海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
はっきりとは口にしないのに、こちらに何かを察してほしい。そんな話し方をされて、返事に困った経験はありませんか。相手は何も言っていないはずなのに、言われた気がして落ち着かない、あの感覚です。
そんな場面で耳にする「get someone’s drift」を、『メンタリスト』シーズン3第13話から、選挙を控えた市長の妻がCBIの捜査官にやんわりと釘を刺すシーンを通して、一緒に見ていきましょう。劇中では所有格がmyになったget my driftの形です。
「get someone’s drift」の意味とニュアンス
get someone’s drift
意味:言いたいことがわかる / 察しがつく
drift は「漂うこと」「流されて進むこと」を表す名詞です。雪が風に吹き寄せられてできる snowdrift、海を流れていく流氷、大陸が動く continental drift。いずれも、押し流されて向かっていく動きを共有しています。
この語が会話に持ち込まれると、「話が向かっている方向」を指すようになります。someone’sの部分はmy、yourなどに替わり、一語一語ではなく話全体がどこへ流れているかをつかむ、という意味になります。
そのため、この表現は言いにくいことをぼかす場面と結びついています。名指しを避けたい、言質を取られたくない、直接言えば角が立つ。そうしたときに肝心なところを言わずに止め、あとは聞き手に運ばせる。「わかるよね?」と確認する形をとることで、口にしていないのに伝わったという状態が作られます。
否定形の I don’t get your drift は、話が読めなかったという率直な確認になります。
【ここがポイント!】
- drift は「流されていく方向」、細部ではなく話の向かう先をつかむ一言
- 言いにくいことを言わずに済ませたいとき、最後を聞き手に運ばせる表現
- やわらかい響きのわりに相手の逃げ場が少ない言い方だと読むのがコツ
『メンタリスト』S03E13のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
殺害された映像作家アンバーについて、CBIのヴァン・ペルトが任意の聴取を進めている場面です。相手は下院補欠選挙に出馬中の市長の妻、ジェシカ・バグショー。ヴァン・ペルトが「陣営の誰かと親しかったのでは」と遠回しに切り出した瞬間、質問の意図を先回りされます。そのまま押し切られる流れの終着点に、今回のフレーズが置かれています。
Van Pelt: Was she close with anyone else? Maybe someone with the campaign?
(彼女、ほかに親しい人はいましたか。選挙陣営の誰かとか)Jessica: What is it that you’re suggesting?
(何をおっしゃりたいの?)Van Pelt: Nothing. Just… she was pretty and–
(いえ、別に。ただ、きれいな方でしたし——)Jessica: And my husband is attractive and charming and powerful. Right?
(それで夫は魅力的で、感じがよくて、力もある。そういうこと?)Van Pelt: Um, that’s not what I was suggesting.
(ええと、そういう意味で言ったのではありません)Jessica: It’s how rumors get started. Um… We have no interest in having a pretty dead woman attached to the campaign, if you get my drift, Agent?
(そうやって噂は生まれるのよ。きれいな死体を選挙運動にくっつけられるのは困るの。言いたいこと、わかるわよね、捜査官?)The Mentalist Season3 Episode13(Red Alert)
シーン解説と心理考察
ジェシカは一度も声を荒らげません。それどころか、ヴァンペルトが言いかけた疑いを自分の口で完成させてしまいます。「夫は魅力的で、感じがよくて、力もある」。相手が言いにくくて止めた部分を先に引き取ることで、質問の主導権が入れ替わる場面です。
続く一言も同じ構造を持っています。困るのは「きれいな死体が選挙運動に結びつくこと」だと述べるだけで、だから何をしろとは言いません。要求の中身は空白のまま置かれ、埋めるのは聞き手の仕事になります。脅していないという事実だけが手元に残る話し方が表れています。
締めくくりの「Agent?」も見どころです。名前ではなく役職で呼び直すことで、個人的な会話から公的な立場のやり取りへ引き戻す。距離を測り直す動作が、この一語に重なっています。政治の場に慣れた人物であることが、数十秒の会話で描き切られる場面と言えます。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
川に葉を一枚浮かべる場面を思い浮かべてみてください。葉は流れに乗って、こちらが押さなくても向こう岸へ着きます。get my drift が求めているのは、この「流れに乗せて運ばせる」感覚です。
話し手は途中で言葉を止めます。そこから先は流れが運ぶ。だから最後まで言う必要がありません。ジェシカが「困るのよ」で止めて、その先を口にしなかったのはそのためです。
言い切らずに止める、という動作と結びつけておくと、なぜこの表現が遠回しな場面ばかりに現れるのかまで一度に入ります。手を離した葉が、どこへ着くかを見届ける。そんな絵で覚えておくと忘れにくくなります。
例文で覚える「get someone’s drift」
ぼかして伝えるとき、察せなかったと伝えるとき。両方の向きを3つの例文で見ていきましょう。
I’m not saying he’s lazy, but he hasn’t finished a single task this week. You get my drift.
(怠けてるとは言わないけど、今週ひとつも仕事を終わらせてないんだよね。まあ、わかるでしょ)
同僚の愚痴を友人にこぼす場面です。前半で否定しておきながら事実だけを並べる型と相性がよく、判断は相手に預けられます。
We’d like this handled quietly, if you get my drift.
(これは静かに処理していただきたいのですが。おわかりですね)
取引先に内々の対応を求める場面です。劇中のジェシカとほぼ同じ用法で、命令の形をとらずに圧をかけられます。
A: We may need to “reallocate” some of your team’s responsibilities.
B: Sorry, I’m not sure I get your drift. Are you saying we’re being cut?
(A:きみのチームの担当範囲を「再配分」する必要が出るかもしれない)
(B:すみません、話が読めていません。人員削減という意味ですか)
遠回しな通告を受けた側が確認する場面です。否定形にすると、あえて言わせるための切り返しとしても機能します。
あわせて覚えたい関連表現
catch my drift
(言いたいことをつかむ)
get my drift と同じく、言いたいことや話の方向をつかむという意味で使われます。両者の口語性に固定的な順位をつけず、実際の用例ではほぼ同じ意味として理解できます。
if you know what I mean
(言ってる意味、わかるよね)
「私の言う意味がわかるなら」という形で、言外の意味を相手に察してもらう表現です。冗談・含み・警告などのニュアンスは、句そのものではなく前後の文脈と口調で決まります。
read between the lines
(行間を読む)
聞き手がすべき動作を名指しした表現です。get my drift は「察してくれたよね?」と確認する側の言葉で、主語と視点が反対になります。
Note|察してもらうことを、言葉にする英語
get my drift は、話の細部ではなく、話し手が向かっている意味や意図を理解したかを示す表現です。疑問形だけでなく、You get my drift. のような平叙文でも使われます。
劇中では、ジェシカがif you get my driftという条件節にAgent?という呼びかけを重ね、相手に応答を促しています。ただし、この一場面の使い方から「この表現は必ず問い返す」「必ず疑問形になる」と一般化することはできません。
同じ意味は日本語でも「言いたいことはわかりますよね」「察してください」のように、確認を明示する場合としない場合があります。英語と日本語を一律に対立させず、場面ごとの遠回しさと応答要求を見分けることが重要です。
get someone’s drift は「人の言いたいことがわかる」「話の大意をつかむ」と訳せます。劇中のget my driftは「私の言いたいことがわかる」という形です。疑問形なら確認、平叙文なら含みを念押しするなど、文の形によって働きが変わります。
何を察してほしいのかは、直前の発話と場面から読み取ります。
まとめ|言わずに伝えるという選択
get my drift の中心にあるのは、drift という「流されて向かう方向」です。細部ではなく流れの行き先をつかんでほしい。だからこそ話し手は途中で言葉を止め、残りを聞き手に運ばせます。
会話でこの表現に出会ったら、直前に語られなかった部分を探してみると意味がつかめます。逆に使う側に回れば、断定を避けながら要点を届けるという、かなり便利な選択肢になります。
言いにくいことを、言わずに済ませる。そんな一言として、表現の引き出しに加えてみてください。


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