海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
一つひとつの説明にはおかしなところがないのに、並べてみると全体がどうしても噛み合わない、という場面があります。
そんなときに口をついて出る「add up」は、複数の事実が整合しているかどうかを言い表す表現です。犯罪捜査ドラマ『メンタリスト』シーズン3第17話から、被害者のIDバッジの使用記録を洗っていたヴァン・ペルトが、上司になったばかりのチョウに矛盾を報告する場面を一緒に見ていきましょう。
「add up」の意味とニュアンス
add up
意味:辻褄が合う、筋が通る
add up は、もともと数字を足し合わせて合計を出す動作を表す言葉です。そこから、複数の情報を並べたときに全体として成立するかどうか、という意味へ広がりました。帳簿の数字が合うかを確かめる感覚が、そのまま話の整合性を確かめる場面に持ち込まれています。
doesn’t add up のような否定形は、矛盾や違和感を指摘するときによく使われます。一方、It all adds up. のような肯定形も、情報が整合している、または合計が正しいことを述べる場面で使えます。
主語には story、numbers、alibi、something など、確かめる対象を置けます。複数の事実を突き合わせる場面にも、一つの説明が合理的かを評価する場面にも使われます。
【ここがポイント!】
- 帳簿の数字を上から足していく動作が、そのまま核になっている表現
- 否定形は矛盾の指摘に、肯定形は情報が整合することにも使えます
- 数字、説明、アリバイなどが合理的・整合的かを評価できます
『メンタリスト』S03E17のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
被害者が身につけていた放射線バッジの数値と、遺体の実測値が食い違うという謎が序盤から残されていました。ヴァン・ペルトはその線を追い、バッジが院内の入退室記録も兼ねていることに行き着きます。責任者になったばかりのチョウへの報告のなかで、記録と証言のずれが add up という一語で切り出されます。
Van Pelt: I was looking into the radiation badge and learned something. Any access in the hospital after hours requires employees to use their I.D. badge to gain entry.
(放射線バッジを調べていて分かったことがあります。時間外に院内へ入るには、職員はIDバッジを使わないといけないんです)Cho: That sounds promising.
(見込みがありそうだな)Van Pelt: There’s more. Newton’s badge usage the night of the murder doesn’t add up.
(まだあります。殺害当夜のニュートンのバッジの使用履歴の辻褄が合わないんです)Cho: How so?
(どういうことだ)Van Pelt: According to the security report, he swiped his badge in radiology at 8:05 that night. But Newton’s assistant said that he was giving a lecture to medical students around that time.
(警備記録では、その夜の8時5分に放射線科でバッジを通しています。でも助手の話では、彼はその時間帯に医学生へ講義をしていたはずなんです)The Mentalist Season3 Episode17(Bloodstream)
シーン解説と心理考察
ヴァン・ペルトの報告の運び方に、彼女の仕事の丁寧さが表れています。いきなり結論を出すのではなく、まず制度の説明から入り、次に矛盾を示し、最後に二つの事実を並べる。相手が自分で結論に届けるよう、材料の順番が組まれています。
注目したいのは、彼女が「バッジの数値がおかしい」ではなく「使用履歴の辻褄が合わない」と言った点です。前者なら機器の不具合で片づく余地がありますが、後者は人の動きの矛盾を意味します。警備記録と助手の証言、どちらも単独では正しそうな二つの事実が、並べた瞬間に両立しなくなる。add up が持つ整合性の意味が、この一言に重なっています。
チョウの返しはいつもどおり短く、三語だけです。感情を挟まず先を促すこの応じ方が、報告の流れをそのまま前へ運んでいます。直後に部下の名を呼んで労うところまで含めて、責任者になったばかりの人物の立ち位置がさりげなく描かれる場面です。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
帳簿の数字を上から順に足していく場面を思い浮かべてみてください。一行ずつは何の問題もない数字なのに、最後に出た合計が伝票の額と一致しない。合わないということは、どこかで一行が抜けているか、二重に入っているということです。
このシーンで足されていたのは、警備記録の時刻と、助手が語った講義の時刻でした。どちらの数字も単体では正しく、並べた瞬間だけ合わなくなる。add up は数字そのものではなく、並べたときに生まれるずれを指しています。手元に伝票と帳簿を二枚並べる姿を思い描いておくと、この表現の出番が見つけやすくなります。
例文で覚える「add up」
否定形で矛盾を指摘する場面だけでなく、肯定形で整合性を述べることもできます。三つの使い方を見ていきましょう。
The numbers just don’t add up in this quarterly report.
(この四半期報告書、どうしても数字が合わない)
提出された報告書を確認する場面です。計算の意味と比喩の意味が重なる、この表現らしい使い方になります。
Something about his story doesn’t add up, and it’s been bothering me all day.
(彼の話がどうも腑に落ちなくて、一日中それが引っかかっている)
はっきり指摘できないのに違和感が消えない場面です。something を主語に置くと、根拠を示さずに疑いだけを伝えられます。
A: He said he was stuck in traffic for two hours.
B: That doesn’t add up. He left the office at six and got home at six thirty.
(A:渋滞に2時間はまってたって言ってたよ)
(B:辻褄が合わないな。六時に会社を出て、六時半には家にいたんだから)
友人の話に引っかかりを覚える場面です。理由を後ろに続けることで、どこが合わないのかまで一息で伝えられます。
あわせて覚えたい関連表現
add up to
(合計〜になる、結局〜ということになる)
to が付くと「〜という結果になる」へ意味が動きます。今回のエピソードの終盤にも登場し、同じ回の中で add up との違いを確かめられます。
make sense
(意味が通る、合理的である、納得がいく)
説明を理解できるという意味に加え、物事が合理的で筋が通るという意味もあり、add up と重なる領域があります。add up は特に数字や情報の整合を評価する文脈でよく使われます。
hold water
(理屈が通る)
主張や理屈そのものの強度を問う表現です。add up が事実関係のずれを指すのに対し、こちらは論の組み立てに穴がないかを見ています。
Note|add up / make sense / hold water の分かれ目
「筋が通る」と訳せる英語表現はいくつもありますが、それぞれが審査している対象は違います。捜査の場面で add up が選ばれた理由も、この違いを知ると見えてきます。
add up が見ているのは、事実どうしの関係です。警備記録と証言のように、複数の情報を並べたときに両立するかどうかを問います。話し手の理解力は関係なく、事実の側が噛み合っていないと言いたいときに使われます。
make sense は、聞き手が説明を理解できることにも、説明や状況が合理的であることにも使えます。That doesn’t make sense. は「理解できない」と「筋が通らない」の両方になり得るため、add up との境界は絶対ではありません。
hold water は、主張や説明が検討に耐え、信頼できるかを表します。His argument doesn’t hold water. と言えば、その理屈は成立しないという批判になります。容器が水を漏らさないことから来たという説明は確認できないため、語源としては断定しません。
劇中で問題になっていたのは、記録と証言という二つの情報でした。そこで add up が、両者の整合性を問うために使われています。似た表現の守備範囲は重なりますが、何を評価しているかを見ると選びやすくなります。
どこを疑っているのかは、選ばれた動詞が教えてくれます。
まとめ|並べてみて初めて見えるずれ
add up は、複数の事実を並べたときに全体として成立するかどうかを言い表す表現です。個々の情報が正しくても、重ねた瞬間に噛み合わなくなることがある。その瞬間を捉える言葉です。
この一言を持っておくと、相手を責めずに違和感を伝えられます。「嘘だ」と言う代わりに「辻褄が合わない」と言えば、話し手ではなく事実の側に焦点を置いたまま、確認を求めることができます。
慌てて問い詰めるのではなく、二つの事実を静かに並べて見せる。ヴァン・ペルトの報告がそうだったように、矛盾を指摘するときの構えまで含めて身につけられる、そんな一言です。


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