海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『フレンズ』シーズン6第22話では、モニカ・レイチェル・フィービーの3人が出かけた博物館で、式場として使える部屋の予約が2年待ちだと聞く場面があります。結婚の予定はないと言うモニカも、勧められて順番待ちのリストに名前を書きます。
「やっても困ることはない」という言い方は、英語でも形がいくつかあります。自分で決めるとき、言われた言葉をまねて言い返すとき、相手に同意を求めるときの3つの場面で見比べます。
「There is no harm in ~」名前を書いておくだけ、と自分で決める
博物館では、担当者が別のカップルに式の段取りを説明していました。それを見たレイチェルが、話に割り込んだことを詫びてから、担当者にこう尋ねます。
Rachel: Do you do a lot of weddings here?
(ここではよく結婚式をするの?)
The Museum Official: Yes, we’re very popular. There’s a two-year waiting list. Sorry.
(はい、とても人気がございます。2年待ちでございます。申し訳ありません。)
Rachel: Monica, you should totally put your name down for this place.
(モニカ、ここに名前を書いておきなよ。)
Monica: What? Are you crazy? I’m not getting married. I’m not even engaged.
(何言ってるの?どうかしてる。結婚なんてしないわよ。婚約だってしてないのに。)
Friends Season6 Episode22(The One Where Paul’s the Man)
waiting list は順番待ちのリストで、two-year を前に置くと「2年待ち」と長さを添えられます。put one’s name down (for ~) は、リストや申込用紙に名前を書いて申し込むという意味の句動詞です。レイチェルは totally を添えて、軽い調子で強く勧めています。
モニカの I’m not even engaged. の not even は「〜ですらない」と、前の文よりさらに手前の段階を持ち出して否定を強める言い方です。結婚しないどころか婚約もしていない、と順に打ち消すことで、名前を書く理由がないことをはっきりさせる流れです。
フィービーが2年待ちの計算を持ち出して冗談まじりに勧め、レイチェルも後押しすると、モニカはこう答えます。
Monica: Well, I guess there is no harm in putting my name down.
(まあ、名前を書いておくぶんには困ることもないわね。)
Rachel: I’m going to do it, too.
(私も書く。)
Phoebe: Me, too.
(私も。)
Friends Season6 Episode22(The One Where Paul’s the Man)
There is no harm in ~ing は「〜しても損はない」という意味で、後ろには動名詞が続きます。前に I guess を置くことで、迷っていた本人が自分を納得させる言い方になります。ほかの2人もすぐに「私も」と続き、3人とも名前を書くことになります。
「What harm can it do if ~?」言われた言葉をまねて言い返す
場面が移り、留守番電話に式場の空きの知らせが入り、それをチャンドラーが聞いてしまいます。カフェのセントラルパークに駆けつけたモニカは、フィービーにこう話します。
Monica: And he totally freaked out and I can’t find him anywhere.
(それで彼、すっかり取り乱しちゃって、どこを探してもいないの。)
Phoebe: What are you going to do?
(どうするの?)
Monica: I’m never going to listen to you again that’s for sure. And what harm can it do if you just put your name down?
(もうあなたの言うことなんて絶対聞かない。「名前を書くだけなら何の害があるの?」だなんて。)
Phoebe: Rachel said that.
(それ言ったのはレイチェルよ。)
Monica: Well, Rachel’s not here!
(だって、レイチェルはここにいないじゃない!)
Friends Season6 Episode22(The One Where Paul’s the Man)
What harm can it do if ~? は「〜したところで、どんな害があるの?」と尋ねる形をとった反語です。答えは「害なんてない」という前提で、相手の背中を押すときに使われることの多い形です。ここではモニカが、博物館で言われた勧めの言葉を口調ごとまねて言い返しているので、もとの意味とは逆に「その言葉のせいで困ったことになった」という不満を伝える働きに変わります。
博物館で「名前を書いても困らない」と後押ししたのはレイチェルでした。フィービーは「それを言ったのは私ではない」と短く指摘し、モニカは「その本人がここにいない」と返します。言った人がいないので目の前の相手に言うしかない、という言い分で、~ said that. と ~’s not here. の短い文の応酬がテンポを生んでいます。勧めた本人がいない場では、そばにいる相手に矛先が向かうこともある、という流れが分かります。
「What’s the harm in that?」と同意を求めて、冗談で返される
部屋に戻ってきたチャンドラーに、モニカは名前を書いたいきさつを説明します。
Monica: Honey, we were at this beautiful place and I just put our names down for fun. I mean, what’s the harm in that?
(ねえ、素敵な場所にいて、遊びのつもりで名前を書いただけなの。だって、それの何がいけないの?)
Chandler: Right here.
(ここにいるだろ。)
Monica: Chandler, please don’t think I was trying to pressure you. Phoebe and Rachel just thought that…
(チャンドラー、プレッシャーをかけようとしたなんて思わないで。フィービーとレイチェルがね……)
Friends Season6 Episode22(The One Where Paul’s the Man)
What’s the harm in that? は、自分のしたことを指して「それの何が悪いの?」と相手に同意を求める言い方です。There is no harm in ~ が自分の判断を述べるのに対し、こちらは問いかけの形で相手に「悪くない」と言ってもらう方向に話を向けます。前に置いた just ~ for fun は「遊びで〜しただけ」と、深い意味はないことを先に伝える添え方です。
チャンドラーの Right here. は、harm がどこにあるのかという問いに「ここにある」と自分のことだと答える冗談です。問いかけの反語に、文字どおりの言葉を返して笑いにしています。right here は「まさにここに」と場所を強く指す言い方で、物を差し出すときや自分を指すときにも使えます。モニカの Please don’t think I was trying to ~. は「〜しようとしたとは思わないで」と、誤解を先回りして解こうとする前置きで、続けて事情を話しかけます。
まとめ|「害はない」を伝える3つの形
There is no harm in ~ing は自分で決めるとき、What harm can it do if ~? は相手の背中を押すとき、What’s the harm in that? は自分のしたことに同意を求めるときの形です。同じ harm でも、誰に向けた言葉かで働きが変わります。
博物館から部屋までの流れを追って観ると、ひとつの勧め文句の行方がよく見えてきます。
同じエピソードのほかのコラムやフレーズ記事では、この回の別の場面の英語を取り上げています。


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