海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
仲の悪い二人のあいだに立って、そのつど話を捌いていた時期はありませんか。自分の仕事ではないのに、放っておくと全体が回らなくなるので、結局は間に入ってしまう。感謝されにくい役回りです。
そんなふるまいを言い表す「run interference」を、『BONES』シーズン1第6話の中盤、被害者のライバル関係を尋ねられたクラブ経営者ホールが、ブースの事務所で自分の役目を説明するシーンから、一緒に見ていきましょう。
「run interference」の意味とニュアンス
run interference
意味:間に入って捌く、障害を引き受ける、露払いをする
interference は妨害を意味する名詞です。ところがアメリカンフットボールでは、ボールを持って走る味方の前に立ち、相手の選手にぶつかって走路を作るプレーがこう呼ばれてきました。妨害しているのは相手チームに対してであって、味方から見れば道を開ける行為です。この視点の切り替えが、そのまま比喩として残りました。
日常では、誰かが本来の仕事に集中できるよう、面倒な相手や厄介事を自分が引き受けることを指します。前置詞で立ち位置が変わるのも特徴です。for someone なら誰のために、between A and B なら誰と誰のあいだで、with someone なら誰に対して立ちはだかるのかが示されます。
動詞の interfere が余計な口出しをするという否定的な意味で使われるのに対して、run interference は引き受ける側の献身を指します。同じ語からほぼ逆の評価が生まれている、めずらしい組み合わせです。
【ここがポイント!】
- ボールを持つ味方の前を走り、進路を切り開くブロックが芯にある表現
- for なら守る相手、between なら仲裁の位置、with なら対峙する相手が示される
- interfere 単体の「邪魔をする」とは評価が逆になるので、切り分けて覚えるのがコツ
『BONES』S01E06のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
舞台はFBIにあるブースの事務所です。クラブ経営者のランドール・ホールが、連れの男を伴って訪ねてきています。被害者には敵が多かった、同業者との競争もあった。そう語るホールに、ブースは商売に響くのだから誰がライバルかは把握しているはずだと踏み込みます。ホールは連れを先に部屋から出したうえで、ひとつの名前を口にします。
Booth: I mean, you have to know who the rivals are, Mr. Hall. Affects your bottom line.
(誰がライバルかくらい把握しているはずでしょう、ホールさん。売上に響くんですから)Hall: Wait for me by the elevator. Rulz.
(エレベーターのところで待っていろ。……ルールだ)Booth: What rules?
(ルール? 何のルールだ?)Hall: That’s his name. He performs at the club. I’m trying to keep my crew together, Agent Booth. But I always had to run interference between those two.
(そういう名前なんだ。うちの店に出てる。こっちは仲間をまとめようとしてるんだ、ブース捜査官。だが結局、いつもあの二人のあいだに入ってやらなきゃならなかった)Booth: Why?
(なぜだ?)Hall: Ask Rulz.
(ルールに聞いてくれ)BONES Season1 Episode6 (The Man in the Wall)
シーン解説と心理考察
ホールがどう自分を語ったかに注目すると、この短いやり取りの構図が見えてきます。彼はまず、仲間をまとめようとしていたと述べます。経営者や雇い主ではなく、取りまとめ役としての自己紹介です。そのうえで but をはさみ、それでも自分が間に入らなければならなかったと続けます。苦労の告白でありながら、争いの側にいたのは自分ではないという含みが同時に置かれています。
ブースの聞き返しも見どころです。Rulz という固有名詞を、彼は rules と受け取ります。何のルールだ、と。人の名前とありふれた名詞が同じ音で重なり、会話が一瞬だけ足を取られる。名前の話をしているのか規範の話をしているのか、境目が曖昧になる瞬間です。
そして理由を問われたホールは、ルールに聞いてくれと返します。名前は渡すが、中身は渡さない。連れを先に廊下へ出した段取りと合わせて、どこまで話すかを最初から決めていたことが伝わってきます。
『BONES』流・覚え方のコツ
アメリカンフットボールの一場面を思い浮かべてみます。ボールを抱えた選手が走り出す。その少し前を、別の選手が走っています。彼はボールに触りません。得点にも記録にも残りません。やることはただ一つ、向かってくる相手にぶつかって、味方の走る道を空けることです。
この位置取りが run interference です。主役の前に出て、代わりにぶつかる。感謝はされても、記録には残らない役回りです。
劇中のホールも、自分をこの場所に置いて語りました。争っていたのは別の二人で、自分はそのあいだで体を張っていただけだ、と。前を走る選手の背中を思い出せば、この表現が誰の位置を指しているのかが一度で納まります。
例文で覚える「run interference」
前置詞によって立ち位置が変わる表現です。3つの例文でその違いを確かめてみましょう。
I’ll run interference with the client so your team can finish the build.
(クライアントの相手はこちらで引き受けます。チームは開発を仕上げてください)
上司が部下の作業時間を守る場面です。with を使うと、誰に対して立ちはだかるのかがはっきりします。
Someone needs to run interference between those two before the meeting starts.
(会議が始まる前に、あの二人のあいだに誰か入ったほうがいい)
衝突しそうな二人を仲介する場面です。between にすると、どちらの味方でもない位置に立つことになります。
A: My in-laws arrive tomorrow and I still haven’t finished the report.
B: Don’t worry, I’ll run interference for you.
A: You’d really do that?
(A:明日は義理の両親が来るのに、報告書がまだ終わってない)
(B:心配しないで。私が引き受けるから)
(A:本当にやってくれるの?)
予定と仕事が重なった場面です。for を使うと、守る相手のほうが前に出ます。
あわせて覚えたい関連表現
act as a buffer
(緩衝材になる、間に挟まる)
衝撃をやわらげる位置に立つことを表します。自分から前へ出てぶつかりに行く run interference に比べると、待ち受ける側の立ち位置になります。
shield someone from
(〜から人を守る、遮る)
情報や圧力が届かないよう覆いをかける言い方です。進路を切り開く run interference とは、守り方の方向が逆になります。
smooth things over
(丸く収める、取り繕う)
すでに起きてしまった摩擦を、後から収める表現です。起きる前に立ちはだかる run interference とは、時間の位置が前後します。
Note|妨害と護衛が同じ語で呼ばれる理由
run interference という言い方は、字面だけを追うと意味が取れません。妨害を走らせる、では日本語になりません。手がかりはアメリカンフットボールの用語法にあります。
この競技では、ボールを持って走る選手の前を、味方の選手が走ります。役目は向かってくる守備選手にぶつかり、走路を確保すること。この行為が interference と呼ばれてきました。妨害という語が当てられているのは、名づけの視点が守備側に置かれているからです。守る側から見れば妨害、走る側から見れば護衛。まったく同じ動きが、立場によって別の名前で呼ばれています。
競技の語彙が日常へ移っていく例は、この競技だけでも数多くあります。Monday morning quarterback は、試合が終わってから采配を批評する人のこと。blindside は視界の外から不意を突くこと。punt はもともと蹴って攻撃権を手放すプレーで、そこから判断を先送りするという意味で使われるようになりました。いずれもフィールドの外へ出たとき、動きの骨格だけを残して意味を広げています。
run interference に残ったのは、誰かのために自分が前へ出て面倒を引き受ける、という骨格でした。妨害という原義のほうは、動詞の interfere が引き継いでいます。同じ語源から、責められる行為と称えられる行為が分かれて出ているわけです。
劇中のホールがこの言葉を選んだとき、彼が描いたのは走者ではなく、その前を走る選手の姿でした。得点は取らない、ぶつかるだけ。責任の中心から一歩ずらした位置に、自分を置く言い方です。
同じ動きでも、どちら側から見るかで呼び名が変わります。
まとめ|前に出るという役回り
run interference は、誰かが前に進めるように、自分が障害のほうへ向かっていくふるまいを指す表現です。妨害を意味する語を使いながら、示しているのは守る側の献身になります。
この一言があると、板挟みの立場を前向きに言い表せます。面倒に巻き込まれたと言う代わりに、進路を作っていたと言える。同じ状況でも、自分の位置の説明が変わってきます。
争いのあいだに入り続けたと語ったホールの言葉は、苦労話であると同時に、自分の立ち位置を選ぶ言い方でもありました。誰かの前を走る場面を思い浮かべながら、表現の引き出しに加えてみてください。


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