海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
何かの役割を任されたとき、うまくいかなかった出来事をきっかけに、「自分にはもともと向いていないのかもしれない」と急に自信がなくなる瞬間があります。
そんな気持ちを言い表す「be cut out to be」を、『モダンファミリー』シーズン10第9話の中盤、ヘイリーが口にした I’m not cut out to be a mother. の一言から、一緒に見ていきましょう。
「be cut out to be」の意味とニュアンス
be cut out to be
意味:〜に向いている(否定形では「〜に向いていない」)
be cut out to be + 名詞は、生まれつきの素質や性格が、その役割や職業に合っているという意味の表現です。劇中の I’m not cut out to be a mother. のように否定形にすると、「母親という役割に向いていない」「柄ではない」という意味になります。
cut out は、文字どおりには「切り抜く」「切り出す」という動詞です。型に合わせて切り抜かれたものは、その型にぴったり収まります。そこから、「その役の形に合っている」という比喩の意味でとらえると理解しやすくなります。
形には少しバリエーションがあります。to be の後ろには役割や職業を表す名詞が来て、be cut out to be a teacher のようになります。for を使う形もあり、後ろには名詞や動名詞が続いて、be cut out for teaching のように言えます。主語は自分でも他人でもかまいません。
肯定形でも否定形でも使えますが、日本語に直すと、肯定は「向いている」「素質がある」、否定は「向いていない」「柄じゃない」となります。能力が足りるかどうかではなく、その役や仕事が本人に合うかどうかを述べる表現です。後ろに来る名詞が役割や職業なので、「何に向いているか」を具体的に言えるのも特徴です。
【ここがポイント!】
- be cut out to be は、素質や性格が役割や職業に合っているかを述べる表現
- 否定形にすると「向いていない」「柄じゃない」という意味になる
- to be の後ろは名詞、for の後ろは名詞か動名詞が続く
『モダンファミリー』S10E09のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
この話の前半で妊娠していることを語っているヘイリーが、人形をうっかり轢いて腕を取ってしまったと明かします。そこへ驚いた声が一度入り、そのあとヘイリーは「母親という役割に向いていない」と口にして、すぐに「本物の赤ちゃんは人形より楽よね?」と言い直します。be cut out to be は否定形の I’m not cut out to be として登場します。
Haley: The truth is, I accidentally ran her over and ripped her arm off, which might have been fine if that was the only baby-mangling issue I had today.
(実を言うとね、あの子をうっかり轢いて腕をもぎ取っちゃったの。今日、赤ちゃんをめちゃくちゃにしたのがそれだけなら、まだよかったんだけど。)— Oh, my God! Oh, uh, uh Oh, my God.
(ああ、どうしよう! あ、あ、ああ、どうしよう。)Haley: I’m not cut out to be a mother. Then again, a real baby is easier than a doll, right? Like, a real baby would let you know if it was on fire.
(私、母親には向いてないんだ。でもまあ、本物の赤ちゃんは人形より楽よね? だって、本物の赤ちゃんなら、燃えてたら教えてくれるでしょ。)Modern Family Season10 Episode9 (Putting Down Roots)
シーン解説と心理考察
ヘイリーの話は、The truth is という前置きで始まっています。ここから「実を言うと」と話の本題に入る流れで、her は少しあとに出てくる a doll、つまり人形のことです。人形を轢いて腕を取ってしまった顛末が、今日の出来事として語られます。
which might have been fine if that was the only baby-mangling issue I had today という後半は、腕を取ってしまったことだけなら、まだ救いがあったという言い方です。言い換えれば、今日はそれだけでは済まなかった、という含みが読み取れます。
そのあとに出る I’m not cut out to be a mother. が、この場面の核になります。人形を傷つけた失敗の話から、母親という役割そのものへの自信のなさへと、話が一段大きくなっています。人形の件はあくまで入口で、ヘイリーが口にしているのは役割全体に対する向き不向きの感覚です。
その直後の Then again は、「でもまあ」と話の向きを切り替える言い方です。「本物の赤ちゃんは人形より楽よね?」と、right? と同意を求める形に変わり、直前の自分の言葉をそのまま落とさずに、別の見方を差し込んでいます。気持ちが揺れている様子が、言い直しの形に表れています。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
洋服の型紙から、布を一枚ずつ切り抜いていく手元を思い浮かべてみましょう。型紙とぴったり合う形に切り抜かれた布は、そのまま服の一部として収まります。合わない形で切ってしまうと、どこにもはまりません。
「その役の形に切り抜かれているか」と問う気持ちが、be cut out to be です。ぴったり合えば be cut out、合わなければ not cut out と、型紙の図で覚えられます。
ヘイリーの I’m not cut out to be a mother. は、「母親という型には、自分の形が合わない気がする」という感覚の言葉でした。人形の失敗を経て自分の形を確かめるように出てきた一言なので、場面ごと思い出すと、否定形の響きも一緒に残ります。肯定形で使うときは、反対に「型にぴったり収まっている」姿を思い浮かべれば、意味がぶれません。
例文で覚える「be cut out to be」
職種への向き不向き、相手の素質をほめる場面、仕事を辞めた理由の説明と、場面を変えて3つの例文を見てみましょう。
I realized I’m not cut out to be a manager. I’d rather work on my own.
(自分はマネージャーに向いていないと気づいたんだ。一人で仕事するほうがいい。)
職種への向き不向きを語る場面です。否定形のあとに自分の好みを続けると、向いていない理由まで一緒に伝わります。
She’s cut out to be a teacher. She’s patient and kind.
(彼女は先生に向いているよ。辛抱強くて優しいから。)
相手の素質をほめる場面です。肯定形で使い、理由を後ろに添えると、「向いている」という評価に説得力が出ます。
A: Why did you quit the restaurant job?
B: Honestly, I’m not cut out for working nights.
(A:なんでレストランの仕事を辞めたの?)
(B:正直、夜勤は向いてなかったんだ。)
仕事を辞めた理由を打ち明ける会話です。for の後ろに working nights のような動名詞を置く形で、活動への向き不向きを言えます。
あわせて覚えたい関連表現
have what it takes
(必要な資質や能力を持っている)
be cut out to be は、その役割や職業に合っているかという適性に重点があります。have what it takes は、成功に必要な力が備わっているかに重点がある表現です。
be suited for / to
(〜に適している)
be suited は、人にも物にも使える一般的な言い方です。be cut out to be は、人の素質や性格について、くだけた調子で述べる言い方になります。
be made for
(〜のためにあるようにぴったりだ)
be made for は、「それ専用に作られたほどぴったり」と強く言い切る表現です。be cut out to be は適性の有無を述べる言い方で、否定形でも使いやすい形です。
Note|能力を問う言い方との違いで見る be cut out to be
be cut out to be は「向いていない」と訳せますが、「できない」とは別の意味を持っています。日本語に直すときは、この違いに気をつけると誤解を避けられます。
比べてみると分かりやすくなります。I can’t be a manager. は、「マネージャーにはなれない」という、可能かどうかの話です。I’m not good at managing. は、「管理するのは得意ではない」という、能力や腕前の話です。これに対して I’m not cut out to be a manager. は、「マネージャーという役割は自分の性格や素質に合っていない」という、相性の話になります。能力があっても、合わないと感じることはあります。
劇中のヘイリーの I’m not cut out to be a mother. も、母親としてできる、できないを言っているのではなく、母親という役割が自分に合っているかどうかへの不安の言葉です。人形の失敗と結びついた形で出てきた、役割全体に対する向き不向きの感覚です。
「向いていない」の一言に、「できない」と「合わない」の二つの意味が混ざりやすいので、英語では別の表現で言い分けます。
まとめ|できるかどうかではなく、合うかどうかを言う一言
be cut out to be は、生まれつきの素質や性格が、役割や職業に合っているかを述べる表現です。否定形なら「向いていない」「柄じゃない」、for を使えば後ろに動名詞も置けます。
職種の向き不向きを語るとき、人の素質をほめるとき、続かなかった仕事の理由を説明するときなど、適性を伝えたい場面で出番があります。能力の有無を言う表現とは、軸がずれている点が特徴です。
ヘイリーの I’m not cut out to be a mother. には、人形の出来事から役割全体の向き不向きへと、話が広がっていく流れが表れています。


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