海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
やられっぱなしは悔しいけれど、大げさに騒ぐほどでもない。次に会ったときに同じだけ返して、それで終わりにしたい。そんな気持ちが顔を出す場面があります。
その気持ちを一言で表す「get even with」を、『メンタリスト』シーズン1第12話の中盤、CBIの取調室でコーチのディーターが追及を受ける場面から、一緒に見ていきましょう。
「get even with」の意味とニュアンス
get even with
意味:〜に仕返しをする、やられた分の借りを返す
even は「平ら・水平」を表す語です。そこから「差がない」「貸し借りなし」という意味へ広がりました。We’re even. と言えば「これでおあいこ」。get even with は、その水平な状態へ戻す動きを人間関係に持ち込んだ言い方になります。
核にあるのは、天秤の傾きを直すという発想です。相手にやられて片側が下がった。だから反対側にも同じだけ載せて、水平に戻す。この「同じだけ」という感覚があるため、破滅的な報復というより、帳尻を合わせるニュアンスが強く出ます。
そのため使える幅が広く、いたずらの返しのような軽い場面から、長年の恨みを晴らす重い場面まで対応できます。with を省いて get even だけでも成立し、I’ll get even with you. なら「この借りは返すからな」という予告になります。
【ここがポイント!】
- 核は「傾いた天秤を、同じだけ載せて水平に戻す」という帳尻合わせ
- 破滅的な復讐ではなく、貸し借りをゼロに戻す感覚が中心にある一言
- 軽い意趣返しから重い報復まで幅広く使えるので、文脈で温度を読むのがコツ
『メンタリスト』S01E12のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
殺害された高校生コーディのロッカーから、コーチのディーターの血がついたシャツが見つかりました。当初は「口論があっただけ」と話していた彼も、鑑識の結果を前に、殴り合いがあったこと、そして生徒に打ち負かされたことを渋々認めていきます。なぜそれを誰にも言わなかったのか。捜査官はその沈黙に、まったく別の理由を当てはめてみせます。
Cho: Laid out by a kid, huh?
(生徒に伸されたと)Dieter: It was a lucky punch.
(まぐれ当たりだ)Cho: So your own student beats you up, and you don’t tell anyone?
(自分の教え子にやられて、誰にも言わなかった?)Dieter: It was no big deal.
(大したことじゃないからな)Cho: Or maybe you figured you’re gonna get even with him the next morning, so best keep it quiet, huh?
(それとも、翌朝に仕返しするつもりだったから、黙っておこうと思ったのでは?)Dieter: No. No. I was too embarrassed.
(違う。違うんだ。恥ずかしかっただけだ)The Mentalist Season1 Episode12(Red Rum)
シーン解説と心理考察
同じ沈黙に別の動機を当てはめて反応を見る。取り調べの定石が、ここでは静かに実行されています。
ディーターが語る理由は「恥ずかしかった」でした。それに対して捜査官が差し出すのは、「翌朝に返すつもりだったから黙っていた」という筋書きです。二人には翌朝に会う約束があったという事実が、この読み替えを成り立たせています。やり返す機会が具体的に決まっていた——そう置き直された瞬間、沈黙の意味が変わります。
get even with が効いているのは、この言葉が時間差を含んでいるからです。その場で殴り返すのではなく、あとで帳尻を合わせる。畳みかけずに一段ずつ逃げ道をふさいでいく組み立てが、短いやり取りのなかに表れています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
天秤の片側に、誰かが石をひとつ載せた場面を思い浮かべてください。皿が傾きます。腹を立てて皿ごと叩き落とすのではなく、反対側にも同じ大きさの石をひとつ載せる。それで水平に戻る。
get even with が表しているのは、この second の石です。相手を打ちのめすことではなく、差を埋めること。だから「復讐」と訳すと重すぎる場面が出てきます。
劇中の追及も、まさにこの構図で組み立てられていました。前の晩に傾いた天秤を、翌朝の約束で戻すつもりだったのではないか。石を載せる場面がいつだったのか、という問いかけです。傾きと、それを戻す一手。この二つをセットで思い浮かべておくと、必要な場面で言葉が出てきます。
例文で覚える「get even with」
この表現は、感情の温度を相手に合わせて調整できるのが強みです。三つの例文で、その幅を見ていきましょう。
He soaked me with a water gun, so I’m going to get even with him at the barbecue.
(水鉄砲でびしょ濡れにされたから、バーベキューで仕返ししてやる)
友人同士のいたずらの応酬です。軽い場面でこそ出番が多く、笑いながら言える程度の温度になります。
Don’t try to get even with them. It will only make things worse.
(仕返ししようとしないで。事態が悪くなるだけだよ)
感情的になっている相手をなだめる場面です。否定形で使うと、行動を止める忠告として機能します。
A: You’re still upset about the meeting?
B: A little. But I’m not trying to get even with anyone.
(A:まだ会議のこと引きずってる?)
(B:少しはね。でも誰かに仕返ししたいわけじゃないよ。)
同僚との率直なやり取りです。「根に持っているわけではない」と伝えたいときに、この否定形が役立ちます。
あわせて覚えたい関連表現
get back at someone
(〜に仕返しする)
置き換えられる場面が多い表現ですが、こちらは「相手を狙って反撃する」という方向性が前面に出ます。get even with は差を埋めるという結果に重心があります。
settle the score
(決着をつける、借りを清算する)
score(得点・勘定)を清算する発想は近いものの、長く持ち越された因縁に決着をつける響きが強く、日常の軽い仕返しには使いにくい言い方です。
pay someone back
(〜に返す)
借金を返す意味と仕返しの意味を兼ねます。恩を返す側にも使えるため、良い意味か悪い意味かは文脈が決めます。
Note|仕返しを表す四つの言い方の距離
日本語では「仕返し」の一語で足りる場面が、英語ではいくつもの言い方に分かれています。ディーターへの追及で get even with が選ばれたのにも、理由があります。
まず revenge。名詞でも動詞でも使えますが、最も重い語です。長期の計画、深刻な被害、人生を賭けた報復といった文脈に置かれることが多く、日常の小さな仕返しに使うと大げさに響きます。take revenge on someone for something という形が代表的です。
次に settle the score。score は得点であり勘定でもあり、この表現は「長く持ち越された貸し借りの清算」を指します。因縁が積み重なっている前提があるため、昨日の出来事には向きません。
get back at someone は口語寄りで、狙いを定めて反撃するイメージです。相手が誰かをはっきり意識している点が特徴になります。
そして get even with。四つのなかで最も守備範囲が広く、水鉄砲のかけ合いから長年の恨みまで乗せられます。天秤を水平に戻すという発想が中心にあるため、被害の大小を問わないからです。
劇中でこの表現が使われたのは、まさにその幅ゆえでしょう。殴られた恥を返すという小さな話にも、はるかに重い結果にもつながりうる。どちらとも決めずに投げかけられる語だからこそ、追及の一手として機能しています。
被害の重さと計画性。英語はその二つで、返し方の言葉を選び分けています。
まとめ|帳尻を合わせるという発想
get even with は、やられた分だけやり返して、傾いた天秤を水平に戻すことを表す言葉でした。核にあるのは打ち負かすことではなく、差をゼロに戻すという感覚です。
だから使える幅が広く、いたずらの返しから深刻な報復まで乗せられます。否定形にすれば「根に持っていない」という表明にもなり、感情の温度を自分で選べます。
沈黙の理由をひとつ置き換えるだけで、部屋の空気が変わる。そんな一手として、表現の引き出しに加えてみてください。


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