海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
相手の感情を数値で言い当てるロボットの目の前で、人間のほうは古い言い回しを使って相手の本音を探る。そんな対比が生まれる瞬間が、ドラマには時々あります。機械のほうが正確に見えてしまう、少し落ち着かない場面です。
その場面で使われる「bad blood」を、『BONES』シーズン12第2話の中盤、ブースが被害者の共同経営者ケイトに二人の関係を尋ねるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「bad blood」の意味とニュアンス
bad blood
意味:確執、遺恨、長く残ったわだかまり
過去の出来事が原因で、当事者のあいだに残り続ける敵意や不信を指します。その場かぎりの口論ではなく、時間をかけて澱のように溜まっていった関係の悪さを表す言葉です。
数えられない名詞である点が、この表現の性格をよく示しています。a bad blood とは言わず、some bad blood、no bad blood のように量で捉えます。対立を出来事の個数ではなく、関係のあいだに満ちている分量として見ているわけです。
between A and B を伴うことが多いのも特徴です。どちらが悪いかを名指しせず、二人のあいだに存在する状態として語られます。責任の所在を曖昧にしたまま関係の温度だけを伝えられるため、事情を尋ねる場面と相性のいい表現です。刑事ドラマの聴取でよく耳にするのも、そのためです。
【ここがポイント!】
- 一度の衝突ではなく、長く残り続けるわだかまりを指す言葉
- 数えられない名詞なので、some や no と組み合わせて量で捉える
- どちらが悪いかを名指ししないので、事情を尋ねるときに使いやすい一言
『BONES』S12E02のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
被害者イアンが共同経営していたのは、人工知能を開発する会社です。ブースとブレナンは、共同経営者のケイトから話を聞きます。直前には同社のロボットAMIが人間の表情を読み取るデモが行われ、AMIはケイトを100パーセント緊張していると言い当てたばかりでした。その空気が残るなかで、ブースが切り出します。
Booth: So, um, you and Ian didn’t have any bad blood, did you?
(それで、あなたとイアンのあいだに確執はなかったんですね?)Kate: Oh, no, we had a very fruitful working relationship. Had Ian lived, I am confident that we would have reached singularity within the next decade.
(ええ、まったく。とても実り多い協働関係でした。イアンが生きていれば、10年以内にシンギュラリティに到達できたと確信しています)Booth: Singularity?
(シンギュラリティ?)Brennan: Singularity is when intelligent machines become indistinguishable from humans.
(シンギュラリティとは、知能機械が人間と見分けがつかなくなる時点のことよ)BONES Season12 Episode2 (The Brain in the Bot)
シーン解説と心理考察
so, um という言い淀みを置いてから質問しているところに、ブースの技が出ています。動機の有無を探る重い問いを、世間話のような軽さで差し出す。相手が身構える前に置いてしまおうという運び方です。
ケイトの返答も興味深いところです。感情を問われたのに、fruitful working relationship(実り多い協働関係)という成果の言葉で答え、さらにシンギュラリティ到達という未来の話へ伸ばしていきます。関係の質を業績で語り直す。その言い換えが、この人物の身のこなしを伝えています。
直前にロボットが彼女を100パーセント緊張していると評していたことも効いています。機械が数値で示した内心と、本人が言葉で語る関係。二つが並べて置かれることで、どちらを信じるべきか迷わされます。人間の感情を機械が測る回において、人間の側が使う言葉が悪い血という古い比喩であることも、この場面の妙味です。
『BONES』流・覚え方のコツ
血液は体の中をめぐり続けるもので、簡単には入れ替わりません。その循環し続ける液体が悪くなっている、という絵がこの表現の芯にあります。だから bad blood は一度の衝突ではなく、関係の中を何年もめぐり続ける感情を指すわけです。
数えられない名詞であることも、この絵で説明がつきます。血は一本二本と数えません。同じようにわだかまりも三つあるとは言わない。some bad blood、no bad blood と量で捉えるのは、液体として見ているからです。
感情を数値で測るロボットの隣で、人間が悪い血という古い言い回しを使っていた。あの対比ごと覚えておくと、記憶に残りやすくなります。
例文で覚える「bad blood」
関係の状態を語る言葉なので、有無を確かめる形と馴染みます。3つの例文で見てみましょう。
There’s been bad blood between the two departments since the merger.
(合併以来、その二つの部署のあいだにはわだかまりが残っている)
組織内の対立を説明する場面です。between と since で当事者と発端が示せます。
I want to make sure there’s no bad blood between us.
(私たちのあいだにわだかまりが残っていないことを確かめておきたい)
次に進む前に関係を整理したい場面です。no bad blood は和解の確認に使われます。
A: Are you inviting Marcus to the wedding?
B: I don’t know. There’s still some bad blood there.
(A:結婚式にはマーカスも呼ぶの?)
(B:どうかな。まだ少し気まずさが残ってて)
人間関係の事情を打ち明ける場面です。some を添えると深刻すぎない程度に和らぎます。
あわせて覚えたい関連表現
hold a grudge
(恨みを抱き続ける)
恨みを抱いている側に焦点がある動詞句です。bad blood が二者のあいだの状態を指してどちらが悪いかを明示しないのに対して、こちらは主語を恨みの持ち主として特定します。
have a beef with
(〜に不満がある)
よりくだけた口語で、対立の規模も小さく一時的なことが多い言い方です。bad blood のような年単位の重さは含みません。
bury the hatchet
(和解する、矛を収める)
bad blood を解消する側の表現で、ちょうど対になります。わだかまりが残っているなら矛を収めよう、という流れで一緒に覚えられます。
Note|英語が「血」で関係を語るとき
bad blood のほかにも、英語には血を使った言い回しが数多くあります。並べてみると、ひとつの世界観が浮かび上がってきます。
blood is thicker than water(血は水よりも濃い)は血縁の強さを、blood feud(血の抗争)は家同士の長い対立を指します。in cold blood(冷血に)は感情を伴わない残酷さ、hot-blooded(血の気が多い)は激しやすい気質。さらに bloodline(血統)、blue blood(高貴な生まれ)と続きます。関係の近さ、対立の深さ、気質の激しさ、身分の高さ。人と人のあいだに関わることの多くが、血という一語で語られています。
興味深いのは、悪化した関係は体内の状態で表されるのに、その修復には別の比喩が割り当てられている点です。bury the hatchet(手斧を埋める)、mend fences(垣根を直す)、clear the air(空気を澄ませる)。どれも身体の外にある物や場所を扱う言い方です。関係が壊れるときは血の問題、直すときは行為の問題。この非対称は、修復が意識的な作業であることを言い当てているようにも見えます。
日本語にも血の気が多い、血縁といった言い方はあります。ただし対立を血で表す発想は英語ほど広がっていません。bad blood を悪い血と直訳しても伝わりにくいのは、この語彙の網の目ごと訳せないからです。
血で語られているのは、簡単には入れ替わらないものごとばかりです。
まとめ|「まだ残っているもの」を指す一言
bad blood は、過ぎた出来事そのものではなく、そのあとに残ったものを指す言葉です。喧嘩の記録ではなく、関係のあいだに今も漂っている温度を表します。
この表現があると、誰が悪かったのかを持ち出さずに関係の状態だけを尋ねられます。事情を知らない相手に切り出すときにも角が立ちません。no bad blood と返せば、和解の確認にもなります。
ロボットが感情を数値で言い当てた直後に、人間が悪い血という古い比喩を持ち出す。その対比が、この表現の持つ体温を際立たせていました。人間関係の機微を語る一言として、表現の引き出しに加えてみてください。


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