海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
見え透いた言い訳を聞いて、「はいはい、その手には乗らないよ」と返したくなったことはありませんか。
そんな場面にぴったりの「nice try」を、『フレンズ』シーズン6第4話の中盤、レイチェルがモニカの苦しい言い訳を受け流す場面から、一緒に見ていきましょう。
「nice try」の意味とニュアンス
nice try
意味:その手は食わないよ、惜しかったね
nice tryは、直訳すると「いい試みだね」です。字面は褒め言葉ですが、実際には二通りの使い方があります。ひとつは、相手の言い訳やごまかし、こちらを言いくるめようとする作戦を見抜いたうえで、「うまくやったつもりだろうけど通用しない」と返す使い方です。この場合、褒め言葉の形が皮肉として働きます。
もうひとつは、成功しなかった試みに対する軽いねぎらいで、「惜しかったね」「いいところまでいったよ」と励ます使い方です。ボールに手が届かなかった友人に声をかける場面などが当てはまります。
どちらの意味になるかは、相手の試みが「本気の挑戦」なのか、「こちらを動かそうとする言い訳や作戦」なのかで決まります。短い一言なので、直前のやり取りが意味を決める表現です。日本語に置き換えるときは、場面ごとに訳し分けが必要になります。皮肉として返す場合も、長く責め立てる言い方ではなく、軽く受け流す温度で使われるのが特徴です。
【ここがポイント!】
- 「nice try」の核は、相手の試みを一度受け止めたうえで、失敗だと告げる二段構え
- 言い訳やごまかしに返すと「その手は食わない」、惜しい挑戦に返すと「惜しかったね」
- 意味を決めるのは、直前に相手が何を試みたか
『フレンズ』S06E04のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
レイチェルがモニカに「これ、取り返したの?」と尋ねるところから始まる場面です。前半にも、燭台の持ち主をめぐって2人が言葉を交わす場面があり、その続きにあたるやり取りです。モニカは「気に入って自分用に買った」と言い張り、レイチェルは相槌を打ってそれに合わせます。モニカが「大好き」と重ねたところで、レイチェルの「Nice try.」が入ります。相槌の温度が変わる瞬間に注目です。
Rachel: Did-did you take these back?
(これ、取り返したの?)Monica: No, no. I just… I liked them so much that I went out and bought some for myself.
(ううん、違うのよ。ただ……すごく気に入ったから、自分用に買いに行っただけ。)Rachel: Oh. Yeah, they’re really great, aren’t they?
(ああ、そうなの。本当に素敵よね、これ。)Monica: I love them.
(大好きなのよ。)Rachel: Nice try.
(その手は食わないわよ。)Friends Season6 Episode4(The One Where Joey Loses His Health Insurance)
シーン解説と心理考察
レイチェルの「Nice try.」は、褒め言葉の形を借りて、モニカの言い訳を退ける一言です。モニカの「No, no. I just…」という言いよどみには、答えを組み立てながら話している様子が出ています。「気に入ったから自分用に買った」という説明は、質問の「取り返したのか」とは別の答えを持ち出した形になっています。
これに対してレイチェルは、「Oh. Yeah, they’re really great, aren’t they?」と、言い訳に合わせて持ち上げるように返します。責める言葉を挟まずに相手の説明を最後まで聞いているため、モニカは「I love them.」と言い張りを重ねます。その一言を待って、レイチェルは「Nice try.」で切り返しています。
相手に十分話させたうえで、短い一言だけで終わらせる運びが、この場面の見どころです。長い反論をしなくても、「その説明では通らない」という判断がこの2語で伝わります。相槌の丁寧さと最後の一言の短さの落差が、レイチェルの落ち着きと、モニカの言い逃れの苦しさを浮かび上がらせています。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
相手が差し出した言い訳に「いい試みだったね」と拍手を送りながら、そっと差し戻す様子を思い浮かべてみましょう。受け取る動作と突き返す動作が同時に起こる、二段構えの感覚がこの表現の芯にあります。
レイチェルの場面でも、まず「本当に素敵よね」とモニカの言い分に合わせ、最後に「Nice try.」と差し戻していました。「まず受け止めて、最後に返す」という流れを場面ごと頭に置いておくと、言い訳を見抜いて返したいときにこの一言が浮かびやすくなります。
日本語で言えば、相手の言い訳に「お見事、お見事」と返して終わらせる感覚に近い言い方です。褒める形をとりながら中身は突き返している点が、二つの言語で重なります。
例文で覚える「nice try」
言い訳を見抜く場面と、惜しい試みをねぎらう場面の両方を、3つの例文で確認していきましょう。
You said you were just borrowing my charger? Nice try.
(私の充電器を借りてただけって? その手は食わないよ。)
友人の言い訳を見抜いて返す場面です。相手の言葉を疑問形で受けてから nice try を続ける流れは、レイチェルの返し方と重なります。
A: I only ate one slice of the cake.
B: With chocolate all over your face? Nice try.
(A:ケーキは1切れしか食べてないよ。)
(B:顔中チョコだらけなのに? その手は食わないよ。)
見え透いた嘘に、証拠を示して返す会話です。相手の主張と目の前の事実が食い違っているときに使うと、皮肉の効いた一言になります。証拠を示す言葉のあとに置くと、言い訳を退ける力が増します。
You almost caught the ball. Nice try!
(もう少しでボールを取れたのに。惜しかったね!)
惜しかった試みを励ます場面です。同じ nice try でも、相手が本気で挑戦した結果に返すと、皮肉ではなくねぎらいの意味になります。
あわせて覚えたい関連表現
good try
(惜しかったね)
good try は、惜しかった試みへのねぎらいに寄った言い方です。nice try は、相手の言い逃れやごまかしを見抜く皮肉としても使える点が異なります。
nice one
(うまいね、または皮肉で「やってくれたね」)
nice one は、本当の称賛にも皮肉にもなる言い方です。nice try は、相手の試みが失敗していることを前提にしている点が異なります。
nice going
(よくやったね、または皮肉で「やっちゃったね」)
nice going は、失敗した結果を皮肉る言い方です。nice try が相手の試みそのもの(言い訳や作戦)に返す言葉であるのに対し、nice going は出てしまった結果に返す言葉です。
Note|同じnice tryが「惜しい」にも「その手は食わない」にもなる理由
nice tryは、日本語にすると「惜しい」にも「その手は食わない」にもなります。英語では同じ2語なのに、日本語では別の言葉になるため、訳し分けが必要な表現です。
分かれ目は、相手の試みの種類にあります。本気の挑戦が届かなかったときは、「いいところまでいったよ」というねぎらいになり、「惜しかったね」と訳せます。一方、相手が言い訳やごまかしでこちらを動かそうとしたときは、その試みが通用しなかったことを告げる言葉になり、「その手は食わない」「見え透いてるよ」と訳せます。前者は相手の努力に目を向ける言葉で、後者は相手の意図に目を向ける言葉という違いです。
レイチェルの場面では、モニカの説明は後者にあたります。ここで「惜しかったね」と訳すと、レイチェルがモニカを励ましているような、意味の通らない場面になってしまいます。
同じ英語でも、相手が何を試みたかで日本語が変わります。
まとめ|褒め言葉の形で、言い訳を退ける一言
nice tryは、直訳すると「いい試みだね」という褒め言葉の形をした表現です。相手の言い訳やごまかしを見抜いたときは「その手は食わない」、本気の挑戦が届かなかったときは「惜しかったね」という意味になります。
どちらの意味になるかを決めるのは、直前に相手が何を試みたかです。短い一言だからこそ、前後のやり取りを合わせて読むと意味がつかめます。
レイチェルは、モニカの言い訳を最後まで聞いたあと、2語だけで通用しないと伝えていました。まず受け止めてから最後に返す運びごと、表現の引き出しに加えてみてください。友人との軽いやり取りの中で、相手を責めすぎずに言い訳を退けたいときに使える一言です。


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