海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
友人から飲み会や集まりに誘われて、「その日、行けそう?」と予定を確認された経験はありませんか。
そんなときに使われる「make it」を、『フレンズ』シーズン3第12話の冒頭、チャンドラーがロスにいとこのパーティーへの参加を確認するシーンから、一緒に見ていきましょう。
「make it」の意味とニュアンス
make it
意味:(予定をやりくりして)行ける、都合がつく
make it の芯にあるのは「困難を越えて目的にたどり着く」という感覚です。ここから「成功する」「間に合う」「生き延びる」といった意味が枝分かれしていきますが、日常会話で圧倒的によく耳にするのが「予定の都合がつく」という用法です。
Can you make it on Friday? と聞かれたら、それは「金曜、来られる?」という参加確認になります。単に「来る(come)」と尋ねるのではなく、相手の予定という障害を越えて来られるかどうかを尋ねている点が、この表現のポイントです。だからこそ、断るときの I can’t make it は「行きたいけれど都合がつかない」という含みを持ち、冷たく響きません。
否定形・肯定形どちらも高頻度で、招待・約束・キャンセルの場面をこれ一語でカバーできる、会話の主力表現です。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは「予定という壁を越えて、その場にたどり着く」イメージ
- Can you make it? は「来られる?」、I can’t make it は「行けそうにない」の定番セット
- 断り文句として使うと、行きたい気持ちを残したやわらかい響きになるのがコツ
『フレンズ』S03E12のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
レイチェルが新しい職場へ出勤する朝、モニカとレイチェルの部屋にはロスとチャンドラーが居合わせています。チャンドラーは、変わり者のいとこアルバートのバチェラーパーティーに人を集めようと、ロスの予定を押さえにかかります。ロスはなぜ自分が呼ばれるのか腑に落ちないまま、ひとまず返事をします。
Chandler: Hey, so can you make it on Friday?
(なあ、金曜は来られる?)Ross: What? Oh yeah, yeah I think so. Why am I invited to this again?
(え? ああ、うん、たぶん行けるよ。で、なんで俺が呼ばれてるんだっけ?)Chandler: Well apparently Albert has no friends.
(まあ、アルバートには友達がいないらしくてね)Friends Season3 Episode12(The One With All the Jealousy)
シーン解説と心理考察
チャンドラーの問いかけは、いとこの晴れの席を心配する重々しいものではなく、頭数をそろえたいだけの軽い確認として響きます。make it という一語がその温度感をよく表していて、大げさに時間を空けてほしいのではなく、来られるなら来てほしいという距離感がにじむ場面です。
一方のロスは、生返事のあとに「なんで俺が呼ばれてるんだっけ」と聞き返します。この時点で彼の頭の中はレイチェルの新しい職場と、そこにいる同僚マークのことでいっぱいで、金曜の予定にはほとんど関心が向いていないことが表れています。
そして返ってきた答えは、アルバートには友達がいないから、というもの。招待の理由としてはあまりに身も蓋もなく、チャンドラー特有の皮肉が会話の温度を変えています。何気ない予定確認の裏に、キャラクターそれぞれの事情が透けて見えるやり取りです。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
カレンダーの金曜のマスを思い浮かべてください。そこにはまだ何も書かれていません。チャンドラーの Can you make it? は、その空白のマスに向かって「ここに自分を置ける?」と尋ねている問いかけです。
make it の it は、その場に自分がたどり着いている状態そのものです。予定表という盤面の上で、自分という駒を金曜のマスまで動かせるかどうか。手前に仕事や別の約束が並んでいれば、駒はそこで止まってしまいます。
この「駒を目的のマスまで進める」という動きのイメージを持っておくと、都合がつくという意味も、間に合うという意味も、同じ一本の線の上に並びます。
例文で覚える「make it」
make it は招待にも、断りにも、感謝にも姿を変えます。予定をめぐる会話でどう働くのか、3つの場面で見てみましょう。
Can you make it to the meeting at three?
(3時の会議、出られる?)
同僚に出席の可否を確認する場面です。会議やイベントの参加確認では、come より make it の方が相手の都合を気づかう響きになります。
Thank you all for making it on such short notice.
(急なお声がけにもかかわらずお集まりいただき、ありがとうございます)
集まってくれた人への感謝を述べる場面です。忙しい中を押して足を運んでくれた、という労いが make it 一語に込められています。
A: Are you coming to Mike’s party tonight?
B: Sorry, I can’t make it — I’ve got a deadline tomorrow.
(A:今夜のマイクのパーティー、来る?)
(B:ごめん、行けそうにない。明日締め切りがあって)
友人同士の誘いと断りのやり取りです。can’t make it は「行きたいけれど無理」という含みを残すため、断りの言葉としてかどが立ちません。
あわせて覚えたい関連表現
show up
(顔を出す、姿を見せる)
make it が「都合がつくかどうか」という可否に重心を置くのに対し、show up は実際にその場に現れたという結果を指します。He didn’t show up なら「結局来なかった」です。
turn up
(ひょっこり現れる)
show up と近い意味ですが、予告なしに、あるいは思いがけず現れるニュアンスが加わります。予定を確認する make it とは、時間軸の位置が異なります。
be able to come
(来ることができる)
make it とほぼ同義ですが、説明的で少し硬い響きです。会話のテンポの中では、make it の方がはるかに自然に収まります。
Note|make it はなぜこんなに意味が広いのか
make it は、辞書を引くと驚くほど多くの意味が並びます。成功する、間に合う、都合がつく、生き延びる。一見ばらばらに見えるこれらは、実は一本の芯でつながっています。
鍵になるのは、it が何を指しているかです。make it の it は特定の名詞ではなく、「その状況を成立させること」という漠然とした達成そのものを指すと考えられます。つまり make it は「その達成を自分の力で作り出す」という一つの型で、何を達成と見なすかが文脈によって入れ替わっているだけなのです。到着が達成なら「間に合う」、参加が達成なら「都合がつく」、生存が達成なら「生き延びる」、キャリアの成就が達成なら「成功する」。芸能やビジネスの世界で耳にする make it big も、医療の場面で重傷者について交わされる He’s going to make it も、どちらも「困難を越えて向こう側にたどり着く」という同じ骨格を共有しています。
この芯をつかんでおくと、チャンドラーの Can you make it on Friday? も、単なる予定確認ではなく「金曜という地点まで、あなたは自分をたどり着かせられる?」という問いとして立体的に読めます。仕事や別の約束という障害を越える、という含みがあるからこそ、この一言はやわらかく響くのです。
意味の数だけ覚えようとすると迷子になりますが、芯を一つ握っていれば、枝はおのずと見分けがつきます。
まとめ|「行ける?」を一言で尋ねる
make it の核にあるのは、予定や障害を越えて目的の場所にたどり着くという感覚です。参加できるかを尋ねる Can you make it? も、断りの I can’t make it も、この同じ芯から生まれています。
この一語を手に入れると、誘いの返事がぐっと自然になります。行けるときも、行けないときも、相手への気づかいを残したまま短く伝えられるようになるからです。
チャンドラーがロスの予定を押さえたときのような、日常の何気ない約束の場面で、会話のレパートリーに加えてみてください。


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