海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
身動きが取れない状況で、ふいに一瞬の隙が生まれる。今しかない、と体が先に動いてしまう。そんな瞬間は、逃げ出す場面に限らず日常のあちこちにあります。
そんなときの動きを言い当てる「make a break for it」を、『BONES』シーズン1第13話の冒頭、路上で拘束されていた容疑者が銃撃の混乱に乗じて走り出すシーンから、一緒に見ていきましょう。
「make a break for it」の意味とニュアンス
make a break for it
意味:隙をついて一気に逃げ出す、強行突破する
取り押さえられている、囲まれている、閉じ込められている。そうした状態から、機会をとらえて一息に外へ抜け出すことを表します。
中心にあるのは break という語です。ここでの break は「壊す」というより「破って外へ出る」働きをしています。壁でも包囲でも、自分を囲んでいるものに切れ目を作って抜けるという構図です。
for it の it は、逃げ込む先や自由そのものを指しています。この it は具体的な場所に差し替えられ、make a break for the door、make a break for the car のように使えます。逃走に限らず、雨宿りから車まで走る場面にも自然に収まります。
run との違いは、走り始める前の状態にあります。run はただ走ること。make a break for it には、それまで動けなかった時間と、そこに生じた隙が含まれています。
【ここがポイント!】
- 囲まれた状態に切れ目を作って抜ける、という break の働きが核になる表現
- 静止から急発進へ、という時間の落差まで含んでいるのが単なる run との違い
- for のあとを the door や the car に差し替えると、日常の場面にも使えるのがコツ
『BONES』S01E13のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
物語の幕開けは、リトル・サルバドルと呼ばれる地区の路上です。一時停止を無視して逃げようとした男が警察に取り押さえられ、車のトランクからは遺体が見つかります。ブースとブレナンが現場で聞き込みを始めた矢先、通りかかった黒い車から銃弾が撃ち込まれます。全員が身を伏せるその一瞬に、男だけが逆の動きを見せます。
Brennan: They come from a place where getting involved gets you killed.
(関わり合いになれば命を落とす、そういう場所から来た人たちなのよ)Man: Get down! Get down!
(伏せろ! 伏せろ!)(The suspect starts to make a break for it.)
(容疑者が隙をついて走り出す)Man: Shots fired! Shots fired!
(発砲! 発砲だ!)BONES Season1 Episode13 (The Woman in the Garden)
シーン解説と心理考察
同じ銃声を聞いて、その場の全員が同じ方向へ動いています。頭を下げ、地面に近づき、身を小さくする。危険を前にした反応としては、これ以上ないほど自然な動きです。
そのなかで容疑者だけが逆を向きました。彼にとって銃声は危険の合図ではなく、監視が途切れる合図だったことが分かります。周囲の視線が地面に落ちる数秒を、逃走に使える時間として計算していたことになります。
この落差が make a break for it という言い方によく表れています。全員が止まった瞬間に、一人だけが動き出す。break が破っているのは物理的な壁ではなく、彼を囲んでいた注意の網のほうです。
直後に飛ぶ Shots fired! という叫びが、混乱の大きさを伝えています。追いかけたブースはフェンスを越えられ、取り逃がすことになります。事件はここから、逃げた男が誰なのかを追う筋へ入っていきます。
『BONES』流・覚え方のコツ
張りつめたゴムを想像すると、この表現の輪郭がはっきりします。押さえつけられて動けない状態にエネルギーが溜まっていき、押さえが一瞬ゆるんだ途端に弾け出す。make a break for it が捉えているのは、その弾け方です。
劇中の容疑者も、手錠をかけられ、警官に囲まれ、ずっと動けずにいました。銃声で全員の姿勢が崩れた数秒だけ、押さえが消えます。
周囲が地面に伏せていくなかで、一人だけ立ち上がって逆方向へ走る背中。あの絵を思い出せば、走ることそのものより、走り出した瞬間を指す言葉だと体で分かります。
例文で覚える「make a break for it」
逃走の場面だけでなく、日常の小さな踏み切りにも使えます。3つの例文で幅を見てみましょう。
The thief waited for the guard to look away, then made a break for it.
(泥棒は警備員が目をそらすのを待って、一気に逃げ出した)
隙が生まれる瞬間を待っていた場面です。waited と組ませると、静止から急発進への流れがはっきり出ます。
It’s stopped raining for a second — let’s make a break for the car.
(雨がやんだ。今のうちに車まで走ろう)
雨宿りから抜け出す場面です。for のあとを具体的な場所にすると、日常の言い回しになります。
A: The meeting’s dragging on forever.
B: There’s a coffee break at three. We make a break for it then.
A: Deal.
(A:会議、いつまで続くんだろう)
(B:3時に休憩が入る。そのときに抜け出そう)
(A:賛成)
長引く場では、抜け出すタイミングの相談にも使えます。冗談めかした言い方として機能します。
あわせて覚えたい関連表現
make a run for it
(走って逃げる)
ほぼ同じ意味で、入れ替えて使えます。同じエピソードのなかでも、逃げるギャングの動きを説明する場面でこちらの形が使われています。break のほうが、囲いを破るという含みがわずかに強く出ます。
bolt
(突然走り出す、飛び出す)
驚いた馬が走り出す動きが元になっており、一語で急な発進を表せます。make a break for it が隙を待つ時間を含むのに対して、こちらは唐突さのほうに焦点があります。
slip away
(こっそり抜け出す)
気づかれないよう静かに離れることを指します。突破の勢いを持つ make a break for it とは正反対で、目立たないことが目的になります。
Note|break が担う、囲いを破って外へ出る動き
make a break for it の break は、何かを壊すことよりも、閉じているものに切れ目を作ることを指しています。この働きは、この表現だけのものではありません。
英語には、閉じ込めからの脱出を break で語る言い方が並んでいます。break out は建物や施設から抜け出すこと、break free は拘束を振りほどくこと、break loose はつながれていたものが外れること。名詞の breakout は脱走そのものを指します。break through となれば、突破した先に進む動きまで含みます。どれも「囲いがあり、そこに切れ目ができ、外へ出る」という同じ形をしています。
この並びのなかに置くと、make a break for it の姿がはっきりします。break で切れ目を作り、for it でその先の目的地を示す。二つの部品が、脱出の全体像を短く組み立てているわけです。
日本語で「逃げる」と言うとき、そこに囲いの絵は必ずしも入りません。走る、離れる、去る。英語の break は、逃げる前に何があったのかを一語で背負っています。
逃げ方の描き方に、言語の癖が出ます。
まとめ|一人だけ逆に走った背中
make a break for it は、囲まれた状態に生じた一瞬の隙をとらえて、一気に外へ抜け出すことを表す言い方です。走ることそのものより、走り出した瞬間に焦点があります。
この表現を持っておくと、動き出したタイミングまで含めて状況を伝えられます。雨がやんだ隙に、休憩に入った隙に。日常の小さな踏み切りにも、そのまま応用が利きます。
全員が地面に伏せるなかで、一人だけが立ち上がって走った数秒。あの逆方向の動きごと、表現の引き出しに加えてみてください。


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