海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
昼食に何を食べるか、旅行先をどこにするか。相手に選んでもらおうとしたのに、そちらで決めてほしいと逆に判断を返されてしまう。決定権のやりとりが静かに続くような場面があります。
そのやりとりで登場する「be up to someone」を、犯罪捜査ドラマ『メンタリスト』シーズン4第24話の中盤、ジェーンとローレライが一夜明けた朝の食卓で言葉を交わすシーンから、一緒に見ていきましょう。
「be up to someone」の意味とニュアンス
be up to someone
意味:〜次第だ、〜が決めることだ
決定権が誰の側にあるかを示す表現です。It’s up to you と言えば「決めるのはそちら」、It’s not up to me と言えば「私の一存では決められない」という意味になります。
up は本来「上へ」という方向を表す語ですが、英語では判断や権限が上に置かれるという発想と結びつきやすく、そこから決定の所在を指す用法が広がったと説明されます。
同じ形でも、相手を立てて委ねる響きにも、責任を手放して距離を取る響きにもなります。昼食の店を選ぶような軽い場面では前者に、責任の所在が問われる場面では後者に傾きやすく、話し手のトーンで温度が変わります。
なお、後ろに人ではなく行為が続く It’s up to us to fix this のような形では、「〜の役目だ」という責任の意味に近づきます。委ねる方向と引き受ける方向、どちらにも振れる表現だと押さえておくと迷いません。
【ここがポイント!】
- 核は「判断のボールが誰の手にあるか」を示す一言
- 委ねる響きにも、距離を取る響きにもなる幅のある表現
- 後ろに人が来るか行為が来るかで、意味が「次第」と「役目」に分かれるのがコツ
『メンタリスト』S04E24のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
前日に窮地を助けてもらった相手と、ジェーンが簡素な部屋で朝食をとっています。卵料理を分け合う、この回でもっとも穏やかなやりとりです。また会えるだろうかとジェーンが何気なく尋ねたところで、返ってきた答えが空気を変えます。物語の核心に触れるため詳しくは伏せますが、この短い否定のあと、ジェーンの表情が固まります。
Jane: Perhaps we can see each other again.
(また会えるかな)Lorelei: That’s not up to me.
(それは私が決めることじゃないの)Jane: Oh, you have no say in it?
(へえ、君には決定権がないと?)Lorelei: None at all. It’s very restful.
(まったくないわ。とても気が楽なの)Jane: I don’t follow you.
(意味が分からないな)The Mentalist Season4 Episode24 (The Crimson Hat)
シーン解説と心理考察
朝の食卓という、この回でもっとも静かな場面です。荒れた生活が続いていたジェーンにとって、久しぶりの穏やかな時間だったことが表れています。
その空気を断ち切るのが、ローレライの短い否定です。また会えるかという問いに、会いたくないとは答えず、決めるのは自分ではないと返す。この答え方は、拒否ではなく不在の表明になっています。
さらに restful という一語が加わることで、彼女が自分の意思を手放している状態を心地よく受け止めていることが分かります。委ねているのではなく、明け渡している。その温度差が会話の温度を変えています。
ジェーンの返しが「決定権がないのか」という確認になっているところにも、彼が違和感の正体を探り始めた気配がにじみます。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
判断のボールがどちらのコートにあるか、テニスコートを思い浮かべてみましょう。It’s up to you と言われた瞬間、ボールは自分の側に飛んできています。逆に It’s not up to me は、自分の手元にはボールがないという宣言です。
このシーンでローレライは、両手を広げて何も持っていないと示すような答え方をします。ボールを持っていないどころか、そもそもコートに立ってすらいない。その空っぽの手のイメージごと覚えておくと、不穏さまで一緒に思い出せます。
例文で覚える「be up to someone」
短い形ほど会話での出番が多い表現です。委ねる場面と、線を引く場面の両方を見ていきましょう。
It’s up to you.
(そちら次第だよ)
店やメニューを友人に選んでもらうときの一言です。二語で言い切ると押し付けない軽さが出るので、意見はあるけれど強く主張したくない場面にちょうど収まります。
I’d love to help, but it’s not up to me.
(力になりたいのですが、私の一存では決められません)
社外からの依頼を断らざるを得ない場面です。前半で意向を示してから決定権の所在に触れると、冷たい印象になりません。
A: So, are we launching in May or June?
B: That’s up to the client, not us.
(A:それで、公開は5月ですか、6月ですか)
(B:それはクライアント次第で、こちらが決めることではありません)
社内で判断の所在を確認するやりとりです。not us を添えると線引きがはっきりして、こちらで動かせる話ではないと相手に伝わります。余計な期待を持たせずに済むのが利点です。
あわせて覚えたい関連表現
It’s your call.
(そちらが決めていい)
call は審判の判定に由来する語で、その場で即断してほしいという押し出しが感じられます。じっくり考えてほしいときより、今この場で決めてほしいときに向く言い方です。今回のフレーズより口語的で、勢いのある会話になじみます。
depend on
(〜による、〜次第である)
条件や状況に左右されることを表します。人の決定権ではなく事情の話をするときは、こちらのほうが自然に収まります。
have the final say
(最終決定権を持つ)
決定権を持つ側を主語に立てる、やや改まった言い方です。委ねる側の視点で語る今回のフレーズと、ちょうど裏返しの関係になります。
Note|be up to が持つ三つの顔
辞書で be up to を引くと、意味が三つに分かれて並んでいて戸惑うことがあります。「〜次第だ」のほかに、「〜を企んでいる」「〜に達している」が出てくるからです。
見分ける手がかりは、主語と、後ろに何が来るかです。後ろに人が来る It’s up to you の形では、決定権の所在を示します。一方、What are you up to? のように主語が人で目的語が漠然としている場合は、「何をたくらんでいるのか」という意味になります。さらに、The report isn’t up to standard のように後ろに基準や水準を表す語が続くと、「〜に達している」という到達の意味に振り分けられます。同じ二語が三つの意味を担えるのは、up が「ある高さまで」という共通の感覚を保っているからだと説明されます。
劇中の That’s not up to me も、この枠組みで見ると輪郭がはっきりします。判断が向かうべき上が、彼女自身ではなく別の場所にある、という意味だからです。訳語を三つ暗記するより、上をたどる感覚で整理したほうが、初めて見る文でも迷いにくくなります。
二語で三つの世界を行き来する、働き者の言い回しです。
まとめ|「決めるのは自分じゃない」を二語で
be up to someone は、判断の所在をひとことで示す表現です。賛成でも反対でもなく、そもそも決める立場にいるかどうかを述べるという、少し変わった角度を持っています。
会議でも家族の相談でも、この一言があるだけで話が前に進みます。自分が決めていいのか、相手に委ねるべきなのかを早い段階ではっきりさせられるからです。
何かを決めかねている相手に判断を返すときにも、自分の権限の外だと静かに示すときにも、同じ形のまま使えます。委ねるときにも線を引くときにも働く二語として、表現の引き出しに加えてみてください。


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