海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
理不尽な扱いを受けた帰り道、仲間と階段を上りながら「よっぽど抗議してやろうか」とこぼす。でも口にした本人も、本気でやるつもりはない。そんな、勢いだけが先走る愚痴の瞬間が、誰にでもあるものです。
そんな気持ちにぴったりの「have a good mind to」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン10第23話で、研究を空軍に取り上げられたシェルドンが、その腹立ちまぎれに口にするシーンから、一緒に見ていきましょう。
「have a good mind to」の意味とニュアンス
have a good mind to
意味:よっぽど〜してやろうかと思う/〜してやりたい気分だ
強い憤りや衝動から「〜してやりたい」と思う気持ちを表す表現です。注目したいのは、多くの場合「実際にはやらない」という含みがあること。本気で実行する宣言ではなく、「やってやりたいくらい腹が立っている」という感情の表明として使われます。
苦情を言いたいとき、警告したいとき、腹を立てたときによく登場します。やや芝居がかった、感情のこもった響きがあり、口語で勢いを出したい場面に合います。「言うだけは言う」けれど行動はしない、という温度感をつかんでおくと、使い方も読み取り方もぐっと楽になります。
【ここがポイント!】
- 核は「やってやりたいくらいの強い衝動」を言葉にする一言
- 多くの場合、実際には行動しない「言うだけ」の含みがある
- 苦情や憤りの場面で、感情を勢いよく出したいときに使うのがコツ
『ビッグバン★セオリー』S10E23のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
一年がかりのプロジェクトを空軍に接収された直後、ハワード、レナード、シェルドンの3人が階段を上りながら不満をぶつけます。理不尽さに憤る流れで、シェルドンが抗議の意思を口にするのですが、そのあとの一言が実にシェルドンらしいオチになっています。
Howard: How can you work on something for a year and they just take it?
(一年も取り組んだものを、ただ取り上げられるなんてあるか?)Leonard: I can’t believe the Air Force would treat us like that.
(空軍があんな扱いをするなんて信じられないよ。)Sheldon: You know, I have a good mind to stop paying my taxes. It’s too bad I enjoy doing them so much.
(よっぽど税金を払うのをやめてやろうかと思うよ。困ったことに、確定申告が大好きなんだけどね。)The Big Bang Theory Season10 Episode23(The Gyroscopic Collapse)
シーン解説と心理考察
3人が階段で不満をぶつけ合う、憤りの熱がにじむ場面です。ハワードとレナードが理不尽さに声を荒げる流れで、シェルドンは「よっぽど納税をやめてやろうか」と抗議の構えを見せます。have a good mind to は、ここで「本気でやる」という宣言ではなく、行き場のない怒りの表明として響きます。
おもしろいのは、その直後にシェルドン自身が「確定申告が大好きだから困る」とオチをつけてしまうところです。せっかく傾けた抗議の気持ちを、自分で帳消しにしてしまう。have a good mind to が持つ「言うだけで実行しない」という含みが、シェルドンの几帳面な性格と重なって、ひとつの笑いになっています。怒っているのに憎めない、彼らしさが表れた一言と言えます。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
mind を「心の天秤」とイメージしてみましょう。a good mind to は、その天秤が「やってやる!」の側にぐっと傾いた状態です。気持ちのメーターは振り切れている。けれども、足は一歩も動かない。これが have a good mind to の核にある温度感です。
劇中のシェルドンは、「納税をやめてやる」と天秤を傾けた直後に、「でも申告が好きだから」と自分で天秤を戻してしまいます。この一往復をイメージすると、「気持ちは満タン、でも行動はしない」という独特の含みが記憶に残りやすくなります。
例文で覚える「have a good mind to」
腹立ちや苦情の気持ちを勢いよく出したいときに活躍するフレーズです。日常からビジネスまで、3つの場面で見ていきましょう。
I have a good mind to call your manager about this.
(この件、よっぽどあなたの上司に電話してやろうかと思うわ。)
店やサービスの対応に腹を立てた場面です。実際に電話するかは別として、「それくらい怒っている」という気持ちを相手にぶつける、苦情の定番フレーズになります。
After that rude email, I had a good mind to ignore him completely.
(あの失礼なメールのあと、よっぽど完全に無視してやろうかと思った。)
無礼な相手への内心の反応を語る場面です。過去形 had a good mind to にすると、「そうしてやりたかったけれど、結局はしなかった」と、思いとどまった経緯までにじませることができます。
A: You’re not actually going to complain, are you?
B: Well, I have a good mind to. They charged me twice for the same thing.
(A:まさか本当に苦情を言うつもりじゃないよね?)
(B:いや、よっぽど言ってやろうかと思ってるよ。同じものを二回も請求されたんだ。)
友人同士の会話で、相手の不満に共感しつつ確かめる場面です。to のあとを省いて have a good mind to で止めると、「そうしてやりたいくらいだ」と勢いだけを残せます。
あわせて覚えたい関連表現
be tempted to
(〜したい誘惑にかられる)
心が引かれて「やってみたくなる」気持ちを表す表現です。have a good mind to が憤りや決意から来るのに対し、be tempted to は魅力や誘惑が動機になる点で温度が違います。
feel like doing
(〜したい気分だ)
軽い気分や衝動を表す日常表現です。have a good mind to はもっと感情が強く、やや芝居がかった響きがあるので、同じ「〜したい」でも勢いの大きさが異なります。
be inclined to
(〜する気がある/〜しがちだ)
穏やかな傾向や意向を表す表現です。have a good mind to の感情的な勢いと比べると、be inclined to はずっと落ち着いた、控えめな言い方になります。
Note|have half a mind to との違い|mind の前の語で変わる本気度
have a good mind to とよく似た表現に、have half a mind to があります。並べてみると、英語が mind の前の語で気持ちの強さを調整していることが見えてきます。
half a mind to は直訳すると「半分の心」で、「ちょっと〜しようかな」という、まだ迷いを含んだ弱めの衝動を表します。たとえば I have half a mind to skip the meeting なら、「会議をサボろうかな、どうしようかな」という揺れた気持ちです。一方の good mind to は「しっかりした心」で、「かなり本気で〜してやりたい」という、より強い感情を表します。同じ mind(心・意向)を使いながら、前に置く語が half(半分)か good(しっかりした)かで、気持ちのメーターの振れ幅が変わるわけです。どちらも「実際にはやらないことが多い」という点は共通していますが、good のほうが憤りや決意の度合いが一段強い、と覚えておくと使い分けに迷いません。
劇中のシェルドンが good を選んでいるのも、軽い迷いではなく、それなりに腹を立てているからこそと読み取れます。
mind の前のひと言が、気持ちの本気度を静かに物語っています。
まとめ|シェルドンの空回りに見る「言うだけ」の気持ち
have a good mind to は、強い憤りや衝動から「よっぽど〜してやろうか」と思う気持ちを表す表現です。多くの場合、実際には行動に移さない「言うだけ」の含みがあるのが、このフレーズの個性と言えます。
腹が立ったとき、苦情を言いたいとき、この一言を知っていれば、「それくらい怒っている」という気持ちを勢いよく相手に伝えられます。本気の脅しではなく感情の表明だと分かっていれば、聞き手も慌てて止めに入らず、うなずいて受け止める余裕が生まれます。
抗議の気持ちを言葉にしたい場面に出会ったら、表現の引き出しに加えてみてくださいね。


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