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『モダンファミリー』シーズン3第22話では、家族で出かけた一日のあいだ、リリーにつけたひもの呼び方をめぐって、キャメロンとミッチェルのやり取りが何度もくり返されます。キャメロンは聞こえのいい名前で呼び、ミッチェルは身もふたもない一語で言い直します。
同じ物を別の言葉で呼び合う応酬には、相手の言い方を訂正するときの英語がそろっています。呼び名の変化を追いながら見ていきます。
「child safety tether」と「leash」の言い直し
一行が歩き出そうとしたところで、キャメロンが全員を呼び止めます。リリーの様子を見たグロリアの質問から、呼び名をめぐるやり取りが始まります。
Gloria: Is that a leash?
(それ、リードじゃないの?)Cameron: No, it’s a child safety tether.
(違うわ、子ども用の安全ベルトよ。)Cameron: This way, sweetie.
(こっちよ、おチビちゃん。)Mitchell: It– it’s a leash.
(そ、それはリードだよ。)Mitchell: Don’t– don’t judge us.
(き、決めつけないでくれ。)Modern Family Season3 Episode22 (Disneyland)
leash は犬などをつなぐ「リード、引きひも」を指す日常語です。キャメロンの child safety tether は、child(子ども)、safety(安全)、tether(つなぎひも)を重ねた、目的を前面に出した呼び方です。グロリアの Is that a ~? に No, it’s a ~. と答えるのは、相手の言葉を否定して自分の呼び名に置き換える形で、そこへミッチェルが It’s a ~. とさらに言い直します。三者三様の短い文で、同じ物の呼び方が行き来しているのが分かります。
Don’t judge us. の judge は「裁く」から転じて、「よく知らないまま悪く決めつける」という意味になります。ミッチェルは言い直した直後にこの一言を添えていて、呼び名を認めることと相手への頼みごとを、短い2文で続けて言い切る形になっています。
このあと2人は、リリーについてこう説明します。
Cameron: We have a runner.
(うちの子は走り出しちゃうタイプなの。)Mitchell: Lily is going through a phase— at least Oh, we hope it’s a phase.
(リリーは今そういう時期なんだ。少なくとも……いや、一時的なものだといいんだけど。)Cameron: She bolts every chance she gets.
(隙さえあれば駆け出しちゃうのよ。)Cameron: So we had no choice to put her on a child safety tether.
(だから子ども用の安全ベルトをつけるしかなかったの。)Mitchell: It’s a leash.
(リードだよ。)Mitchell: And we did have a choice.
(それに、ほかの選択肢もちゃんとあった。)Modern Family Season3 Episode22 (Disneyland)
a runner はここでは「すぐ走り出してしまう子」、go through a phase は「一時的にそういう時期を過ごす」、bolt は「急に駆け出す」という意味です。ミッチェルの we did have a choice は、助動詞 did を足して「実際には選択肢はあった」と強める言い方です。キャメロンの had no choice をそのまま打ち消す返しになっているのが見どころです。
自分の呼び名で声をかけるキャメロン
しばらくして、キャメロンは似たようなひもを使う女性を見つけ、話しかけます。
Cameron: Well, well, well.
(あらあら。)Cameron: What do you know? Another caring parent with a child safety tether.
(まあ見て! 子ども用の安全ベルトを使ってる、子ども思いの親がもう一人いるわ。)Cameron: See? We’re not the only people who use them.
(ほらね? 使ってるのは私たちだけじゃないのよ。)Cameron: Hi! Aren’t they adorable?
(こんにちは! この子たち、かわいいわよね?)Woman: Oh, and look at your cutie!
(まあ、そちらのおチビさんもかわいい!)Cameron: Oh, well, yes.
(あら、まあ、そうね。)Modern Family Season3 Episode22 (Disneyland)
Well, well, well. は、思いがけない物を見つけたときの「おやおや」にあたる一言です。What do you know? も疑問文の形をとっていますが、答えを求めているわけではなく、「これは驚いた」という感嘆の決まり文句です。キャメロンはここでも child safety tether という自分の呼び名を使い、仲間を見つけたという気持ちを言葉にしています。
ところが会話が進むと、女性は自分の連れに「Rex, gentle.」と声をかけ、ミッチェルが「his name’s Rex, huh?」とその名前を確かめます。キャメロンが同じ呼び名でくくった相手のひもの先が何だったのかは、この名前をめぐるやり取りで観る側に伝わる仕掛けです。呼び名ひとつで場面の見え方が変わる、この回らしい流れと言えます。
最後は誰もが「leash」と呼ぶ
別の場面で、ミッチェルはリリーからひもを外すことにします。
Mitchell: All right, that’s it.
(よし、もういい。)Mitchell: Lily, I’m gonna take off this leash.
(リリー、このリードを外すよ。)Cameron: I think it’s a mistake.
(それは間違いだと思うわ。)Mitchell: But I don’t want you to run away, ‘cause that would be very, very unsafe, and if we lost you, you’d be very scared, and we’d be very sad.
(でも走っていっちゃだめだよ。すごく危ないし、もしはぐれたら、リリーはすごく怖いし、僕たちもすごく悲しいからね。)Mitchell: Okay?
(いい?)Lily: Okay.
(いいよ。)Mitchell: All right.
(よし。)Modern Family Season3 Episode22 (Disneyland)
That’s it. は「それで全部だ」のほかに、「もう決めた、ここまでだ」と区切りをつける言い方としても使われます。I think it’s a mistake. は、I think を前に置くことで、反対の意見を少しやわらげて伝える形です。
ミッチェルがここでも this leash と呼んでいる点は、最初の言い直しと一貫しています。リリーに向けた長い一文も、unsafe、scared、sad と気持ちを表す語を並べて、なぜ走ってはいけないかを幼い相手に分かる言葉で伝える組み立てです。この直後、リリーは声を上げて駆け出してしまいます。
リリーをつかまえたあと、ミッチェルはジェイに打ち明けます。
Mitchell: I don’t know what to do.
(どうしたらいいか分からないよ。)Jay: Well, the leash is not the answer.
(まあ、リードは答えじゃないな。)Jay: You want my help?
(手を貸してほしいか?)Mitchell: Yes, please!
(うん、お願い!)Jay: ‘Cause I can fix this for you in about two minutes.
(俺なら2分くらいで片づけてやれるぞ。)Modern Family Season3 Episode22 (Disneyland)
~ is not the answer は「〜では解決しない」という意味で、ある手段をきっぱり退けるときの言い方です。ジェイも迷わず leash と呼んでいて、キャメロンの呼び名は家族の中では広まらなかったことが分かります。
まとめ|呼び名を言い直す英語
Is that a ~?、No, it’s a ~.、It’s a ~. と、同じ物の呼び名を行き来させる短い文の応酬に、did have の強調や That’s it.、I think it’s a mistake. が加わります。呼び方の違いに注目すると、会話の立場の違いまで見えてきます。
ひもの呼び名が変わるたびの言い回しを追いながら観ると、この回の会話がいっそう立体的に見えてきます。
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