海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
売上や株価が一気に落ちた話をしようとして、「下がった」以上の言葉が出てこず、もどかしい思いをした経験はありませんか。数字の落ち方の急さまで含めて伝えたい場面は、意外と多いものです。
そんなときに使える「take a dive」を、『メンタリスト』シーズン3第10話の序盤、サンタ姿の男性が転落死した事件をめぐって、捜査班が被害者の財務状況を洗い出していくシーンから、一緒に見ていきましょう。
「take a dive」の意味とニュアンス
take a dive
意味:価値が急落する、(ボクシングで)故意に倒れて負ける
dive は、飛び込み台から水面へ一直線に落ちていく動きを指す語です。take a dive はその動きを借りて、数値や状態が一気に落ち込むことを表します。fall や drop が「落ちた」という事実だけを述べるのに対して、take a dive には角度の急さと速さが含まれます。売上、株価、支持率、評判、気分といったものが対象になり、なだらかな下降ではなく、ある時点を境にストンと落ちた場面で選ばれます。
もう一つの定型義は、ボクサーが故意に倒れて負けることです。人や車の物理的な転落全般を表す標準的な慣用句として扱うのは安全ではありません。劇中の建物からの落下は、dive の文字どおりの像を事業の急落へ重ねた言葉遊びとして読むのが適切です。
【ここがポイント!】
- 核は飛び込み台から水面へ落ちる一直線の動き、なだらかな下降には向かない一言
- 人や車の物理的転落全般へ広げず、劇中2回目は言葉遊びとして区別する
- ボクシングでは故意に倒れて負ける意味があるので、文脈で切り替える
『メンタリスト』S03E10のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
サンタ姿の男性が建物から転落死し、CBIの捜査班が初動でつかんだ情報を持ち寄る場面です。被害者ベンジャミン・リップルの通販事業が不況で破綻寸前だったと分かり、自殺という筋書きがきれいに組み上がっていきます。その流れをひと言でまとめるリグスビーの言い回しに、注目してみてください。
Cho: WHY WOULD SOMEBODY KILL THE VICTIM IF HE WAS DYING OF BOOZE ANYWAY? THAT SUGGESTS SUICIDE, NOT MURDER.
(どうせ酒で死にかけてた男を、わざわざ殺す理由がどこにある。それは殺人じゃなく自殺を示してる)Van Pelt: SO DOES HIS BANK ACCOUNT. I RAN RIPPLE’S FINANCIALS. HIS MAIL ORDER BUSINESS WAS HIT HARD BY THE RECESSION. IT’S ALMOST BANKRUPT.
(銀行口座も同じことを示しています。リップルの財務を調べました。通販事業が不況で大打撃を受けていて、ほぼ破産状態です)Rigsby: SO HIS BUSINESS TAKES A DIVE, RIPPLE STARTS DRINKING, THEN HE TAKES A DIVE STRAIGHT OFF HIS BUILDING.
(それで商売が真っ逆さま、リップルは酒に走って、今度は自分が建物から真っ逆さまってわけか)Cho: GUESS AGAIN. I SHOWED THE SUICIDE NOTE TO OUR HANDWRITING ANALYST, COMPARED IT TO ATTESTED SAMPLES OF RIPPLE’S SIGNATURE. HE DIDN’T WRITE THE NOTE.
(残念だがハズレだ。遺書を筆跡鑑定に回して、リップル本人の署名と照合した。書いたのは本人じゃない)The Mentalist Season3 Episode10(Jolly Red Elf)
シーン解説と心理考察
同じ take a dive を、事業の急落と建物からの落下へ続けて使う言葉遊びが、この一言の面白さです。2回目は物理的転落全般を表す定型義の例ではなく、dive の文字どおりの像へ戻した劇中のしゃれです。
その据わりのよさが、直後にひっくり返されるのがこの場面の見どころです。筆跡鑑定の結果が示され、遺書が本人の手によるものではないと告げられると、きれいにまとまりかけた話は音を立てて崩れます。リグスビーの言い回しは、捜査が一度もっともらしい絵に落ち着きかけたことを示す目印として響きます。
軽口のようでいて、話の流れを一区切りさせる働きをしている点に、この表現の使われ方が凝縮されています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
飛び込み台の先端から、体が一直線に水面へ向かっていく映像をまず思い浮かべてみてください。dive は「潜る」ではなく、落ちていく途中の姿勢を切り取った語です。その一直線の軌道を、売上グラフの線に重ねると、take a dive がなぜ「じわじわ下がる」には向かないのかが見えてきます。
このシーンでは、商売の落ち込みを take a dive と言った口で、そのまま人の転落まで言い切っています。グラフの急降下とサンタスーツの落下が同じ動詞で表せてしまう、という事実そのものが記憶の手がかりになります。数字が落ちた話をするとき、この二重の落下を思い出せば、fall でも drop でもなく dive が出てくるはずです。
例文で覚える「take a dive」
急落と転落の両方をカバーするフレーズなので、対象を入れ替えながら三つの場面で確かめてみましょう。
Sales took a dive after the price increase.
(値上げのあと、売上が急落した)
月次の報告で数字の落ち込みを説明する場面です。数値を主語に置く、最も出番の多い形になります。
His mood took a dive when he heard the news.
(その知らせを聞いて、彼の機嫌は一気に落ち込んだ)
同僚の様子を第三者に伝えるときの一言です。目に見えないものにも使えるところに、この表現の広さが表れます。
A: Did you see the stock price this morning?
B: I did. It took a dive the moment the report came out.
(A:今朝の株価、見た?)
(B:見たよ。報告書が出た瞬間に真っ逆さまだった)
職場の雑談で市場の動きを話題にする場面です。the moment と組み合わせると、落ち方の速さが際立ちます。
あわせて覚えたい関連表現
plummet
(急落する)
報道やレポートで選ばれやすい硬めの一語です。take a dive が会話寄りで話し手の驚きをにじませるのに対して、こちらは事実を淡々と述べる響きになります。
go under
(倒産する、沈む)
企業などが倒産することを表します。take a dive が価値の急落を述べるのに対し、go under は事業の破綻に焦点があります。本エピソード台本に両語を使い分ける別場面は確認できません。
hit rock bottom
(どん底まで落ちる)
底に着いた状態に焦点があります。take a dive が落下そのものを言うのに対して、こちらは落ちきったあとの位置を語る表現です。
Note|急落・故意の敗北・競技規則用語を分ける
take a dive には、価値が急落する用法と、ボクシングで故意に倒れて負ける用法があります。どちらも標準的な辞書義として確認できます。
ただし、ボクシングの八百長用法から価値の急落用法へ発展したのか、両者が並行して育ったのかという歴史は、確認できる資料なしに一つへ決められません。現在の二つの意味を押さえ、派生順は断定しないのが安全です。
サッカーでは接触を装う行為を diving と呼ぶことがありますが、IFAB競技規則上の用語は simulation です。take a dive を審判が示す正式な判定用語と説明することはできません。
劇中では、最初の business takes a dive が価値の急落、2回目が建物からの落下をかけたしゃれです。辞書義と脚本上の言葉遊びを分けると、誤用を避けられます。
まとめ|真っ逆さまに落ちる、を一語で
take a dive の核にあるのは、飛び込み台から水面へ向かう一直線の軌道です。「下がった」ではなく「落ちた」、それも角度をつけて一気に、という落ち方の質までを一語で運んでくれます。
数字の話でも、人の話でも、気分の話でも同じ形が使えるため、報告や雑談のどちらでも出番があります。落ち方の急さを伝えたい場面で fall や drop に手が伸びたとき、この表現を思い出せると、伝わる絵の解像度が変わってきます。
事業の急落と人の転落を、同じ動詞でひと続きに語ってみせたこのシーンは、その使い勝手をそのまま示す実例になっています。落ち方まで含めて伝えたい場面のために、表現の引き出しに加えてみてください。


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