海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
うまくいくか分からないことに思い切って取りかかる直前、心の中で「ええい、やってみるか」とつぶやいた経験はありませんか。
そんな一発勝負の瞬間にぴったりの「here goes nothing」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン9第22話、レナードとハワードが開発中の航法システムの試作機を、いよいよ初めて起動しようとするシーンから、一緒に見ていきましょう。
「here goes nothing」の意味とニュアンス
here goes nothing
意味:ええい、やってみるか/ダメ元でいくぞ
here goes nothing は、成功する自信がない、あるいは結果が読めないことに、思い切って取りかかる直前の掛け声です。「失敗してもともと」という軽い諦めと、それでもやってみるという覚悟が同居しているのが特徴です。直訳すると「さあ、ここで何も起こらないぞ」となり、この nothing(大したことにはならない)が、「どうせうまくいかないだろうが」という弱気のニュアンスを生んでいます。試験のボタンを押す瞬間、舞台に出る直前といった、緊張する一発勝負の場面で、ひとりごとのように口にするカジュアルな定番表現です。深刻になりすぎず、不安をユーモアで包むような軽さがあります。
【ここがポイント!】
- 「失敗してもともと」という諦めと覚悟が同居した一発勝負の掛け声
- nothing が「どうせ大したことにならない」という弱気を添えている
- 緊張する本番直前に、ひとりごと感覚で口にするのがハマる一言
『ビッグバン★セオリー』S09E22のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
レナードとハワードが開発している、画期的な航法システムの試作機。すべての配線をつなぎ終え、いよいよ初めて電源を入れる瞬間です。レナードが軽い掛け声で始めようとすると、何でも大げさに演出したいシェルドンが口を挟みます。
Howard: Okay. Everything’s hooked up. We’re ready.
(よし。全部つないだ。準備完了だ。)Leonard: All right, here goes nothing.
(よし、ええい、やってみるか。)Sheldon: Here goes nothing? This is the initial test of our prototype. Can we give it a little more gravitas?
(「やってみるか」だって? これは試作機の最初のテストだぞ。もう少し重々しくできないのか?)The Big Bang Theory Season9 Episode22(The Fermentation Bifurcation)
シーン解説と心理考察
歴史的な実験の第一歩を、レナードが肩の力の抜けた here goes nothing で始めようとするのに対し、シェルドンが「もっと荘厳に」と注文をつける対比が見どころです。気負わず淡々と進めたいレナードと、あらゆる瞬間を記念碑的に演出したいシェルドン。二人の性格の違いが、この掛け声一つへの反応に表れています。レナードがしぶしぶ「無限持続ジャイロ航法システムの予備試験、フェーズ1を開始する」と大仰に言い直すくだりまで含めて、here goes nothing の「気軽さ」が際立つ流れになっています。緊張を和らげるはずの一言が、シェルドンの手で大げさな儀式へ変えられていく可笑しさがにじむ場面です。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
here goes nothing は、直訳の「ここで何も起こらない(nothing)」を、「どうせ大したことにならないだろうが=失敗してもともと」という気持ちと結びつけて覚えるのがおすすめです。あの大げさな儀式に変えられる前、レナードが試作機のスイッチに手をかけ、ふっと息を抜いて here goes nothing とつぶやいた瞬間を思い出してみてください。結果が読めないけれど、えいやっと始める。その独特の心境とセットにすれば、いざ自分が一歩を踏み出す場面でも自然に口をついて出てきます。
例文で覚える「here goes nothing」
here goes nothing は、挑戦の直前にひとりごとのように口にする掛け声です。3つの例文で、使いどころの幅を見ていきましょう。
I’ve never done a backflip before, but here goes nothing.
(バック転なんてやったことないけど、ええい、やってみるか。)
初めての挑戦に飛び込む場面です。自信のなさを認めつつ、それでも飛び込むという覚悟が、この一言にこもっています。
She took a deep breath, clicked “send,” and thought, here goes nothing.
(彼女は深呼吸して「送信」を押し、ダメ元だ、と思った。)
勇気のいるメールを送る場面です。地の文の中でも、決断の瞬間の心境を描く言葉として自然に使えます。
A: You’re really going to ask her to dance?
B: Wish me luck. Here goes nothing.
(A:本当に彼女をダンスに誘うつもり?)
(B:幸運を祈ってて。ええい、当たって砕けろだ。)
友人に背中を押される場面です。会話の締めくくりとして、これから一歩踏み出す宣言になっています。
あわせて覚えたい関連表現
here goes!
(さあ、いくぞ!)
これから何かを始めるぞ、という威勢のいい掛け声です。nothing が付かない形は前向きで自信のあるトーンなのに対し、here goes nothing は「自信はないけど」という弱気が加わる点が違います。
wish me luck
(幸運を祈ってて)
挑戦の前に、相手に幸運を願ってもらう一言です。here goes nothing が自分に向けたひとりごと寄りなのに対し、こちらは相手に向けた言葉である点が対照的です。
give it a shot
(試しにやってみる)
ダメ元でやってみよう、という意味です。give it a shot は提案や誘いにも使える客観的な表現で、here goes nothing はまさに始める瞬間に発する掛け声という違いがあります。
Note|here goes に nothing が付くと弱気になる理由
レナードの here goes nothing は、もともと here goes! という別の掛け声から生まれた表現だとされています。
here goes! は、何かを始めるときに「さあ、いくぞ!」と勢いをつける、威勢のいいひとことです。ところが、ここに nothing が付くと、トーンが一変します。直訳すれば「さあ、いくぞ ― 何も(大したことは)起こらないけどな」。つまり、始める勢いはそのままに、「どうせうまくいかないだろうが」という弱気・諦めの気分が後ろにくっつくのです。自信満々で踏み出すのが here goes! なら、自信はないけど一応やってみる、が here goes nothing。同じ「始めるぞ」の掛け声でありながら、nothing という一語が加わるだけで、話し手の心境が正反対と言えるほど変わります。英語では、こうして本音の弱気を直接「自信がない」と言わず、おどけた言い回しに織り込む傾向が見られます。深刻になりすぎないための、ささやかなユーモアの工夫とも言えるでしょう。
レナードがあっさりと here goes nothing と言ったのに対し、シェルドンが「もっと重々しく」と噛みついたのも、この表現が本来とても軽い、力の抜けた掛け声だからこそでした。
威勢のよさに弱気を一さじ。それが here goes nothing の絶妙な味わいです。
まとめ|ダメ元の一歩を、軽やかに踏み出す英語
here goes nothing は、結果が読めないことに「失敗してもともと」と思い切って踏み出すときの掛け声でした。here goes! という前向きな掛け声に nothing が加わることで、自信のなさをユーモアで包んだ、肩の力の抜けた一言になっています。
大事な面接やプレゼンの直前、深刻に黙り込むのではなく、軽くひと言つぶやいて踏み出せると、自分の気持ちもふっと楽になります。何かに挑む瞬間が訪れたら、here goes nothing をそっと思い出して、会話のレパートリーに加えてみてください。


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