海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
信じられないような言い分を聞かされて、思わず「いやいや、勘弁してよ」と口をついて出たことはありませんか。呆れと苦笑が半分ずつ混ざったような、あの感覚です。
そんなときに使われる「give me a break」を、『メンタリスト』シーズン3第4話から、ジェーンが取調室で無茶な実験を仕掛けてリズボンに叱られるシーンを通して、一緒に見ていきましょう。
「give me a break」の意味とニュアンス
give me a break
意味:勘弁してくれ / 冗談じゃない
break は「休憩」「中断」「猶予」を表す語です。直訳すれば「私に一息つかせてくれ」となり、追い詰められた状態から少し解放してほしいという訴えが原型になります。
ここから二つの方向に用法が広がりました。一つは原型に近い「大目に見てほしい」という依頼。責め立てられた側が、これ以上は無理だと音を上げるときの一言です。もう一つは「そんな馬鹿な話があるか」という呆れや反発で、現在の会話ではこちらのほうが頻繁に耳にします。
同じ4語が正反対の立場で使われるため、判断材料になるのは状況と語気です。ため息混じりに言えば疲労の訴えに、短く吐き捨てれば反発になります。聞き分けの手がかりは、話し手が守りの側にいるか、攻めの側にいるかを見ることです。
【ここがポイント!】
- break は「一息つく猶予」、そこから依頼にも反発にも広がった一言
- 現在の会話では「冗談じゃない」の呆れ用法のほうが出番が多い
- 話し手が守りか攻めか、どちらの立場かで意味を読み分けるのがコツ
『メンタリスト』S03E04のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
容疑者の夫婦から話を聞いた直後の場面。ジェーンは挨拶をしながら、あろうことか夫の手に銃を握らせます。当然リズボンは激怒しますが、ジェーンには確かめたいことがありました。銃を扱い慣れた人間なら絶対にしない手つきを、一瞬で見極めるためです。
Jane: Hi. Patrick Jane. Very nice to meet you. Hold that, please.
(どうも、パトリック・ジェーンです。はじめまして。ちょっとこれ持っていてください)Lisbon: What the hell are you doing?!
(何やってるのよ!)Jane: It’s okay. Rigsby took the bullets out. Muzzle sweeps. They have no idea how to handle a gun. Give me a break.
(大丈夫だよ。リグスビーが弾を抜いてある。銃口はふらふら。あの二人は銃の扱いをまるで知らない。勘弁してくれって感じだね)Lisbon: You, outside!
(あなた、外へ!)The Mentalist Season3 Episode4 (Red Carpet Treatment)
シーン解説と心理考察
ジェーンがここで確かめたのは muzzle sweep、つまり銃口が人のいる方向を横切る動きです。銃を日常的に扱う人間なら反射的に避ける仕草で、それができていないことは、その人物が銃に不慣れである何よりの証拠になります。挨拶に見せかけた実験は、わずか数秒で結論を出しました。
give me a break はその結論に対する呆れとして出てきます。容疑者として疑われている二人が、こんな基本すら知らない。捜査の方向そのものへの物言いが、この一言に込められています。
同時に、この言葉はリズボンにも向いています。無茶をとがめられている状況で、これくらい見逃してほしいという牽制にもなっているわけです。呆れと弁明が一つの表現に重なっているのは、この言い回しが両方の用法を持っているからこそ成立する芸当と言えます。なお、このエピソードの冒頭でも同じ表現がリズボンの側から発せられており、二人の立場が入れ替わる構図になっています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
心の中に「一時停止ボタン」が一つあると考えてみてください。手が伸びる理由は二つあります。追い詰められて息が切れたときと、相手の話が馬鹿げていて進行を止めたくなったときです。
押すボタンは同じでも、押し方が違います。そっと押せば「少し待ってほしい」という依頼になり、強く叩けば「その話はここまで」という反発になる。give me a break が正反対の意味を持つのは、この押し方の差によるものです。
ジェーンが容疑者の手つきを見て思わずボタンを叩く場面を映像で覚えておくと、語気で意味が変わる感覚まで一緒に定着します。指の力加減が、そのまま訳し分けの手がかりになります。
例文で覚える「give me a break」
呆れの用法と、大目に見てほしい用法。両方の顔を3つの例文で見ていきましょう。
Ten dollars for a bottle of water? Give me a break.
(水一本で10ドル?冗談じゃない)
観光地で法外な値段を目にしたときの一言です。前に疑問文を置くと、驚きから呆れへの流れが自然につながります。
Give me a break. It’s my first day here.
(勘弁してくださいよ。今日が初日なんですから)
新人がミスを指摘された場面です。こちらは原型に近い「大目に見て」の用法で、理由を後ろに添えると弁明として伝わります。
A: You finished the whole report in an hour?
B: Give me a break. Nobody works that fast.
(A:1時間で報告書を全部仕上げたって?)
(B:まさか。そんなに早く仕事する人はいないよ)
相手の自慢話に軽く突っ込む場面です。信じがたい話への反応として使われ、後ろに理由を続けると冗談めいた雰囲気が出ます。
あわせて覚えたい関連表現
Come on
(またまた / よしてくれ)
呆れや催促を広く担う万能表現です。give me a break のほうが「これ以上は無理だ」という限界の感覚が強く出ます。
You’ve got to be kidding me
(冗談だろ)
信じがたさに用途が絞られた表現です。give me a break のような「大目に見て」の意味では使えないため、二面性はありません。
Cut me some slack
(少し手加減してくれ)
「大目に見て」の側に特化した言い方です。呆れの用法を持たないぶん、give me a break より用途は狭くなります。
Note|同じ4語が「勘弁して」と「ふざけるな」に分かれる理由
give me a break を辞書で引くと、「勘弁してくれ」と「冗談じゃない」が並んで載っています。学習者がつまずくのは、この二つが場面によっては正反対の立場から発せられるからです。
分かれ目になるのは、話し手が守りにいるか攻めにいるかです。ミスを責められている人が使えば、猶予を求める依頼になります。一方、信じがたい主張を聞かされた人が使えば、話を止める反発になります。break が「中断」を意味する以上、止めたいのが自分への追及なのか、相手の言い分なのかで、向きが反転するわけです。
音の置き方も判断材料になります。break を強く長めに伸ばすと呆れの色が濃くなり、me を強めると「私だけは見逃してほしい」という依頼寄りになります。ため息が混じれば疲労の訴え、短く切れば苛立ちの表明です。同じ4語でも、リズムと強勢が意味を決めていきます。
今回のエピソードは、この二面性を見るのに好都合です。冒頭でリズボンがジェーンに向けて使い、中盤ではジェーンがリズボンの前で使う。立場が入れ替わっても同じ表現が成立するのは、この言い回しが依頼と反発の両方を抱えているからにほかなりません。
辞書の訳語をどちらか一方で覚えると、必ずどこかで意味が通らなくなります。break が何を止めようとしているのかを見る。それが、この表現を読み解く一番の近道です。
まとめ|どちらの方向にも押せる一言
give me a break の中心にあるのは、break という「一息つく猶予」です。その猶予を自分のために求めれば依頼になり、相手の話を止めるために使えば反発になる。同じ4語が正反対に見えるのは、止めたい対象が違うだけだと分かります。
英語の会話では、呆れの用法が特によく登場します。ドラマや映画で耳にしたとき、話し手がどちらの立場にいるかを意識してみると、聞き分けが一気に楽になるはずです。
呆れたときにも、追い詰められたときにも手が届く。そんな両利きの表現として、会話のレパートリーに加えてみてください。


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