海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
友人の意外な趣味や、自分にはまるで理解できない人気商品を前にして、否定はしたくないけれど納得もできない。そんな気持ちを持て余したこと、ありますよね。
そんなときに便利なのが「there’s no accounting for taste」です。『メンタリスト』シーズン2第3話の最後、事件を終えた夜のオフィスで、ジェーンがリズボンをからかうシーンから、一緒に見ていきましょう。
「there’s no accounting for taste」の意味とニュアンス
there’s no accounting for taste
意味:人の好みは説明がつかない、蓼食う虫も好き好き
account for は「説明する、理由を挙げる」という意味です。そこに no accounting と否定を重ね、対象を taste(好み)に置いた形なので、直訳すれば「好みについては説明のしようがない」。自分には理解しがたい趣味や選択に出会ったときの一言です。
便利なのは、相手を否定しきらずに話を畳めるところです。理解できないと言いながら、理解できないのは自分の側の問題かもしれない、という逃げ道を残しています。そのため、軽い皮肉としても、寛容の表明としても使えます。
服装や内装、食べ物の好み、意外な組み合わせの恋人同士など、対象は日常のあらゆる場面に及びます。長めの一文ですが、まとまりで覚えてしまえば会話の締めにそのまま置ける表現です。
【ここがポイント!】
- 核は「好みは説明の対象にならない」、理由を求めるのをやめる一言
- 皮肉にも寛容にも振れる、話し手のトーンで色が変わる表現
- 会話の締めに置くと、否定せずに話題を畳めるのが使いどころ
『メンタリスト』S02E03のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
事件が解決し、夜のオフィスに二人が残っています。同僚が置いていったドーナツの箱を見たジェーンが、その店の名前から相手の気持ちを言い当ててしまう場面です。エピソードの締めくくりらしい軽口のやり取りに注目です。
Patrick: DOUGHNUTS FROM MARIE’S. I DIDN’T SEE IT. OF COURSE.
(マリーズのドーナツか。見落としてたよ。なるほどね)Lisbon: WHAT?
(何が?)Patrick: HE’S IN LOVE WITH YOU.
(彼、君に惚れてる)Lisbon: DON’T BE SILLY.
(ばかなこと言わないで)Patrick: I KNOW, HARD TO FATHOM, BUT, UH, THERE’S NO ACCOUNTING FOR TASTE, IS THERE?
(だよね、信じがたい。でもまあ、人の好みは説明がつかないからね)The Mentalist Season2 Episode3(Red Badge)
シーン解説と心理考察
ジェーンの一言は、二重にからかう作りになっています。相手の気持ちを言い当てて驚かせたうえで、その相手の趣味のほうを疑ってみせる。しかも自分の推理力を誇る調子まで混ざっているので、軽口としては密度の高い一言です。
hard to fathom(信じがたい)を先に置いているのが効いています。これがあることで、続く一般論が「あなたを好きになるなんて理解できない」という直接的な茶化しになる。それでいて、最後は好みの問題という誰も傷つけない場所に着地します。断定を避けながら相手をいじるという、このキャラクターらしい話し方です。
冒頭の現場で話題に出ていた店の名前が、ここで意味を持って戻ってくる構成も見どころと言えます。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
帳簿を開いて、支出の理由を一行ずつ書き込んでいく場面を思い浮かべてみましょう。交通費、資料代、会議費。どれも理由の欄が埋まっていくのに、「好み」の行だけはいつまでも空白のままです。account には「勘定する」という意味があり、そこから「説明する」へ広がりました。there’s no accounting for taste は、その帳簿の空白の言葉です。
覚えるときは、理由を書こうとして手が止まる感触ごと持っておくと定着します。劇中のジェーンも、なぜ相手がそう感じるのかを説明しようとはせず、説明できないという結論だけを置いて話を畳みました。埋まらない欄は埋めない、という割り切りがこの表現の本体です。
例文で覚える「there’s no accounting for taste」
あきれた気持ちにも、寛容な受け止めにも寄せられるのがこの表現です。三つの場面で見てみましょう。
He painted the whole room bright orange. Well, there’s no accounting for taste.
(部屋中を明るいオレンジに塗ったんだ。まあ、好みは人それぞれだね)
知人の内装を話題にする場面です。Well を前に置くと、あきれ半分の調子が出ます。
Some clients still prefer the older model. There’s no accounting for taste.
(旧型を好むお客様もいます。好みは説明がつきませんね)
売れ筋の説明で例外に触れる場面です。仕事の場でも角が立ちにくい言い回しになります。
A: She actually likes pineapple on pizza.
B: There’s no accounting for taste, is there?
(A:彼女、パイナップルのピザが本当に好きなんだって)
(B:好みばかりは説明がつかないよね)
食べ物の好みで盛り上がる場面です。is there? を添えると、相手に同意を促す軽さが加わります。
あわせて覚えたい関連表現
to each their own
(人それぞれだ)
相手の選択を尊重する側に寄った言い方です。there’s no accounting for taste に残る「理解できない」という含みが薄く、より穏やかに響きます。
different strokes for different folks
(人によってやり方は違う)
好みだけでなく、方法や生き方まで対象が広がります。くだけた響きがあり、会話のテンポを軽くしたいときに向きます。
whatever floats your boat
(好きにすれば)
目の前の相手に直接投げる二人称の言い方です。第三者の趣味を評する there’s no accounting for taste より、突き放した調子が強くなります。
Note|「好みは論じない」という古い合意
好みについては争っても仕方がない。この考え方は英語だけのものではなく、ヨーロッパの言語に広く共有されてきました。there’s no accounting for taste も、その系譜の中にある一言です。
もとになった考え方として知られているのが、ラテン語の De gustibus non est disputandum(好みについては論争すべきでない)という言い回しです。同趣旨の表現は各言語に残っていて、フランス語には Des goûts et des couleurs, on ne discute pas(好みと色については議論しない)、ドイツ語には Über Geschmack lässt sich nicht streiten(好みについては争えない)があります。イタリア語やスペイン語にも似た形の言い方があり、どれも「議論の対象にならない領域がある」という同じ結論に落ち着きます。理屈で決着がつく事柄と、つかない事柄を分けておく。その線引きが、言語をまたいで定型句として残ってきたことになります。英語圏でこの表現が会話の締めに使いやすいのも、その線引きが共有されているからです。
つまりこの一言は、単なるあきれの表明ではありません。「ここから先は議論しない」という合図でもあります。劇中のジェーンが、相手を茶化しながらも最後は好みの話に着地させたのは、この合図の働きを使ったからだと言えます。
議論をやめる場所を知っている言葉は、意外と強いものです。
まとめ|説明をやめるという選択
there’s no accounting for taste は、自分には理解しがたい趣味や選択に出会ったときの一言です。皮肉にも寛容にも振れますが、共通しているのは「理由を求めるのをやめる」という姿勢になります。
この表現を持っておくと、話が平行線になりそうな場面を穏やかに畳めます。相手を否定せず、自分の理解できなさも隠さず、それでいて会話を止めない。長めの一文ですが、まとまりで口に出せるようにしておくと出番は多くなります。
劇中では、相手をからかいながら誰も傷つけない場所へ着地する道具として使われていました。埋まらない帳簿の空白と一緒に、表現の引き出しに加えてみてください。


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