海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
閑散期に入って、待っていても客が来ない。何か手を打たなければ、と会議で誰かが口にする。そんな場面に立ち会った経験はありませんか。営業をかける、告知を出す、値引きをする。呼び方はいろいろあっても、やっていることは一つです。
その「一つ」をまとめて言い表す「drum up business」を、『メンタリスト』シーズン3第10話の後半、リズボンとヴァン・ペルトがアルコール依存の治療施設を訪ね、院長を問いただすシーンから、一緒に見ていきましょう。
「drum up business」の意味とニュアンス
drum up business
意味:客を掘り起こす、仕事をかき集める
drum up は、客、支持、関心などを得るために粘り強く働きかけることを表します。drum が太鼓を意味するため呼び込みの絵は覚え方に使えますが、実際の太鼓による集客がこの句の確定した由来だとは断定できません。
表現自体に称賛や皮肉が固定されているわけではありません。劇中のように文脈が批判的なら皮肉に響き、中立的な施策説明にも使えます。business のほか support、interest、enthusiasm などとも組み合わされます。
【ここがポイント!】
- 核は、客・支持・関心を得るために粘り強く働きかけること
- 太鼓で人を呼ぶ絵は覚え方として使えるが、確定した語源ではない
- 評価色は語に固定されず、周囲の文脈から読む
『メンタリスト』S03E10のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
アルコール依存の嫌悪療法を行うクリニックで、リズボンとヴァンペルトが院長ジャック・ワイルダーを問いただす場面です。エスコート嬢を雇って回復支援の集まりを回らせ、資産のある依存症患者を勧誘させていたことが直前に判明しています。医療という建前と、実際の客集めのやり方。そのずれを突く一言に、注目してみてください。
Wilder: I MAKE SURE ALL MY PATIENTS GET HOME SAFELY. WHAT I OFFER HERE IS A VERY PERSONAL, HANDS-ON THERAPY. IT’S THE ONLY WAY TO MAKE EFFECTIVE CHANGE IN PEOPLE’S LIVES.
(患者は全員、無事に帰宅させています。ここで提供しているのは、きわめて個別的で実践的な治療だ。人の人生を本当に変えるには、これしかありません)Lisbon: THAT AND CALL GIRLS. IT’S AN INTERESTING WAY TO DRUM UP BUSINESS.
(あとはコールガールもね。客の集め方としては、なかなか興味深いやり方だわ)Wilder: WHAT YOU SEE AS A CALL GIRL, I SEE AS A MARKETING EXPERT WITH KEEN INSIGHTS INTO THE NEEDS AND DESIRES OF MY CLIENTELE.
(あなたがコールガールと見る相手を、私はマーケティングの専門家と見ています。顧客の需要と欲望を鋭く見抜く人材だ)[…]
[…]
(この間の複数発話は、引用の焦点とネタバレ範囲を保つため表示付きで省略)Wilder: BEFORE YOU TRASH MY METHODS, TALK TO MY PATIENTS. MY SUCCESS RATE IS HIGHER THAN ANY ALCOHOL TREATMENT CENTER IN THE STATE.
(私のやり方をけなす前に、患者と話してみることです。成功率は州内のどの治療施設よりも高い)The Mentalist Season3 Episode10(Jolly Red Elf)
シーン解説と心理考察
リズボンの一言は、質問の形をとらずに評価だけを置いていく言い方です。「興味深い」という語を選ぶことで、非難の言葉を使わずに相手のやり方を並べ直しています。医療として語られていた行為が、この瞬間に集客の話へ位置を変えられていると言えます。
対するワイルダーは、否定ではなく言い換えで応じます。コールガールをマーケティングの専門家と呼び直し、needs and desires という業界用語で包み直す。言葉を入れ替えることで実態を覆おうとする姿勢が、この短いやり取りにはっきり表れています。
さらに「私のやり方をけなす前に」と先回りするところに、批判に慣れた人物の身のこなしがにじむ場面です。数字で反論する構えまで用意されており、この人物の輪郭が数往復で立ち上がっています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
覚え方として、広場で太鼓を打ち鳴らし、人の注意を集める姿を思い浮かべると、こちらから働きかける意味を結びつけやすくなります。これは語源の断定ではありません。
このシーンでは、太鼓のかわりに人が送り込まれていました。回復支援の集まりを回って声をかけ、施設の話を持ちかける。音の出し方が変わっただけで、やっていることは広場の太鼓と同じです。
集客の話を英語でしたくなったとき、広場に響く太鼓の音と、静かな会合に入り込んでいく人影を並べて思い出してみてください。drum up が「向こうから来るのを待たない」表現だということが、そのまま戻ってきます。
例文で覚える「drum up business」
集める対象を入れ替えられる表現なので、その広がりも含めて三つの場面で見ていきましょう。
We’re running a discount campaign to drum up business before the holidays.
(休暇前に客足を伸ばそうと、割引キャンペーンを実施しています)
施策の目的を社外に説明する場面です。中立的な響きで、資料にも会話にも収まります。
Sending mass emails is a lazy way to drum up business.
(一斉メールを送るのは、手抜きの集客方法だ)
営業手法を批判的に評する場面です。劇中と同じく、話し手の評価が語そのものに乗っています。
A: How did she get the project approved so fast?
B: She spent two weeks drumming up support before the meeting.
(A:彼女、どうやってあんなに早く企画を通したの?)
(B:会議の前に、二週間かけて賛同をかき集めてたんだよ)
社内調整の経緯を語る場面です。business を support に替えると、集める対象が人の賛同へ移ります。
あわせて覚えたい関連表現
generate leads
(見込み客を獲得する)
営業やマーケティングの業務用語で、報告書や資料にそのまま書ける言い方です。話し手の評価がにじむ drum up business と違い、行為を淡々と記述します。
solicit
(勧誘する)
求める、勧誘するという意味で、法規制の文脈にも使われます。常に押しつけがましいとは限らず、対象と文脈によって中立にも否定的にもなります。
rustle up
(かき集める、手早く用意する)
その場しのぎで急いで用意する場面に向きます。継続的な働きかけを含む drum up とは、かかる時間の長さが違います。
Note|確かな現在義と、由来説を分ける
drum up は、何かを得るために粘り強く働きかけることを表します。business、support、interest など、集めたい対象を後ろへ置けます。
軍隊の徴募、英米の歴史、行商や市場の呼び込みへ結びつける説明はありますが、今回確認できた資料ではその具体的な経路を裏づけられません。実際の太鼓が使われなくなった後も句だけが残った、という物語も断定しません。
劇中では、回復支援の集まりに人を送り込み、施設へ誘導する行為を批判的に評しています。drum up 自体の評価色ではなく、コールガールを使った勧誘という場面が皮肉を生んでいます。
現在義と歴史的な由来説を分けておけば、覚え方の絵を事実として教えることを避けられます。
まとめ|待たない集め方を、ひと言で
drum up business の中心にあるのは、客を得るために粘り強く働きかけることです。太鼓の絵は記憶の補助として使えますが、語源の確定説明ではありません。
集める対象を business から support や interest に替えれば、賛同を取り付ける場面や関心を掘り起こす場面にも使えます。称賛・皮肉の色は前後の文脈から判断します。
医療という建前の裏で人を送り込んでいた院長に、この一言が当てられた場面は、その皮肉の側の使い方をよく示していました。集め方そのものを語りたい場面のために、会話のレパートリーに加えてみてください。


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