差だけを見せる。柵を作らずに崖の縁を指さす手つきを思い出せば、この表現がなぜ禁止でも命令でもないのに強く響くのかが、絵のほうから残ります。
例文で覚える「at your own peril」
会話でも掲示でも使える形です。3つの例文で場面の幅を見てみましょう。
Ignore the safety briefing at your own peril.
(安全説明を無視するなら、自己責任でどうぞ)
現場での注意喚起です。命令形のうしろに添えるだけで、警告の重みが一段上がります。
Visitors enter the old wing at their own peril.
(立ち入りは自己責任とします)
掲示や案内文に使われる書き言葉寄りの形です。主語を三人称にすると、告知としての体裁が整います。
A: I’m going to skip the review meeting.
B: Do that at your own peril. They’re deciding budgets in there.
A: …I’ll move my other meeting.
(A:レビュー会議は出ないでおくよ)
(B:自己責任でどうぞ。あそこで予算が決まるけど)
(A:……別の打ち合わせをずらすよ)
同僚に釘を刺す場面です。理由を後ろに添えると、脅しではなく助言として届きます。
あわせて覚えたい関連表現
at your own risk
(自己責任で)
同じ構文の最も一般的な形で、掲示や利用規約で広く使われます。at your own peril が危険の重さを強調するのに対して、こちらは日常の軽い注意書きにも収まります。
on your own head be it
(その責任は君自身にある)
古風で格式のある言い回しで、結果が本人に降りかかることを強く印象づけます。at your own peril より演劇的な響きがあり、使いどころは限られます。
you’ve been warned
(忠告はしたからな)
警告した事実を後から確認する言い方です。行動に添える at your own peril と違って、こちらは一文として独立し、話を締める位置に置かれます。
Note|会話の警告から、契約書の専門語まで
peril は日常会話ではあまり顔を出しませんが、ある分野に入ると急に頻度が上がります。保険と海運の世界です。
保険の文脈で peril が指すのは、損害を引き起こす原因となる事故や危険そのものです。火災、落雷、暴風。契約でどこまで補償するかを決めるとき、対象となる危険を一つずつ挙げていく方式は named perils と呼ばれます。挙げられていない原因による損害は対象外になるため、この語は補償の輪郭を描く役目を負っています。海上保険には perils of the sea という古い表現もあり、嵐や座礁など、海という環境に固有の危険をまとめて指してきました。
つまり peril は、危険を漠然と表す語ではなく、範囲を区切って定義するための語として使われてきた歴史を持っています。at your own peril が契約書や掲示に馴染むのは、この背景があるためです。一方、友人に注意するくらいの場面では at your own risk のほうが自然で、peril を選ぶと構えが大きすぎることもあります。
グッドマンが会話の中でこの語を持ち出したのは、だからこそ効果的でした。召喚、令状と法律の語彙を並べた流れの最後に、契約書の語が置かれる。研究所を代表して話しているという立場が、語彙の選び方だけで伝わってきます。
どの語を選ぶかが、そのまま話す場所を示しています。
まとめ|柵を作らずに、崖を指さす言い方
at your own peril は、行動を禁じないまま、その結果だけを相手の側に置く表現です。自由を残しているのに逃げ道が狭く感じられるのは、責任の移し方がはっきりしているからだと言えます。
この一言を持っておくと、感情を出さずに強い警告を伝えられるようになります。怒鳴る必要も、無理に説得する必要もない。選ぶのは相手だと認めたうえで、その先に何があるかだけを示せば足ります。
招待状を令状と呼び替え、断る自由を残したまま部下たちを動かしたグッドマン。言葉の格だけで場を動かす手つきが、この表現の働きをそのまま見せていると言えます。


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