海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
思いがけず褒められて、嬉しいのに素直に受け取れず、「もう、やめてよ」と手を振ってしまった経験はありませんか。日本語でも、驚きが大きいほど言葉は否定形になりがちです。
英語にもよく似た一言があります。「get out of here」は、文字どおりなら「ここから出て行け」ですが、会話では「まさか」「うそでしょ」という驚きを表します。『Friends』シーズン3第20話の中盤、劇場で思わぬファンに声をかけられたジョーイが返すシーンから、一緒に見ていきましょう。
「get out of here」の意味とニュアンス
get out of here
意味:まさか、うそでしょ、冗談だろ
字面は「ここから出て行け」という追い出しの命令ですが、日常会話ではまったく別の働きをします。信じがたい話を聞かされたときの、驚きや半信半疑の表明です。相手を追い払う言葉が驚きを表すという転用は英語にいくつも例があり、Go on や Away with you も同じ型を持っています。
使われる場面には、はっきりした偏りがあります。疑いよりも嬉しい驚きに使われることが多く、褒められて照れたときの返し、意外な good news への反応などが典型です。相手を本気で疑っているわけではなく、「そんなうまい話があるの?」という温度で発せられます。悪い知らせに対しては、あまり選ばれません。
意味を分けるのは、語ではなく声と表情です。本気の追い出しなら語気が強くなり、驚きなら語尾が上がって顔がほころびます。字面が同じでも、聞き手が迷うことはほとんどありません。
【ここがポイント!】
- 「出て行け」ではなく「まさか」。相手ではなく話のほうを押し返している一言
- 疑いよりも嬉しい驚きに使われることが多く、照れ隠しの返しとしても働く表現
- 字面が同じでも声のトーンと表情で意味が分かれるので、そこを聞き取るのがコツ
『Friends』S03E20のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
舞台のリハーサル前、ジョーイは共演者のケイトに話しかけようとしますが、そっけなくかわされてしまいます。取り残されたところに声をかけてきたのが、ケイトの代役を務めるローレンでした。彼女はジョーイの過去作のファンだと打ち明けます。役者としての自信が揺らいでいたジョーイに、この告白は不意打ちでした。
Lauren: I know! I’m a big fan of yours.
(知ってます! 大ファンなんです)Joey: What?
(えっ?)Lauren: I used to schedule my classes so I could watch Dr. Drake Ramoray on Days of Our Lives.
(ドクター・ドレイク・ラモーレを観るために、授業の時間割を組んでたくらいで)Joey: Get out of here, really?
(うそだろ、マジで?)Friends Season3 Episode20(The One with the Dollhouse)
シーン解説と心理考察
このやりとりの直前、ジョーイはケイトに話しかけて失敗しています。用意していた話は宙に浮き、彼女は演出家に呼ばれて行ってしまう。誰にも聞かれないまま、ひとりで話の続きをつぶやくジョーイの姿は、この回でもっとも所在なさげな場面のひとつです。
そこへ届いたのがローレンの「大ファンです」でした。ジョーイの最初の反応が What? である点に注目したいところです。数秒前に自分の話を聞いてもらえなかった相手にとって、自分に向けられた好意は一拍遅れて届きます。聞き取れなかったのではなく、届いた言葉と直前の扱いとの落差に、処理が追いついていないわけです。
続く Get out of here は、その一拍のあとに出てきた言葉です。追い出しではなく、嬉しさを持て余した押し返しであることが、声の弾み方から伝わってきます。役者としての自尊心が回復していく瞬間が、この短い一言に収まっていると言えます。過去作の話題で自嘲まじりに応じるあたりも、ジョーイらしい受け止め方です。
『Friends』流・覚え方のコツ
get out of here を覚えるときは、驚いた勢いで相手の肩を軽く押して、自分は半歩下がる——その身振りを思い浮かべてみてください。言葉としては「出て行け」ですが、実際にやっているのは「その話を持って一歩下がってくれ」という照れ隠しの押し返しです。
ジョーイの反応がそのまま教材になります。What? と固まり、次に Get out of here と返す。声には怒りの成分がまったくなく、嬉しさが漏れています。
見分け方のコツも身振りで覚えられます。本気で追い出すときは相手を見ずに指を差し、驚いたときは相手の顔を見て笑う。視線の向きが、同じ言葉の意味を分けています。
例文で覚える「get out of here」
驚きの温度と、相手との距離感がそのまま出る表現です。3つの場面で確かめてみましょう。
Get out of here, you’re joking.
(まさか、冗談でしょ)
信じがたい話を聞かされた場面です。you’re joking を添えると疑いの色が濃くなり、驚きよりも真偽を確かめたい気持ちのほうが前に出ます。
Oh, get out of here. You’re too kind.
(もう、やめてよ。褒めすぎだって)
褒められて照れる場面です。劇中のジョーイにもっとも近い温度で、否定しているようでいて、まんざらでもない気持ちがにじみます。
A: I got the job.
B: Get out of here! That’s amazing!
(A:採用されたよ。)
(B:うそでしょ! すごいじゃない!)
友人の good news に反応する場面です。驚きのあとに祝福の言葉を続けるのが自然な流れで、疑っていないことが相手にも伝わります。
あわせて覚えたい関連表現
No way!
(まさか!/ありえない!)
もっとも汎用的な驚きの表現で、良い知らせにも悪い知らせにも使えます。get out of here が嬉しい驚きに偏るのに対し、こちらは場面を選びません。
You’re kidding (me).
(冗談でしょ)
相手の発言が冗談ではないかと確認するニュアンスがはっきり出ます。get out of here より疑いの成分が強く、真偽を確かめたいときに向きます。
Shut up!
(うそ!/やだ!)
同じく「黙れ」の字面から転じた驚きの表現です。get out of here より砕けていて、使える相手が親しい間柄に限られる点に注意が必要です。
Note|驚き表現の使い分け地図
「まさか」を表す英語は、一つではありません。No way、You’re kidding、Get out of here、Shut up。日本語に訳せばどれも似た一言になりますが、使える相手と場面は驚くほど違います。
選び分けの軸は二つあります。驚きの方向と、相手との距離です。No way はどちらの軸でも中立で、良い知らせにも悪い知らせにも、初対面の相手にも使えます。迷ったときの安全な一手です。You’re kidding は方向が疑いに寄り、相手の発言の真偽を確かめにいきます。Get out of here は方向が嬉しい驚きに大きく偏り、距離はやや近め。訃報のような場面で使えば、ちぐはぐに響きます。Shut up は方向こそ get out of here と似ていますが、距離が極端に近く、親しい間柄以外では失礼になります。この地図で見ると、ジョーイの選択は理にかなっています。初対面のローレンに Shut up は近すぎ、No way では素っ気ない。褒められた嬉しさを、失礼にならない距離で返せるのが Get out of here だったわけです。
驚きの表現を覚えるときは、意味だけでなく、方向と距離をセットにしておく。それだけで、選び間違いがぐっと減ります。
訳が同じでも、届き方まで同じとは限りません。
まとめ|ジョーイの照れ隠しから学ぶこと
get out of here は、驚きが大きすぎて素直に受け取れないときの一言です。追い出しの言葉を借りていますが、実際に押し返しているのは相手ではなく、信じがたい話のほうだと考えると腑に落ちます。
この表現を知っていると、聞き取りの精度が変わります。字面どおりに受け取れば決裂の場面に見えるやりとりが、実は照れ隠しだった、ということが起こらなくなるからです。自分が使う側になれば、褒められたときの返しに幅が出ます。
ケイトに冷たくされた直後のジョーイが、思わぬ承認に声を弾ませた場面でした。あの表情とセットで、会話のレパートリーに加えてみてください。


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