海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『メンタリスト』シーズン2第3話には、事件捜査とは別に、リズボンが定期的に受けている面談の場面があります。担当医との一対一のやり取りは、事件の緊迫したシーンとは違った落ち着いた空気で進みますが、そのぶん言葉のひとつひとつに、二人の立場の違いがはっきりと表れます。今回の記事で取り上げるのは、その面談の冒頭で交わされる、承認や呼び出しをめぐる短いやり取りの英語表現です。
診療室の落ち着いた空気の中に漂う、ちょっとした駆け引きに目を向けながら見ていきます。
sign off on ― 承認をめぐる言い回し
面談の担当医は、今回のセッションが単なる定例のものではなく、リズボンの勤務適性を承認しなければならない場だと切り出します。これに対しリズボンは、以前ジェーンをたった一度のセッションで承認していたことを引き合いに出し、軽く切り返します。
Dr. Carmen: Not routine like I have to sign off on you.
(「ルーティンとは違うわ。あなたを承認しなければならないんだから。」)Lisbon: I didn’t even pull the trigger on Tanner. Jane did. You signed off on him after one session.
(「タナーの引き金を引いたのは私じゃない。ジェーンよ。あなたはあの人を一度のセッションで承認したじゃない。」)Dr. Carmen: He has good mental health.
(「彼は精神的に健全だから。」)The Mentalist Season2 Episode3 (Red Badge)
sign off on ~ は「~を承認する、正式に許可を与える」という意味の句動詞です。書類にサインをして完了とするイメージから、担当者が最終的なゴーサインを出す場面でよく使われます。医療現場や職場での復帰許可、プロジェクトの最終承認など、誰かの権限で物事にお墨付きを与える文脈になじむ表現です。ここでは、精神鑑定という制度上の手続きを指す言葉として使われており、担当医とリズボンのあいだの立場の違いがそのまま言葉選びに表れています。
面談の終盤では、リズボンが改めて承認をもらえない理由を尋ねる場面があります。
Lisbon: Dr. Carmen? Why won’t you sign off on me?
(「カーメン先生?どうして私を承認してくれないんですか?」)Dr. Carmen: Because there’s something you want to tell me first.
(「あなたが先に話しておきたいことがあるからよ。」)The Mentalist Season2 Episode3 (Red Badge)
同じ sign off on が繰り返し使われることで、この面談全体が「承認を得られるかどうか」という一点をめぐるやり取りだったことが伝わってきます。面談の終わり際に改めて同じ言い回しが使われることで、この一幕が承認をめぐるやり取りだったことが際立ちます。
duty calls ― 急な呼び出しに応じる一言
面談の途中、リズボンの携帯電話が鳴り、電話の相手に「すぐ向かいます」と告げて席を立とうとする場面が続きます。急な仕事の呼び出しを受けて中座する、というこの状況を短く言い表す決まり文句として知られているのが duty calls です。
Duty calls. は「仕事(職務)が呼んでいる」という意味の慣用句で、途中で席を立たなければならない事情を、深く説明せずに一言で伝える際に使われます。単独の一文として使われることが多く、相手も事情を察してくれるだろうという前提のもとで交わされる、便利な言い回しです。たとえば、集まりの最中に急ぎの連絡を受けたときにも “Duty calls, I’m afraid.” のように軽く使うことができます。同じ召集を表す言葉でも、call(名詞・呼びかけ)ではなく動詞の calls が使われている点も特徴で、「職務そのものが人を呼び寄せる」という擬人的な発想の言い回しです。
似た場面で使える表現には、いくつかの強さの違いがあります。Something’s come up.(急用ができた)は理由をぼかしたまま中座を切り出す言い方で、I have to run.(もう行かないと)はより口語的でくだけた表現です。それらと比べると duty calls は、仕事上の義務であることをやんわりと強調しながら中座する、ビジネスシーンにもなじむ表現だと言えます。事件現場に呼ばれて中座するリズボンの様子は、この一言が実際の場面でどう機能するかをよく表しています。
まとめ|承認と呼び出し、二つの場面で使われる言い回し
sign off on は権限を持つ相手が正式にお墨付きを与える言葉、duty callsは急な仕事の呼び出しに応じて中座する場面の一言です。制度的な承認の言葉と、日常的な中座の言葉ですが、どちらも短いやり取りの中で相手との立場や関係性を映し出しています。
次回も『メンタリスト』の会話から、場面ごとの言葉の使い分けを見ていきましょう。
このエピソードの英語表現は、フレーズ記事やエピソードまとめでも扱っています。


コメント