海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
飲み会の帰り際、みんなが先に帰ってしまい、気づけば自分だけが会計を任されていた。望んでもいない厄介事を、なぜか一人で抱え込まされる場面があります。
そんなときにぴったりの「get stuck with」を、『フレンズ』シーズン3第7話の終盤、注文と違うベッドを押し付けられたモニカが、店に返品を求めて乗り込むシーンから、一緒に見ていきましょう。
「get stuck with」の意味とニュアンス
get stuck with
意味:(厄介なもの)を押し付けられる、抱え込まされる
get stuck with は、望んでいないもの・厄介事を背負わされて、手放せずに困る状況を表す表現です。stuck(動けない・貼りついた)という語のイメージから、「嫌なものがくっついて離れず、身動きが取れない」という被害や迷惑のニュアンスが核にあります。
押し付けられる対象は、人・物・仕事のどれにも使えます。get stuck with the bill(会計を押し付けられる)、get stuck with the paperwork(書類仕事を任される)、get stuck with a broken car(故障車をつかまされる)のように、幅広く登場します。
貧乏くじを引いたとき、嫌な役目や不良品を押し付けられたときにぴったりの、日常会話でとてもよく使われる口語表現です。
【ここがポイント!】
- 核は「嫌なものが貼りついて手放せない」という被害の感覚
- 押し付けられる対象は、人・物・仕事のどれにも使える
- get stuck with the bill(会計を押し付けられる)は特に頻出の形
『フレンズ』S03E07のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
フィービーが「モニカのふり」をして配達伝票にサインしたせいで、注文したはずの普通のベッドではなく、子ども用のレースカーベッドが届いてしまいます。返品もできず、モニカが自らマットレス店に乗り込んで抗議する場面です。
Monica: I’m the lady who got stuck with the race car bed.
(あのレースカーのベッドを押し付けられた者です。)Jester: Look, it’s like I told you. There’s nothing I can do. You signed for it.
(あのですね、言った通りです。どうにもできません。あなたがサインしたんですから。)Friends Season3 Episode7(The One with the Race Car Bed)
シーン解説と心理考察
モニカの got stuck with には、理不尽を背負わされた苛立ちがにじむ場面です。几帳面で完璧主義な彼女にとって、意にそぐわない子ども用のベッドを抱え込まされた状況は、耐えがたいものがあります。
自分を「レースカーベッドを押し付けられた女」と名乗るところに、その憤りが凝縮されています。注文したのは普通のベッドなのに、フィービーの余計な機転のせいで、手放せない厄介物を背負うことになった。get stuck with の「貼りついて離れない」というニュアンスが、この状況にぴたりと重なります。
店員がすげなく「サインしたのはそちらだ」と突き放すことで、モニカの行き場のなさがいっそう際立ちます。正論で押し返されて動けない。そのやりとりが、彼女の抱えた理不尽さを浮かび上がらせています。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
get stuck with は、stuck の「ベタッと貼りついて動けない」イメージから入るのがコツです。ガムが靴の裏にくっついて取れないように、嫌なものが自分に貼りついて離れない。そこから「厄介事を背負わされる」という被害の感覚が立ち上がります。
思い浮かべたいのは、飲み会で一人だけ会計を押し付けられ、席から動けずにいる自分の姿です。みんなは帰ってしまい、伝票だけが手元に残る。あの「なんで自分が」という感覚が、get stuck with そのものです。モニカが望まないベッドを抱え込まされて店に乗り込んだ、あの理不尽さと重ねておくと、「押し付けられて困る」というニュアンスごと記憶に残ります。
例文で覚える「get stuck with」
get stuck with は、貧乏くじを引く場面で活躍します。3つの使い方を見ていきましょう。
I got stuck with the bill because everyone else left early.
(みんな先に帰ったから、支払いを押し付けられた。)
飲み会での定番の場面です。get stuck with the bill は非常によく使われる形で、「会計を一人で背負わされる」あの状況を表します。
She got stuck with all the paperwork after the meeting.
(会議の後、彼女は書類仕事を全部押し付けられた。)
職場で面倒な仕事を丸投げされる場面です。物だけでなく、こうした「嫌な役目」を押し付けられるときにも自然に使えます。
A: How was the trip? B: Terrible. We got stuck with a broken rental car.
(A:旅行どうだった? B:最悪。故障したレンタカーをつかまされたんだ。)
近況を尋ねる会話です。このシーンのベッドと同じく、「不良品をつかまされた」という被害を語る使い方になっています。
あわせて覚えたい関連表現
be saddled with
(負担・重荷を負わされる)
「鞍(saddle)を乗せられる」が語源の表現です。get stuck with が日常の厄介事に軽く使えるのに対し、be saddled with は借金や重い責任など、より重たい負担を負わされる場面に向いた、ややフォーマルな言い方です。
be left holding the bag
(責任・後始末を一人で押し付けられる)
みんなが去ったあと、一人だけ後始末を背負わされる状況を表す表現です。get stuck with より「責任の丸投げ」の色が濃く、貧乏くじの中でも特に「最後に残されて損をする」場面で使われます。
get lumbered with
(面倒事を押し付けられる)
主にイギリス英語で使われる表現で、意味は get stuck with とほぼ同じです。「厄介事を背負わされる」という被害のニュアンスを共有しており、地域による言い換えとして押さえておくと便利です。
Note|stuck が「貼りついて動けない」から生む被害の感覚
get stuck with の stuck は、動詞 stick の過去分詞です。なぜ「貼りつく」を意味する語が、「厄介事を押し付けられる」という被害の表現になったのでしょうか。その道すじには、身近な「くっつく」感覚があります。
stick はもともと「刺さる」「貼りつく」を意味する語です。その過去分詞 stuck は、「貼りついて離れない」「はまり込んで動けない」という状態を表します。この「動けない」という核から、英語ではさまざまな表現が生まれました。be stuck in traffic(渋滞にはまる)は、車が進めず動けない状況です。be stuck on a problem(問題で行き詰まる)は、考えが先に進まない状態を指します。そして get stuck with になると、「嫌なものが自分に貼りついて、手放せずに動きが取れない」という被害の意味へと広がります。ガムが靴底に貼りつくように、厄介事が自分にくっついて離れない。この身体的で具体的なイメージが、「押し付けられて困る」という感覚をありありと伝えるのです。日本語の「貧乏くじを引く」が偶然の不運を表すのに対し、get stuck with は「貼りついて離れない」という、より身動きの取れなさを強調した言い方だと言えます。
モニカが「レースカーベッドを押し付けられた」と言ったとき、その一語には、返品もできず抱え込むしかない手詰まりの感覚がこもっていました。ベッドが彼女に「貼りついて」離れない。stuck のイメージが、この状況をそのまま言い表しています。
言葉は、身近な物理の感覚から、心の状態までも描き出すのでしょう。
まとめ|モニカが抱え込まされた厄介物
get stuck with は、望んでいないもの・厄介事を押し付けられ、手放せずに困る状況を表す表現です。stuck の「貼りついて動けない」というイメージを思えば、この句が持つ被害の感覚も腑に落ちます。
be saddled with のような重い負担の表現との違いを意識できると、厄介事の「重さ」に応じて言い方を選び分けられるようになります。
注文と違うベッドを抱え込まされ、憤然と店に乗り込んだモニカの姿を思い返せば、get stuck with の「押し付けられて動けない」感覚が、記憶に残りやすくなる場面でした。


コメント