海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
「あれもこれも全部そろえて、しかも完璧に」——そんな高いハードルの注文を前にして、思わず「それはなかなか難しいよ」とこぼしたくなる瞬間は、誰にでもあるはずです。
そんなときにぴったりの「a tall order」を、スパイコメディ『CHUCK』シーズン5第7話の前半、クリスマスイブに完璧なパーティーを望む姉エリーに、夫デヴォンが応える場面から、一緒に見ていきましょう。
「a tall order」の意味とニュアンス
a tall order
意味:無理難題、応えるのが難しい要求
tall には「背が高い」だけでなく、程度が「大きすぎる・過大な」という古い用法があり、a tall order で「応えるのが大変な、ハードルの高い注文」を表します。単に difficult と言うより、「求められている水準がそもそも高い」という手応えがこもり、相手を責めるより「なかなか大変だけどね」と受け止めるトーンで使われることが多いのが特徴です。無茶ぶり・高すぎる目標・厳しい納期など、「応えたいけれど簡単ではない」ものを語る場面でよくなじみます。That’s a tall order. の形で、会話の相づちのように短く返せるのも使い勝手のよいところです。
【ここがポイント!】
- 「tall(過大な)」+「order(注文)」で、応えるのが大変な要求を表す
- difficult より「そもそもハードルが高い」という手応えがこもる
- 責めずに「大変だけどね」と受け止めるトーンで使えるのがコツ
『CHUCK』S05E07のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
クリスマスイブ、娘クララにとって初めての完璧なクリスマスを用意しようと気を張るエリー。本物のツリー、ライト、人工の雪、サンタの膝に乗った写真——と次々に望みを並べます。夫デヴォンは持ち前の穏やかさで受け止めつつ、その要求の多さに苦笑いを浮かべます。
Ellie: A real tree, lights, fake snow, and a picture of Clara on Santa’s lap?
(本物のツリーに、ライト、人工の雪、それにサンタの膝に乗ったクララの写真も?)Devon: That’s a tall order, babe.
(それはなかなかの難注文だね)Chuck Season5 Episode7 (Chuck Versus the Santa Suit)
シーン解説と心理考察
娘に最高の初クリスマスを贈りたいエリーの願いが、次々に積み上がる要望となってあふれ出しています。その裏には、亡き父と過ごしたクリスマスの記憶や、同じ幸せを娘に手渡したいという情がにじみます。対するデヴォンの a tall order は、突き放しではなく「ハードルは高いけど分かった」という受容の一言です。難色を示しながらも babe と添えるあたりに、妻の気持ちごと引き受けようとする優しさが表れています。焦る側と支える側、その温度差をやわらかく包む、この夫婦らしいやり取りが見どころと言えます。
『CHUCK』流・覚え方のコツ
a tall order は、カウンター越しに差し出された注文票が、見上げるほど高く積み上がっている——そんな絵を思い浮かべると覚えやすい表現です。応えるには、その高い山をよじ登らなければならない。だから「難しい注文」。エリーがツリー・ライト・雪・写真と要望を積み重ねていき、デヴォンがその「高く積まれた注文」を前に苦笑する場面に、この積み上がる注文票を重ねてみましょう。tall(高い)がそのまま「ハードルが高い」に結びつき、意味が体に残ります。
例文で覚える「a tall order」
a tall order は、依頼・目標・要求が高すぎる/多すぎるときに、角を立てずに難色を示す表現として幅広く使えます。場面を変えた3つの例文で、その使い勝手を確かめてみましょう。
Finishing the whole report by tomorrow is a tall order, but I’ll try.
(レポートを丸ごと明日までに仕上げるのは難しい注文だけど、やってみます。)
無理めの納期を前向きに引き受ける場面です。「難しいけどやる」という受容のトーンがそのまま出ます。
Meeting all these requirements on such a tight budget is a tall order.
(この限られた予算で全要件を満たすのは、かなりハードルが高い。)
条件の厳しさを冷静に伝える場面です。ビジネスの硬めの文脈でも自然になじみます。
A: Can you get it done by Friday?
B: That’s a tall order, but let me see what I can do.
(A:金曜までに終わる?)
(B:なかなかの難注文だけど、できるだけやってみるよ。)
急な依頼に応じる会話です。That’s a tall order, but… と一度受け止めてから前向きに返す、定番の型です。
あわせて覚えたい関連表現
a big ask
(大きなお願い、無理めの頼み)
頼む側の負担の大きさに焦点を当てた、くだけた口語です。a tall order が要求そのものの難易度を言うのに対し、こちらは「そこまで頼んで申し訳ない」という遠慮がにじみます。
easier said than done
(言うは易く行うは難し)
実行の難しさを強調することわざ的表現です。a tall order が要求を受け取った時点の「これは大変だ」に使うのに対し、こちらは「口で言うのは簡単だが」という含みが前に出ます。
a tough call
(難しい判断)
判断・決断の難しさに焦点があります。a tall order は「達成・実現」の難しさで、対象が異なります。
Note|断らずに受け止める緩衝表現としての a tall order
a tall order という言い回しの面白さは、難しい要求を突き返すのではなく、いったん受け止めるクッションとして働くところにあります。
英語圏では、無理めの依頼をいきなり No で返すのを避け、まず That’s a tall order, but… と受け止めてから条件や見通しを添える言い方がよく好まれます。頭ごなしに「無理です」と言えば角が立ちますが、a tall order を挟むと、「あなたの要求はよく分かる。ただ、応えるのは簡単ではない」という二つのメッセージを一息で伝えられます。相手の期待を否定せず、それでいて現実的なハードルの高さも示す——この絶妙なバランスが、日常でもビジネスでも重宝される理由でしょう。difficult や impossible のような直接的な語だと、どうしても拒絶の色が濃く出てしまいますが、a tall order には「難しいけれど、向き合う気はある」という前向きな余白が残ります。
デヴォンのセリフに戻ると、彼が That’s a tall order と返したのは、エリーの願いを退けたかったからではありません。むしろ「その願い、全部受け止めるよ。簡単じゃないけどね」という、引き受ける側の温かさがにじむ一言でした。だからこそ、エリーもそこで諦めず、次の一手(助っ人)を打ち出せたわけです。
難しさを伝えながら、相手の背中は押す。そんな言葉です。
まとめ|デヴォンの受け答えから学ぶ「難注文」の一言
a tall order は、tall が持つ「過大な」という感覚から、「応えるのが難しい要求」を表す表現でした。difficult の一語よりも「そもそもハードルが高い」という手応えがこもり、相手を責めずに「大変だけどね」と受け止めるトーンで使えます。
高すぎる目標、厳しい納期、次々に積み上がる要望——そうしたものを前にしたとき、この一言があれば、拒絶にならないやわらかな難色を示せます。
完璧なクリスマスを望む姉に、デヴォンが穏やかに返したこの表現を、あなたの会話のレパートリーに加えてみてください。
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