「have nothing to lose」の意味と使い方|『フレンズ』S03E18で学ぶ英会話

「have nothing to lose」の意味と使い方を解説

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

自分では言い出せないことを、誰かに代わりに言ってほしくなる。しかも「あなたは痛くも痒くもないでしょ」と、つい相手の立場まで決めつけてしまう。そんな身勝手な瞬間が、誰にでもあるのではないでしょうか。

そんなときに口をつく「have nothing to lose」を、『フレンズ』シーズン3第18話の中盤、弟の結婚を止めたいフィービーがロスとジョーイに説得役を押しつけようとするシーンから、一緒に見ていきましょう。

目次

「have nothing to lose」の意味とニュアンス

have nothing to lose
意味:失うものが何もない、やってみて損はない

失敗しても失うものがないのだから、やってみればいい。そういう後押しの場面で使われる表現です。日本語の「だめで元々」に近い働きをします。

構造はシンプルで、nothing を to lose が後ろから説明する形です。「失うべきものが何もない」。同じ作りで something to eat(何か食べるもの)、nothing to do(することがない)と並びます。

使われ方は大きく二つあります。ひとつは自分について、「どうせ失うものはないから挑戦する」と腹をくくるとき。もうひとつは相手について、「あなたは失うものがないでしょう」と背中を押すとき、あるいは押しつけるときです。You have nothing to lose. の一言は、応援にも、責任の押しつけにも転びます。

対になるのが have everything to lose(失うものが大きすぎる)。この二つを並べると、当事者と部外者の温度差が一息で描けます。

【ここがポイント!】

  • 核は「失敗しても減るものがない」という、だめ元の身軽さ
  • nothing to lose は「名詞+to 不定詞」の形。something to eat と同じ組み立て
  • 対の everything to lose とセットにすると、立場の差が一言で描けるのがコツ

『フレンズ』S03E18のシーンで見てみよう

意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。

18歳の弟フランクの結婚を、フィービーはどうしても止めたい。けれど本人に言えば嫌われる。ロスとジョーイの部屋で反対をまくし立てた彼女に、二人は「本人に伝えたのか」と当然の問いを返します。そこから、説得役を二人に押しつけにかかる流れの中で、このフレーズが登場します。

Joey: Have you told him how you feel?
(その気持ち、本人には言ったのか?)

Phoebe: Yes. Not out loud.
(言ったわよ。声には出してないけど。)

Ross: If you don’t tell him, soon he’ll be married, then you’ll hate yourself.
(言わないままだと、すぐに結婚しちゃって、自分を責めることになるぞ。)

Phoebe: Yeah, but if I do tell him, then he’s gonna hate myself. Look at him and his mom. I can’t. But you guys can. You talk him out of it. You have nothing to lose. I have everything to lose.
(でも、言ったら今度は彼が私を憎むことになるの。彼とお母さんを見てよ。私には無理。でもあなたたちならできる。説得してやめさせてよ。あなたたちは失うものが何もない。私は全部失うの。)

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シーン解説と心理考察

気持ちを伝えたのかと問われ、フィービーは Yes と答えてから、声には出していない、と付け足します。あれだけ雄弁に反対を並べておきながら、肝心の相手にだけは言えていない。強気の反論と、弟に嫌われたくない怯えの落差が、この短い二言に収まっています。

そこからの畳みかけで、彼女は天秤を組み立てます。片方の皿にロスとジョーイを乗せて nothing、もう片方に自分を乗せて everything。同じ文型を並べただけで、二人が失うものはゼロ、自分が失うものは全部、という構図ができあがります。

この言い方の巧みさは、相手の反論を先回りで封じている点です。nothing to lose と断じられてしまえば、断る理由まで一緒に取り上げられてしまう。もっとも、天秤に乗っていないものがあります。当のフランクの気持ちです。姉として弟を思う必死さと、その必死さが本人を素通りしている危うさが、この一言に重なっていると言えます。

『フレンズ』流・覚え方のコツ

覚えるときは、両手を左右に広げた天秤の姿を思い浮かべてください。片方の皿は空っぽで、軽いから高く上がっている。もう片方には荷物が山盛りで、地面すれすれまで沈んでいる。have nothing to lose は、その空っぽで軽く跳ね上がった皿のほうです。

何も乗っていない皿は、揺すっても落ちるものがありません。だから思い切って動かせる。フィービーが二人に押しつけたのも、この軽さでした。空の皿と、沈んだ皿。左右に開いた手のひらの高さの差を思い浮かべておくと、nothing と everything がどちらを指しているのか、迷わなくなります。

このエピソードの他のフレーズ

例文で覚える「have nothing to lose」

挑戦を決めるとき、人の背中を押すとき、迷いを断ち切るときに使えます。

Just apply for the job. You have nothing to lose.
(とりあえず応募してみなよ。失うものなんて何もないんだから。)
友人の背中を押す場面です。落ちても現状のまま、という気楽さを添えています。

We have nothing to lose by asking for a discount.
(値引きを頼んでみて損することは何もない。)
仕事の交渉場面です。by -ing を続けると、何をしても損しないのかを具体的に示せます。

A: I don’t think they’ll ever say yes.
B: Maybe not. But we’ve got nothing to lose, right?
(A:向こうがうんと言うとは思えないな。)
(B:かもね。でも、だめ元だし。)
同僚同士の会話です。相手の悲観をいったん受け止めてから、実行に傾ける返しになります。

あわせて覚えたい関連表現

have everything to lose
(失うものが大きすぎる)
今回のフレーズの対になる形です。同じ文型で nothing を everything に替えるだけで、身軽さが一転して、慎重にならざるを得ない立場を表します。

It’s worth a shot.
(やってみる価値はある。)
挑戦を促す言い方です。have nothing to lose が「損はしない」と守りから説得するのに対し、こちらは「得られるかも」と攻めから押します。

What have you got to lose?
(失うものなんてある?)
反語の形で問いかける言い方です。断定ではなく質問にすることで、相手自身に「特にないな」と気づかせる運びになります。

Note|nothing と everything で挟む、英語の対称

フィービーの一言が効くのは、nothing と everything をきれいに向かい合わせているからです。you have nothing to lose / I have everything to lose。語順も動詞もそのままに、数量を表す一語だけを差し替える。この対称の作り方は、英語がとても得意とするところです。

日本語で同じことをしようとすると、少し形が崩れます。「あなたは失うものが何もない」の反対を作るとき、「私は失うものが全部ある」とは普通言いません。「私は全部失う」「私は失うものが大きすぎる」と、言い回しのほうを変える必要が出てきます。つまり、nothing の裏返しとして everything を置く発想が、そのままの形では移りにくいわけです。

英語では、この対がよく働きます。nothing to lose and everything to gain(失うものはなく、得るものばかり)は挑戦を促す定型として広く使われますし、all or nothing(全部か無か)も同じ発想の並びです。数量を表す一語を軸にして、立場の差や賭けの大きさを一息で言い切る。日本語なら副詞や助詞で丁寧に積み上げるところを、英語は対称の形そのものに語らせます。

だから have nothing to lose を覚えるときは、単独ではなく相方と一緒に覚えるのが早道です。片方だけでは天秤が成立しません。

対になる言葉を持っていると、立場の説明が一行で済みます。

まとめ|空の皿は、いちばん軽い

have nothing to lose は、失敗しても失うものがないのだからやってみればいい、という身軽さを表す表現です。nothing を to lose が後ろから説明する形で、対になる have everything to lose と並べると、立場の差が一息で描けます。

会話で使えるようになると、迷っている自分にも、ためらっている相手にも、短い一言で踏み出す理由を渡せます。長い理屈を並べるより、失うものはない、と言い切るほうが届く場面は少なくありません。

もっとも、フィービーの使い方が示すとおり、この言葉は相手の立場を勝手に軽く見積もる道具にもなります。誰の皿が空なのかは、本当は本人にしかわからないのかもしれません。

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