海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
誰かが痛い目に遭ったと聞いて、気の毒だと思うより先に、あれだけのことをしていたのだから、という言葉が浮かんでしまうことがあります。口に出すかどうかは別として、心の中で線を引いてしまう瞬間です。
そんな判断を短く言い切る「have it coming」を、『BONES』シーズン1第6話の中盤、ライバルだったディージェイの死が殺人だったと告げられたラッパーのルールが、仕事場で返した一言から、一緒に見ていきましょう。
「have it coming」の意味とニュアンス
have it coming
意味:自業自得だ、当然の報いだ
降りかかった悪い結果が、本人の行いによって招かれたものだと述べる言い方です。it は罰や不運そのものを指し、coming がそれが本人めがけて進んでくる動きを表しています。
形は have + it + coming で、そうなる筋道をすでに用意していた、という状態を示します。結果が出たあとに振り返る使い方が多いため、過去形の had it coming が定番です。to him や to her を添えれば、届け先がはっきりします。
対象はほぼ例外なく悪い結果です。deserve が昇進にも罰にも使えるのに対して、こちらは報いの側に固定されています。
そして同情を打ち切る言葉でもあります。かわいそうだと思わなくていい、という宣言に近く、口にした時点で話し手がどちら側に立つかが決まります。
【ここがポイント!】
- 罰や不運が本人めがけて進んでくる、という動きの絵が芯にある表現
- 良いことには使わず、悪い結果に対してほぼ固定で使われる一言
- 同情を打ち切る宣言になるので、誰について言うかで印象が変わるのがコツ
『BONES』S01E06のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
舞台は、被害者と張り合っていたラッパー、ルールの仕事場です。音楽を作りながら、彼はブースとブレナンの訪問を軽くあしらいます。壁の中から見つかった遺体が事故ではなく殺人だったと聞かされても、手は止まりません。ブースが相手の名前にかけて釘を刺したところで、弔いとは正反対の一言が返ってきます。
Booth: Yeah, Dr. Brennan also discovered that Roy Taylor was murdered.
(ブレナン博士は、ロイ・テイラーが殺されたことも突き止めた)Rulz: So?
(で?)Booth: So murder is whacked, see, ‘cause those are the rules, Rulz.
(殺しはナシだろ。それがルールってもんだ、ルール)Rulz: Well, maybe he had it coming to him.
(まあ、自業自得だったのかもな)Booth: Oh, so you and Roy Taylor don’t get along.
(ほう。ロイ・テイラーとは折り合いが悪かったわけだ)Rulz: That sucker ran me down. Tried to slam me in one of his tracks and ain’t nobody do that.
(あの野郎は俺をこき下ろした。自分の曲で俺を叩こうとしたんだ。そんな真似は誰にも許さねえ)BONES Season1 Episode6 (The Man in the Wall)
シーン解説と心理考察
ルールの最初の返事が So? である点に、この場面の温度が出ています。人が殺されたという知らせを、作業を中断するほどの情報とは受け取っていません。
ブースの切り返しも巧みです。those are the rules, Rulz と、相手の名前をそのまま規範の側に重ねています。おまえがルールを名乗るなら、そのルールに従えという言い方です。
そのうえで返された一言に maybe が置かれているのが見どころです。had it coming と言い切れば、報いを望んでいたと受け取られかねません。かもな、と一段ぼかすことで、彼は判断の外側に立ちます。
そして直後に理由を語り出します。曲の中で自分をこき下ろされた、と。報いの根拠に挙げられているのは、命ではなく面子です。釣り合いの取れない天秤を、本人はまったく不自然だと思っていない。この落差が、人物の輪郭をはっきりさせています。
『BONES』流・覚え方のコツ
自分で注文した荷物が届く場面を思い浮かべてみます。チャイムが鳴り、箱が差し出される。中身が何であれ、発注したのは本人です。have it coming が指しているのは、この注文がすでに済んでいるという状態です。
coming は配達の進行を表しています。注文した時点で荷物は動き出していて、あとは届くのを待つだけ。だから結果が出たあとに had it coming と振り返る形が自然になります。
劇中のルールが持ち出したのも、この配送の理屈でした。運んだのは自分ではない、送り状を書いたのは本人だ、と。玄関先で箱を受け取る絵を思い出せば、この表現が責任をどこに置いているのかが残ります。
例文で覚える「have it coming」
言い切る形と、ぼかす形の両方が使われます。3つの例文でその幅を見てみましょう。
He ignored every warning for months, so honestly, he had it coming.
(何か月も忠告を無視し続けたんだから、正直あれは自業自得だよ)
処分を受けた同僚について話す場面です。経緯を先に置くと、冷たさより筋道のほうが前に出ます。
I’m not saying she had it coming, but she did take a lot of risks.
(自業自得だとまでは言わないけれど、彼女はずいぶん危ない橋を渡っていた)
断定を避けて含みだけを残す場面です。I’m not saying と組むと、同情と批判のあいだに立てます。
A: Did you hear the team got disqualified?
B: After all that cheating? They had it coming.
A: Still, I feel bad for the younger players.
(A:あのチーム、失格になったって聞いた?)
(B:あれだけ不正をしたあとで? 当然の結果だよ)
(A:それでも、下級生の選手たちは気の毒だな)
処分の知らせをやり取りする場面です。切り捨てる側と情を残す側が並ぶと、この表現の温度が際立ちます。
あわせて覚えたい関連表現
ask for it
(自分から招く、招いたことだ)
You asked for it の形で、相手に面と向かってぶつける言い方です。第三者について語ることが多い have it coming に比べて、責める調子がはっきり出ます。
serve someone right
(いい気味だ、当然の報いだ)
It serves him right のように、結果のほうを主語に立てます。溜飲を下げる響きがあり、話し手の感情が前に出る点が違います。
reap what one sows
(蒔いた種を刈り取る)
農作業にたとえた諺的な言い方で、教訓めいた重みがあります。良い結果にも使える点が、悪い結果に固定された have it coming との違いです。
Note|「自業自得」は内から出て、have it coming は外から来る
had it coming を日本語にすると、たいていは「自業自得」に落ち着きます。指している事態はほぼ同じですが、二つの表現が描いている絵はかなり違います。
「自業自得」はもともと仏教の語で、自らの作った業の報いを自ら受けるという考え方に由来します。業は本人の内側に積み上がり、その結果も本人へ返る。線は当人の中で閉じていて、外から何かがやって来るという発想は含まれていません。「身から出た錆」も同じで、錆は鉄そのものから浮き出てきます。原因も結果も、本人の内部で完結しています。
一方の have it coming では、it が外から本人めがけて移動してきます。coming という語が示しているのは、距離と時間です。すでに動き出しているが、まだ届いていない。だから本人が気づかないまま近づいてくることもあれば、周囲にだけ先に見えていることもあります。
この違いは、使える形にも表れます。英語では He’s got it coming と現在形で言えば、まだ届いていない報いについての予告になります。日本語の「自業自得」は、結果が出たあとにしか置きにくい。内側で完結する言葉は、外から近づいてくる途中の状態を描けないからです。
劇中のルールが maybe を添えたのも、この距離感と無関係ではありません。届いたものが何であれ、送り出したのは本人だ。そう言うだけなら、自分は経路の外に立っていられます。誰が運んできたのかには、触れずに済みます。
内から出るのか、外から来るのか。責任の置き場所が変わります。
まとめ|届いた荷物の送り状
have it coming は、悪い結果が本人の行いによって招かれたものだと述べる表現です。罰が本人めがけて進んでくるという動きを含むぶん、単なる評価ではなく因果の説明になります。
この一言があると、同情するかどうかの立場を短く示せます。長く事情を並べなくても、線をどこに引いたかが伝わる。ただしその線は話し手の判断であって、口にした時点で自分の位置も明かすことになります。
面子を潰されたことを報いの根拠に挙げたルールの言葉は、本人にとっては筋の通った説明でした。何を釣り合いと見るかで、この表現の重さは変わります。使いどころを測りながら、表現の引き出しに加えてみてください。


コメント