「cut someone some slack」の意味と使い方|『フレンズ』S02E08で学ぶ英会話

「cut someone some slack」の意味と使い方を解説

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

みんなで誰かを責めている場に居合わせて、「まあ、そこまで言わなくても」と口を挟みたくなったことはありませんか。責める空気を少しだけゆるめてあげたい。そんな気持ちを、英語ではひとことで言い表せます。

そんなときに使えるのが「cut someone some slack」という表現です。相手を厳しく追い詰めず、大目に見てあげようという呼びかけになります。『フレンズ』シーズン2第8話の後半、ロスが責められている場に居合わせたジョーイが、思わず友人をかばう場面から、一緒に見ていきましょう。

目次

「cut someone some slack」の意味とニュアンス

cut someone some slack
意味:(人を)大目に見る、勘弁してやる

slack は「たるみ」を意味する名詞です。ぴんと張ったロープではなく、少しゆるんで余裕のある状態を指します。

その slack を cut して(切り出して)相手に分け与える、というのがこの表現の成り立ちです。張り詰めたロープをゆるめるように、相手を締め上げている力を少しだけ抜いてあげる。そんな身体的なイメージが根にあります。

日本語では「大目に見る」「勘弁してやる」と訳されますが、単なる許しとは少し違います。「相手にも事情があるのだから、そこまで厳しくするな」という、状況への配慮がセットになった表現です。

主語は誰かを責めている側で、目的語には責められている人が入ります。Cut me some slack. と自分を目的語にすれば「そんなに責めないでよ」という、抗議とお願いの中間くらいの一言になります。some は省略されることもあり、cut someone slack の形も見かけます。

【ここがポイント!】

  • 核にあるのは slack、ぴんと張ったロープをゆるめる「たるみ」のイメージ
  • 単なる許しではなく「相手の事情を汲む」配慮がにじむ一言
  • Cut me some slack. と自分に向ければ、抗議まじりのお願いになるのがコツ

『フレンズ』S02E08のシーンで見てみよう

意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。

ロスがある「リスト」を作っていたことが露見し、レイチェルとフィービーが口々に彼を責め立てています。カフェの空気は完全にロスを追い詰める方向に傾いているのですが、そこへジョーイが助け舟を出します。ところが、そのかばい方が思わぬ方向へ話を転がすことになります。

Rachel: I cannot believe Ross even made this list.
(ロスがこんなリスト作ったなんて、信じられない。)

Phoebe: I know. What a dinkus!
(ほんとよね。何なのあのバカ。)

Joey: Hey, cut him some slack. It was Chandler’s idea.
(おいおい、そいつは勘弁してやれって。あれはチャンドラーのアイデアなんだから。)

Monica: Oh, good, I was hoping that would come up.
(あら、いいわね。それが出てくるのを待ってたのよ。)

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シーン解説と心理考察

責める側に回った二人の言葉は、遠慮なく短く鋭く飛びます。信じられない、何なのあのバカ。畳みかけるような否定が、その場の空気を一段ずつ張り詰めさせていく場面です。

そこへ割って入るジョーイの cut him some slack には、仲間を守ろうとする義理堅さが表れています。彼は理屈でロスを弁護するのではなく、「そこまでにしてやれ」と空気そのものをゆるめにかかりました。

ところが続けて口にした一言が、事態を思わぬ方向へ運びます。あれはチャンドラーの案なんだから。友人をかばうために持ち出した事実が、そのまま別の友人を差し出す結果になってしまうのです。

すかさず「それが出てくるのを待ってた」と応じるモニカの反応に、この場を仕切り直す気満々の姿勢がにじみます。ジョーイがゆるめたロープの端が、そのままチャンドラーに巻きついていく。その連鎖が、コメディとしての切れ味を生んでいる場面と言えます。

『フレンズ』流・覚え方のコツ

両手でロープをぴんと張った状態を思い浮かべてみてください。張力がかかり、少しでも動けばきしむような緊張感。これが、誰かを責めている場の空気です。

cut someone some slack は、そのロープに手を入れて、たるみをひとすくい切り出して相手に渡す動作にあたります。ロープはゆるみ、相手は少しだけ息をつける。

劇中でジョーイがやったのは、まさにこれでした。レイチェルとフィービーが引っ張っていたロープに手をかけて、「そこまで張るな」とゆるめにいったのです。もっとも、ゆるんだ端が別の誰かに絡んだのは彼の誤算でした。

張られたロープ、たるみ、そしてゆるむ手ごたえ。この三点を身体で覚えておけば、slack という語が「寛大さ」に届く道筋が見えてきます。

このエピソードの他のフレーズ

例文で覚える「cut someone some slack」

cut someone some slack は、責める空気をゆるめたい場面で使われます。誰かをかばうときから、自分を守るときまで、三つの使い方を見ていきましょう。

Come on, cut him some slack. It’s his first day.
(まあまあ、大目に見てあげて。初日なんだから。)
入ったばかりの同僚のミスを、周囲が厳しく指摘している場面です。「初日なんだから」と事情を添えることで、slack を分け与えるべき理由が相手にも伝わり、責める空気が自然にゆるみます。

Let’s cut the new team some slack while they settle in.
(新しいチームが慣れるまでは、大目に見ましょう。)
新体制の立ち上げ期に、すぐ成果を求めない姿勢をチームへ共有する場面です。someone の位置には個人だけでなく集団も入り、settle in(慣れる)までの猶予を明示する言い方になります。

A: You’re late again. That’s the third time this week.
B: Cut me some slack, I’ve been working double shifts.
(A:また遅刻。今週三回目だよ。)
(B:勘弁してよ、ずっとダブルシフトで働いてるんだから。)
遅刻を責める同僚と、事情を抱えた本人との一往復です。cut me some slack は、開き直りではなく「こちらの状況も汲んでほしい」というお願いとして響き、抗議と懇願の中間に着地します。

あわせて覚えたい関連表現

give someone a break
(大目に見る、勘弁する)
cut someone some slack とほぼ重なる口語表現です。ただし Give me a break! と強い調子で言えば「いい加減にして」という抗議へ振れます。同じ「勘弁して」でも、slack のほうが穏やかに響きます。

go easy on someone
(〜に手加減する、厳しくしない)
叱責や指導の強さを下げるときの言い方です。slack が相手に「余裕を持たせる」のに対し、こちらは責める側が「力を抜く」という手加減そのものに焦点を当てます。視点の置き場所が逆になります。

let someone off the hook
(〜を見逃す、責任を免れさせる)
釣り針から魚を外すように、責任や罰そのものから解放することを指します。slack が「厳しくしすぎない」という程度の話なのに対し、こちらはお咎めなしという地点まで踏み込む点が異なります。

Note|slack が「たるみ」から「寛大さ」になるまで

cut someone some slack という言い回しを初めて見ると、なぜ「切る」ことが「大目に見る」になるのか、少し戸惑うかもしれません。鍵は slack という語が背負ってきた歴史にあります。

slack はもともと「ゆるい、たるんだ」を意味する古い形容詞でした。張っていないもの、引き締まっていないもの、勢いのないもの。そこから名詞化して「ロープのたるみ」そのものを指すようになります。

この名詞用法が生き生きと使われたのが、帆船の甲板の上でした。帆を操り、錨を上げ下ろしする船乗りたちにとって、ロープの張り具合は生死を分ける問題です。張りすぎれば切れる。ゆるみすぎれば効かない。だから彼らは常に slack を調整し、必要なときには take up the slack(たるみを取る)、逆に give slack(たるみを与える)と指示を出しました。

この give slack が人間関係へ持ち込まれたのが cut someone some slack です。二十世紀のアメリカ英語で広がった言い回しとされ、比喩の道筋はきわめて素直と言えます。ぴんと張ったロープは、追い詰められた人。そこにたるみを与えれば、その人は少し動ける。

余談ながら、ビジネスチャットツールの Slack も、この「たるみ・ゆとり」の含意を汲んだ名前とされています。張り詰めた業務のあいだに、ゆとりを差し込む場所。名前の選び方に、slack という語の温度がよく表れています。

たるみは、弱さではなく余裕なのです。

まとめ|ジョーイがゆるめたロープの行方

cut someone some slack は、張り詰めた空気に「たるみ」を差し込む表現です。核にあるのは slack というロープのゆるみで、そこには「相手にも事情がある」という配慮が織り込まれています。単なる許しではなく、状況を汲んだうえでの寛大さだと言えます。

この一言が使えるようになると、責める場と責められる場の両方で立ち回りが変わります。誰かをかばうとき、自分の事情を伝えたいとき、角を立てずに空気をゆるめる手立てが増えるでしょう。

劇中でジョーイがゆるめたロープは、思わぬ相手に絡んでいきました。それでも、追い詰められた友人に息をつかせようとした一言そのものは、まっすぐです。誰かの張り詰めた背中を思い出したときのために、会話のレパートリーに加えてみてください。

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