海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
身近な人の行動の理由がどうしても飲み込めず、「どうしてそうなるのか、さっぱりわからない」と首をかしげた経験はありませんか。
そんなときに使いたい「be beyond someone」を、『フレンズ』シーズン6第9話の後半、隠し事が次々に明かされたあとで、ロスとモニカの母親が娘に一言返す場面から、一緒に見ていきましょう。
「be beyond someone」の意味とニュアンス
be beyond someone
意味:(人)には理解できない、(人)の理解を超えている
be beyond someone は、ある出来事や理由が、その人の理解の範囲を超えたところにあることを表す表現です。beyond は「~の向こうに」を表す前置詞で、be beyond me なら「私の理解が届く範囲の向こうにある」という位置関係になります。
主語に来るのは、理解できない対象です。人は末尾に置かれ、me のほか him / her / us などが入ります。今回のシーンのように、why 節が主語になって、why you felt you had to hide ~ is beyond me という長い形になることもあります。
この記事では be beyond someone の形で紹介していますが、作中の英文では、someone の位置に me が入った形で登場します。理解できないことを、「私が理解できない」と自分を主語にせず、「それが私の外にある」と言い表す点が、この表現の特徴です。
【ここがポイント!】
- 「be beyond someone」の核は、理解の範囲の向こう側にあるというイメージ
- 主語は理解できない対象で、人は末尾に置く
- why 節などの長い主語のあとに置くと、結論が文末に来る形になる
『フレンズ』S06E09のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ロスとモニカが親に隠していたことを次々に言い合ったあと、ロスとモニカの母ジュディが「情報が多すぎる」と受け止め、ジョーイ、レイチェル、フィービーに一言ずつ返していきます。続いてモニカに向けた言葉に、この表現が入ります。父のジャック・ゲラーも加わり、ロスへの問いかけへと続きます。
Mrs. Geller: Monica… why you felt you had to hide the fact that you are in an important relationship is beyond me.
(モニカ……大事な交際をどうして隠さなきゃいけないと思ったのか、私には理解できないわ。)Mr. Geller: And we kind of figured about the porch swing.
(それと、ポーチのブランコのことは、まあ察しがついていたよ。)Mrs. Geller: Ross… drugs, divorced… again.
(ロス……薬物に、離婚……また?)Mr. Geller: What happened, son?
(何があったんだ、息子よ。)Friends Season6 Episode9(The One Where Ross Got High)
シーン解説と心理考察
ジュディの言葉は、モニカの名前を呼ぶところから始まります。呼びかけのあとに、why 節という長い主語が置かれ、最後に「is beyond me」で結ばれる構造です。理由を述べる部分が先に来て、理解できないという結論が文の最後に来るため、文が終わるまで聞き手は結論を待つことになります。
内容は、大事な交際をなぜ隠さなければならないと思ったのか、という一点です。強く責める言葉ではなく、理解できないという感想を前に出した言い方である点が、ジュディの言い方の特徴です。怒りをぶつけるよりも、事情が飲み込めないという戸惑いがにじむ言葉として受け取れます。
続くジャックの「ポーチのブランコのことは察していた」という一言は、親が子どもの隠し事に、すでに気づいていたことを示します。告白が一度に押し寄せた中でも、ポーチのブランコの件だけは、親の側で察しがついていたことが分かります。
ジュディが薬物と離婚を短く並べる「Ross… drugs, divorced… again.」は、三つの語を短く区切って並べる言い方で、ジャックの「What happened, son?」が、ロスに事情を尋ねる形で続きます。両親の役割が、理解できないと述べる母親と、事情を聞く父親という形で、自然に分かれています。
モニカへの言葉が「理解できない」で終わり、ロスへの言葉が「What happened」という問いで終わるのも対照的です。ひとつは感想を述べる形、もうひとつは事情を尋ねる形で、同じ親でも子どもごとに言葉の向きが変わっています。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
手を伸ばしても届かない棚の上に、答えがのっている様子を思い浮かべてみましょう。自分の理解が届く範囲のさらに向こうに、理由が置かれているという位置関係が、beyond の一語に表れています。
ジュディの場面でも、モニカが交際を隠した理由は、母親の手が届かない棚の上にあります。理由を知りたいのに届かない、という感覚が、is beyond me の一言に詰まっています。
beyond は「向こう側」を表す前置詞で、beyond the horizon(地平線の向こう)のような使い方も同じ感覚です。場所の向こう側を表す語が、理解の範囲の向こう側にも使われている、と捉えると整理しやすくなります。地平線の向こうにあるものは見えない、という絵を重ねておくと、理解の範囲の外にあることを思い出しやすくなります。
例文で覚える「be beyond someone」
理由がわからない場面、専門的な内容が及ばない場面、同僚の行動が不思議な場面を、3つの例文で確認していきましょう。
Why he quit his job so suddenly is beyond me.
(どうして彼が急に仕事を辞めたのか、私には理解できない。)
知人の突然の決断に戸惑う場面です。why 節を主語にして最後に beyond me を置く形は、ジュディの言い方と同じ運びです。
How this software works is beyond me. Let’s ask the engineer.
(このソフトの仕組みは、私にはわからない。エンジニアに聞いてみよう。)
専門的な内容の理解が及ばないと伝える職場の場面です。how 節を主語にして、続けて次の行動を提案する流れです。
A: Why is she always late?
B: Beats me. It’s beyond me too.
(A:どうして彼女はいつも遅れるの?)
(B:さあね。私にもわからないわ。)
同僚の行動について話す友人同士の会話です。It が理由を指し、簡単な形でも使えることが分かります。
あわせて覚えたい関連表現
I can’t wrap my head around ~
(~がどうしても飲み込めない)
I can’t wrap my head around は、主語が I で、理解しようとしても頭に入ってこない感覚を表します。be beyond me は、主語が理解できない対象である点が異なります。
It doesn’t make sense to me
(私には筋が通らない)
make sense は、筋が通っているかを問う言い方です。be beyond me は、筋が通っているかどうか以前に、理解が届かないことを表します。
I don’t get it
(わからない)
I don’t get it は、日常のくだけた一言です。be beyond me は、理由や事情を主語にして述べる形で、やや改まった響きを持ちます。
Note|日本語は「私が理解できない」、英語は「それが私の外にある」
be beyond me は、日本語にすると「私には理解できない」となります。英語の主語は理解できない対象で、日本語の主語は理解できない人です。主語の向きが逆になる表現です。
日本語では、「私が理解できない」と自分を主語にし、理解する動作の主体を前に出します。英語の is beyond me は、対象を主語にして、それが自分の理解の範囲の外にあると述べます。たとえば Why he left is beyond me. は、「なぜ彼が去ったのかは、私の理解の外にある」という構造で、私に向かって届かない位置に理由があるという絵になります。この形では、責める気持ちよりも、事情が飲み込めないという戸惑いが前に出ます。
ジュディの言葉も、この形です。モニカを強く責める言い方ではなく、理由が自分の理解の外にあると述べています。「あなたのしたことは許せない」と訳すと、母親の強い非難に読めてしまいますが、「私には理解できないわ」と訳すと、戸惑いを伝える言葉になり、原文の温度に合います。
同じ「理解できない」でも、主語の向きで、感情の温度が変わります。
まとめ|理解の範囲の外にある、という言い方
be beyond someone は、ある出来事や理由が、その人の理解の範囲を超えたところにあることを表す表現です。主語は理解できない対象で、人は末尾に置きます。
why 節や how 節を主語にして、最後に beyond me を置く形が典型で、理由や仕組みがわからないと伝える場面で使えます。I can’t wrap my head around や I don’t get it と比べて、対象を主語にする点が特徴です。
ジュディの一言は、強く責める言葉ではなく、理由が飲み込めないという戸惑いを前に出した言い方でした。理解が及ばないことを、穏やかに言い表したい場面を思い浮かべながら、表現の引き出しに加えてみてください。


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