海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
欲しい気持ちが顔に出てしまっている人を、少し離れたところから眺めてしまう。そんな場面が、ドラマには時々あります。当人は隠しているつもりでも、周りには丸見えになっている、あの居心地の悪い可笑しさです。
その様子をひと言で言い当てる「drool over」を、『メンタリスト』シーズン3第10話の中盤、サンタ役者たちの大会会場でリグスビーとヴァン・ペルトが聞き込みを進めるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「drool over」の意味とニュアンス
drool over
意味:物欲しそうに見つめる、鼻の下を伸ばす
drool は「よだれを垂らす」を表し、drool over は人や物を強く欲しがったり、過度に賞賛したりすることを比喩的に表します。over が対象を示しますが、身を乗り出す前傾姿勢まで語義として含むわけではありません。
欲しさを大げさに描くため、からかいや批判を帯びることはあります。一方、自分の憧れを遊び心を込めて語ったり、作品や商品を強く称賛したりする肯定的な文脈にも使われます。必ず否定的で褒め言葉にならない、と固定することはできません。
【ここがポイント!】
- よだれを垂らす像から、強く欲しがる・過度に賞賛する気持ちを大げさに表す
- 批判にも、遊び心のある強い称賛にも使われる
- 肯定・否定の色は、対象と口調、前後の文脈から判断する
『メンタリスト』S03E10のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
サンタ役者たちの団体が開く大会の会場で、リグスビーとヴァン・ペルトが会員から話を聞く場面です。被害者の会長職をめぐる対立が表に出たあと、前夜にひげを外してホテルのバーに紛れ込んでいたという男が、会長候補たちの様子を暴露し始めます。その告発の締めくくりに、このフレーズが置かれています。
Rigsby: AND HOW’D YOU KNOW WHAT THEY WERE TALKING ABOUT LAST NIGHT?
(で、昨夜あの人たちが何を話していたか、どうして知っているんです?)Tony: I WAS SITTING TWO STOOLS AWAY AT THE HOTEL BAR. THEY HAD NO IDEA WHO I WAS WITHOUT THE BEARD.
(ホテルのバーで、二席離れて座っていたのさ。ひげがなければ、誰も私だと気づかない)Bob: OH, GEE, A SPY!
(へえ、スパイってわけか)Tony: A CONCERNED MEMBER OF THE N.S.A.S. THEY WERE TRYING TO TAKE OVER HIS POSITION. AND THEY WERE DROOLING OVER HIS DATE.
(協会を憂う一会員だ。連中はベンジャミンの座を奪おうとしていた。おまけに、連れの女性に鼻の下を伸ばしていたよ)The Mentalist Season3 Episode10(Jolly Red Elf)
シーン解説と心理考察
自分の行為を「スパイ」ではなく「協会を憂う一会員」と言い直すところに、この人物の自己像がにじむ場面です。ひげを外してバーに座り、仲間の会話を盗み聞きしていたという事実は変わらないのに、言葉の選び方だけで立ち位置を上に置こうとしています。
その延長線上に drooling over が置かれているのが効いています。会長の座を狙っていたという告発だけでは、政治的な争いの話で終わります。そこへ「連れの女性に鼻の下を伸ばしていた」と付け足すことで、相手の品位の低さまで一気に引きずり下ろす形になっています。サンタを演じる者としてふさわしいかどうか、という基準が言葉の裏に働いていると言えます。
赤い衣装を脱いだサンタたちの生々しさが、この一言に重なっています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
覚え方として、ショーウィンドウのケーキを見て思わずよだれが出そうになる誇張を思い浮かべてください。中心にあるのは物理的な姿勢ではなく、欲しさや称賛の強さです。
このシーンでは、赤い衣装を着た人々が女性に見とれていた、という絵が語られます。子どもに夢を配る役を演じる人たちが、ガラス越しのケーキを覗き込むような顔をしていた。その落差が可笑しさと批判を同時に生んでいます。
誰かの物欲しそうな顔を英語で言いたくなったとき、曇ったガラスとサンタスーツを並べて思い出せば、この表現が持つ温度がそのまま戻ってきます。
例文で覚える「drool over」
対象が物か人か、そして誰について言うかで色が変わる表現なので、三つの角度から確かめてみましょう。
He’s been drooling over that guitar in the shop window for weeks.
(彼は何週間も、店のウィンドウのあのギターを物欲しそうに眺めている)
友人の物欲を第三者に話す場面です。物が対象のときは、からかいの色がいちばん軽くなります。
I’ll admit it — I was drooling over her portfolio.
(認めるよ、彼女の作品集に見とれていた)
同業者の実力に感嘆する場面です。自分について使うと、自虐まじりの称賛として響きます。
A: Why does he look so uncomfortable tonight?
B: The whole table’s been drooling over his date since they sat down.
(A:彼、今夜やけに居心地悪そうだね)
(B:座ってからずっと、テーブル中が彼の連れに鼻の下を伸ばしてるからだよ)
気まずい会食の様子を伝える場面です。劇中と同じ使い方で、批判の色がはっきり出ます。
あわせて覚えたい関連表現
ogle
(じろじろ見る)
人を欲望や賞賛の目でじろじろ見ることを表します。drool over と意味が重なる場合があり、非難の向きを完全に分けることはできません。
lust after
(激しく欲しがる)
人や物を強く欲することを表します。「見る」動作そのものを必ず表すわけではなく、drool over より語調が重くなるかどうかも文脈次第です。
gawk at
(ぽかんと見つめる)
無遠慮に、ぽかんと見つめることを表します。驚きや物珍しさが理由になることはありますが、動機は語義として固定されません。
Note|drool over と近い語の重なりを整理する
drool over、ogle、gawk at、lust after は意味の焦点が異なりますが、排他的に別々の場面だけを担当するわけではありません。
gawk at は無遠慮に見つめる行為、ogle は欲望や賞賛を込めてじろじろ見る行為、lust after は強く欲する状態、drool over は欲しさや称賛をよだれの像で大げさに示す表現です。動機だけでなく、視線という行為を述べるのか、欲望の状態を述べるのかが選択に関わります。drool over に「本人は隠しているつもり」という前提は必須ではありません。
劇中では他人の連れを欲しそうに見ていたと非難する文脈なので、drool over がからかいと批判を帯びています。別の場面で同じ語が肯定的に使われる可能性は残ります。
訳語ではなく動機で並べ直すと、選び分けの基準が見えてきます。
まとめ|隠しているつもりが、いちばん目立つ
drool over は、強い欲しさや称賛を、よだれを垂らす像で大げさに表す表現です。からかいにも熱のこもった称賛にもなります。
物についても人についても使えます。自分・他人という向きだけで色を決めず、対象と口調から肯定・否定を読み分けます。
ひげを外してバーに座っていた男が、仲間たちを笑うために選んだのがこの一語でした。誰かの隠しきれない表情を描写したい場面のために、表現の引き出しに加えてみてください。


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