海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
失恋や大切なものとの別れで、心がズタズタに引き裂かれたような気持ちになったこと、ありませんか。
そんな強い落ち込みをそのまま言葉にしたのが「tore up about」です。『CHUCK』シーズン3第17話の冒頭、チャックがサラに本当のことを隠そうとして、とっさにモーガンの恋愛話にすり替えるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「tore up about」の意味とニュアンス
tore up about
意味:〜のことでひどく落ち込んでいる、取り乱している
tore up about は、「(あること)のせいで感情的にズタズタに引き裂かれている」という意味の口語表現です。悲しみ・動揺・心痛が強く、軽い「がっかり」ではなく、心が深く揺さぶられている状態を表します。
もとになっているのは tear up(引き裂く)という動詞です。本来の正しい過去分詞は torn up で、be torn up about / over の形が標準ですが、くだけた会話では過去形を流用して tore up と言う話者も多くいます。劇中のチャックのセリフもこの砕けた形です。前置詞は about のほか over もよく使われ、どちらも「何について引き裂かれているか」を示します。失恋や別れ、喪失、悪い知らせへの強い感情的反応を語るときにぴったりの一言です。
【ここがポイント!】
- 核は tear up(引き裂く)。心が一枚の紙のように「引き裂かれた」状態
- 標準形は torn up about/over だが、口語では tore up と崩れることも多い
- 失恋・別れ・喪失など、強い感情の動揺を語る場面で輝く
『CHUCK』S03E17のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ショウが生きているという夢を見たチャックは、それをまだ恋人のサラに打ち明けられずにいます。電話の相手を問われ、とっさに「モーガンの恋愛相談だった」とごまかそうとする、朝のやりとりです。
Sarah: Whose relationship are you talking about?
(誰の関係の話をしてるの?)Chuck: Uh… Morgan’s, Morgan’s. Yeah, Morgan and Anna, the past… He’s just been really tore up about her lately, so…
(あー…モーガンの、モーガンのだよ。うん、モーガンとアナの、その過去の…最近あいつ彼女のことでひどく参ってて、それで…)Sarah: Oh, I thought he rejected her recently.
(あら、最近フッたばかりだと思ってたけど)Chuck: He did, he did, but the heart is a… is a very complicated muscle.
(フッた、フッたよ、でも心ってのは…すごく複雑な筋肉だからね)Chuck Season3 Episode17(Chuck Versus the Living Dead)
シーン解説と心理考察
やましさを抱えたチャックが、口から出まかせで「モーガンがアナのことで落ち込んでいる」と作り話をする場面です。tore up about という感情のこもった口語表現を選ぶことで、いかにも「それらしい」言い訳に仕立てようとする小芝居が伝わってきます。
ところがサラに「最近フッたばかりでは」と返され、つじつまが合わなくなる。苦し紛れに飛び出す「心は複雑な筋肉」という珍妙な比喩が、嘘の上塗りになっているおかしさをやわらかく見せています。
早口で言葉を重ねるほど怪しくなるチャックの空回りが、隠しごとの下手な人の良さとして響きます。tore up about 自体は重い感情語ですが、それを軽い言い訳に流用してしまうミスマッチが、このシーンの笑いどころになっています。
『CHUCK』流・覚え方のコツ
tear up は紙を「ビリビリに引き裂く」動作です。失恋した人の心が、まさに一枚の紙のように tore up(引き裂かれた)状態になっている——そんな絵を思い浮かべてみてください。
チャックが「モーガンの心がアナのことでビリビリだ」と苦し紛れに言い訳する姿と重ねると、感情がズタズタになっている画が記憶に残ります。「心が破れる=torn up」とイメージすれば、be torn up about/over という前置詞のつながりも自然に手に入ります。
例文で覚える「tore up about」
tore up about は、自分や誰かの強い落ち込みを語るときに活躍します。3つの場面で確かめてみましょう。
She’s still really torn up about the breakup.
(彼女はまだ別れのことでひどく落ち込んでいる)
友人の失恋を第三者に話すときの典型的な一言です。standard な torn up の形で、深い心痛が伝わります。
He was torn up about losing his job.
(彼は失業したことでひどく取り乱していた)
about のあとに動名詞を置く形です。「何について引き裂かれているか」をそのまま続けられます。
A: Don’t be too torn up about it — these things happen.
B: I know, I just need some time.
(A:そんなに気に病まないで、よくあることだから)
(B:分かってる、ちょっと時間が要るだけ)
落ち込む相手を慰めるやりとりです。Don’t be too torn up about it で、やわらかく寄り添う言い方になります。
あわせて覚えたい関連表現
broken up about
(〜のことで打ちひしがれている)
tore up about とほぼ同じ意味ですが、broken up は「壊れて沈み込む」イメージ。torn up のほうが「引き裂かれる」激しさが少し強く出ます。
cut up about
(〜のことでひどく傷ついている)
イギリス英語で好まれる言い方です。tore up about はアメリカ口語で使用頻度が高く、地域でのすみ分けがあります。
devastated by
(〜に打ちのめされている)
よりフォーマルで強度も最大級の表現です。tore up about は口語的で、日常会話の中でこそ自然に響きます。
Note|tear が生む「引き裂かれた心」のイメージ
tore up about を深く理解するカギは、もとになった tear up(引き裂く)という動作にあります。なぜ「引き裂く」が、感情の落ち込みを表すようになったのでしょうか。
tear は布や紙を物理的に「引き裂く」動詞で、その過去分詞 torn は「裂けた・破れた」状態を指します。英語では古くから、心や感情を「裂ける・引き裂かれる」もののように捉える発想がありました。悲しみや葛藤で心が一枚に保てず、二つに引き裂かれてしまう——その感覚が、torn up about という形に結晶しています。be torn between A and B(AとBの間で板挟みになる)という表現も同じ発想の親戚で、こちらは「心が二方向に引き裂かれる」迷いを表します。tore up about の場合は、迷いというより「悲しみで心がズタズタになる」方向に比喩が振れているわけです。なお口語で torn up が tore up と崩れるのは、不規則変化の過去分詞(torn)を、より身近な過去形(tore)で代用してしまう英語話者によくある現象で、チャックのような砕けた会話で特に起こりやすくなります。
「引き裂かれる」というたった一つの動作の像が、布から心へと舞台を移すことで、これほど強い感情語になる。tear という言葉の手触りごと覚えておくと、torn up の重さが腑に落ちます。
まとめ|チャックの言い訳から学ぶこと
tore up about は、「(あること)のせいで心がズタズタに引き裂かれている」という強い落ち込みを表す口語表現です。標準形は torn up about/over で、口語では tore up と崩れることもある、と整理できます。
この一言が使えると、失恋や喪失といった重い感情を、英語らしい比喩でそのまま伝えられるようになります。同時に、tear(引き裂く)という動詞が心の世界でどう働くかという感覚も、一緒に身につくはずです。
チャックが苦し紛れの言い訳に持ち出した「really tore up about her」を思い出すと、本来は重いこの言葉が、軽い嘘の道具に使われてしまう——そのちぐはぐさが、ほんの少しおかしく光る場面でした。
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