海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
書類はすべて揃っていて、法にも触れていない。それでもどこか引っかかる取引の話を聞かされる、という場面があります。
そんなときの「後ろ暗いところがない」を表すのが「on the up-and-up」です。犯罪捜査ドラマ『メンタリスト』シーズン3第17話から、事件が片づいた後のCBIで、チョウとリズボンが病院の行く末について短く言葉を交わす場面を一緒に見ていきましょう。
「on the up-and-up」の意味とニュアンス
on the up-and-up
意味:公明正大に、後ろ暗いところなく
on the up-and-up は、物事や人物が正直で合法であり、疑わしいところがないことを表す、主に米国で使われる informal な表現です。
be、stay、keep といった状態を表す動詞と組み合わせて使い、The deal is on the up-and-up. のように主語には取引・事業・組織などを置きます。人について使うこともでき、その場合は「表裏がない」という評価になります。
語形は up という同じ語を and でつないだ独特の形をしています。ただし、「上へ上へと開け、隠れる場所がなくなる」という説明は覚え方のイメージにとどまり、正確な語源は不詳です。改まった文書では honest、legitimate、aboveboard など、文脈に合う語が安全です。
【ここがポイント!】
- 主に米国で使われる informal な表現で、正確な語源は不詳
- 合法かどうかだけでなく、説明できない部分がないかまで含む言い方
- 取引や事業のほか、人の表裏のなさにも使える幅の広さが持ち味
『メンタリスト』S03E17のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
事件が片づいた後のCBIです。病院側で行われていた不正も明るみに出て、チョウとリズボンもそれぞれ元の役割に戻っています。短い応酬に表れた二人の視線の違いを見ていきます。
※以下の引用は、事件の結末と病院側の処分を明かします。
Lisbon: Now that Quick’s been fired for trading an M.R.I. machine for a kidney, let’s hope the hospital’s transplant program stays on the up-and-up.
(MRI装置と腎臓を引き換えにしたことでクイックが解雇された今、あの病院の移植プログラムがこの先は真っ当に回ることを願いたいわね)Cho: Yeah, there’s an endless supply of doctors like Quick in the world.
(そうですね。ただ、世の中にはクイックみたいな医者がいくらでもいます)Lisbon: Way to see the bright side. Need anything else? I want you to know that my reinstatement is in no way a reflection of your abilities. You did a great job.
(前向きな見方ね。ほかに何かある? 私が元に戻ったのは、あなたの能力とはまったく関係ない。それは分かっておいて。よくやってくれた)Cho: I know.
(分かっています)The Mentalist Season3 Episode17(Bloodstream)
シーン解説と心理考察
リズボンが口にしたのは、組織が正されることへのささやかな期待でした。let’s hope という前置きが、断定を避けた慎重さをやわらかく見せています。事件は解決し、不正を働いた人物も職を失った。それでも「願う」としか言えないところに、この仕事を続けてきた人間の距離感があります。
返ってきたチョウの言葉は、その期待を静かに引き戻すものでした。Yeah はまず受け止める肯定で、そのあとに「同じような医者はいくらでもいる」と現実的な留保を続けています。リズボンはそれを皮肉で受け流し、すぐ次の用件へ切り替えます。
最後にリズボンが、自分の復帰はチョウの能力とは関係ないと言い添えます。上司として当然の配慮ですが、それを受けたチョウの返事はいつもどおり短いものでした。立場が元に戻っても、二人の関係が完全に同じところへは戻っていないことが、その短さに重なっています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
覚え方の比喩として、薄暗い地下から明るい場所へ出る場面を思い浮かべると、「後ろ暗いところがない」という意味をつかみやすくなります。ただし、これは語源の説明ではありません。
このシーンで願われていたのは、まさにその移動でした。地下で回っていた順位付けが、これからは階段の上へ出てくること。地下と踊り場という二枚の絵を並べて覚えておくと、on the up-and-up が単なる「合法」ではなく「見えるところで行われている」という意味だと掴めます。
例文で覚える「on the up-and-up」
取引や事業の健全さを保証する場面でよく登場します。動詞を変えると意味の向きが少しずつ変わる、三つの使い方を見ていきましょう。
Don’t worry, the whole deal is on the up-and-up.
(心配ないよ、この取引は全部きれいなものだから)
相手の不安を打ち消して話を前に進める場面です。be動詞と組むと、現時点で問題がないという保証になります。
The audit confirmed that the accounts had been on the up-and-up all along.
(監査により、帳簿は最初から問題なかったと確認された)
監査や調査の結果を会話や一般向けの記事で説明する場面です。正式な監査報告書では legitimate、proper、aboveboard など、文脈に合う語を選ぶほうが安全です。
A: Are you sure about this supplier?
B: I checked them out myself. They’re on the up-and-up.
(A:この仕入れ先、本当に大丈夫?)
(B:自分で確かめてきたよ。真っ当なところだ)
取引先の素性を確認し合う場面です。短く言い切ることで、確認済みという事実そのものが保証として働きます。
あわせて覚えたい関連表現
aboveboard
(公明正大な)
カードゲームでテーブルの上に手を出しておく、つまり手札を隠さないことに由来する言い方です。on the up-and-up より書き言葉になじみやすく、形容詞としても副詞としても使えます。
on the level
(正直な、嘘のない)
人の誠実さや発言の真実性に向けて使われることが多い表現です。on the up-and-up が事業や取引まで広く覆うのに対し、こちらは相手が本当のことを言っているかに焦点があります。
under the table
(裏で、非公式に)
記録に残さない金銭のやり取りなどを指します。on the up-and-up とちょうど反対の位置にあり、二つを対にすると表と裏の言い分けが一度に整理できます。
Note|同じ語を and でつなぐ英語の響き
on the up-and-up を見て、なぜ up を二度繰り返すのだろうと引っかかった方も多いはずです。この形は英語の中で決して珍しいものではなく、いくつかの仲間を持っています。
同じ語や近い語を and で結んで一つの言い回しにする形は、英語に古くから見られます。out-and-out(まったくの、徹底した)、by-and-by(やがて)、over and over(何度も)、through and through(骨の髄まで)。いずれも、繰り返すこと自体が意味を強めたり、状態が続いている感じを生んだりしています。
音の面では、同じ音が短い間隔で戻るためリズムが生まれ、ひとかたまりとして口に乗りやすくなります。ただし、up の反復が「上へ、さらに上へ」という由来を示すとまでは言えません。
こうした形は、一語ずつ辞書を引いても意味にたどり着けません。up と and の意味を足しても「公明正大」は出てこないからです。ひとかたまりの音として覚えるほうが早い表現群だと言えます。
劇中でリズボンがこの語を選んだ場面は、公式の報告ではなく同僚どうしの短い会話でした。主に米国で使われる informal な表現の温度が、場面に合っています。
音の形ごと覚えてしまえば、意味は後からついてきます。
まとめ|階段の上に出るということ
on the up-and-up は、物事や人物が正直で合法であり、疑わしいところがないことを表す、主に米国の informal な表現です。
この一言を持っておくと、取引や組織の健全さについて、硬すぎない言葉で確認や保証ができます。legal という語では届かない、「見えるところで行われているか」という感覚まで一緒に伝えられるようになります。
取引や組織が真っ当かどうかを会話で述べたいときに使える一言です。


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