海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『モダンファミリー』シーズン7第1話では、仕事を失ったあと、のんびりした毎日を送るミッチェルに、キャメロンがあの手この手で働きかけます。ただし、キャメロン自身は「仕事に就いて」と自分の口からは言えないと考えています。
言いにくいことを伝えるとき、英語でも言い方はひとつではありません。事実だけを並べる、冗談めかして返す、ほかの人の口を借りるなど、遠回しな伝え方を順に見ていきます。
事実だけを言う「So, you didn’t ~」と皮肉の返し
最初の場面で、キャメロンはミッチェルにこう声をかけます。
Cameron: So, you didn’t go grocery shopping today.
(で、今日は買い出しに行かなかったんだね。)Mitchell: I am gonna go, but after yoga.
(行くよ、ヨガのあとでね。)Mitchell: Hey hey, you should come with me, ‘cause you seem really tense.
(ねえねえ、君も一緒に来なよ。すごくピリピリしてるみたいだから。)Cameron: Oh, well, maybe they have a five-minute class I could sneak in between football camp and driver’s ed?
(ああ、そうだね、フットボールキャンプと運転教習のあいだに滑り込める、5分のクラスでもあればね?)Modern Family Season7 Episode1 (Summer Lovin’)
So, you didn’t ~. は、文の形は事実の確認ですが、文頭の So, によって「それで?」と相手の説明を促す響きが加わります。責める言葉を使わずに、相手に気づいてもらう言い方と言えます。You didn’t ~, did you? のように付加疑問にすると確認の色が強まり、So, で始めると、続きを相手に委ねる響きが残ります。
ミッチェルの you seem really tense は、相手の様子を気づかう誘い文句です。それに対するキャメロンの返しは、文の形こそ「〜があればいいけど」という提案ですが、実際には自分の予定が詰まっていることを伝えています。sneak in は「こっそり入れ込む、合間に滑り込ませる」という句動詞で、between A and B と組み合わせると、予定の隙間の狭さが伝わります。
このように、表向きの意味と言いたいことがずれた返しは、英語では sarcasm(皮肉)と呼ばれます。疑問文の形で返すと、皮肉として響きやすくなることもあります。
「I couldn’t be the one to ~」と、ほかの人に頼る
続いてキャメロンは、ミッチェルについてこう話します。
Cameron: Mitchell really embraced this whole “take a little break” thing far more than I expected.
(ミッチェルったら、「ちょっと休憩」ってやつを、僕の予想よりずっと満喫してるんだ。)Cameron: But for years, he supported both of us while I pursued my passions photography, hip-hop dancing, fox hunting.
(でも何年も、僕が写真やヒップホップダンスやキツネ狩りに夢中になってるあいだ、ミッチェルが2人を支えてくれた。)Cameron: So I couldn’t be the one to tell him to get a job.
(だから、仕事に就けって言う役は、僕にはできなかった。)Cameron: But maybe somebody else could.
(でも、ほかの誰かならできるかもしれない。)Modern Family Season7 Episode1 (Summer Lovin’)
be the one to ~ は「〜する役を担う人になる」という言い方で、I couldn’t be the one to ~ は「自分がその役になるわけにはいかない」という意味です。言いたいことは同じでも、誰の口から言うかが大事な場面で使われる形です。
その「ほかの誰か」として、キャメロンが声をかけたのがチャーリーです。
Cameron: Hey, Charlie? It’s it’s, uh, Cameron.
(やあ、チャーリー? えっと、キャメロンだけど。)Cameron: My husband Mitchell used to work for you.
(夫のミッチェルが、以前あなたのところで働いてたんだ。)Charlie Bingham: Oh! I remember you.
(おお! 覚えてるよ。)Charlie Bingham: Yeah, what a nice surprise.
(いやあ、うれしい驚きだね。)Cameron: I know! Crazy!
(だよね! 信じられないよね!)Modern Family Season7 Episode1 (Summer Lovin’)
It’s ~. は「〜です」と名乗るときの口語的な形で、used to work for you と関係を添えると、相手が思い出す手がかりとして働きます。used to ~ は「以前は〜していた」と、今は違うことを含む言い方です。
会話が進むと、キャメロンはミッチェルの近況をこう伝えます。
Charlie Bingham: Hey, how is Mitchell?
(ところで、ミッチェルは元気?)Cameron: He’s fine.
(元気だよ。)Cameron: Actually, he’s fielding a few job offers right now, and he’s running into problems because he keeps comparing everyone to you.
(実はね、今いくつか仕事の誘いに対応してるんだけど、誰を見てもあなたと比べちゃうせいで行き詰まってるんだ。)— Huh.
(へえ。)Cameron: Sometimes I think the only thing that’s gonna make him feel better is if you offered him another job.
(ときどき思うんだ。彼の気が晴れるとしたら、あなたがもう一度仕事を出してくれることだけなんじゃないかって。)Modern Family Season7 Episode1 (Summer Lovin’)
field は動詞で「(質問や申し出を)さばく」という意味があり、field job offers で「仕事の誘いに対応する」となります。キャメロンはここで、ミッチェルの近況を実際より前向きに話しています。最後の Sometimes I think ~ は「ときどき思うんだけど」と自分の感想の形をとり、頼みごとそのものを和らげる前置きとして働いています。
満足を認めて、別の道をほのめかす
別の場面では、絵を描くミッチェルにチャーリーが話しかけ、ミッチェルが答えます。そこにキャメロンがひと言加えます。
Charlie Bingham: How do you decide what to paint?
(何を描くかは、どうやって決めてるんだい?)Mitchell: You know, I just see these images in my head, uh, things I want to see, places I want to go, uh, how much paint I have left.
(そうだね、頭の中にイメージが浮かぶんだ。見たいものとか、行きたい場所とか、あと絵の具がどれだけ残ってるかとか。)Mitchell: Um, sometimes I just tap into my emotions, and I see where that takes me.
(ときどき、自分の感情に身を任せて、それがどこに向かうか見てみるんだ。)Mitchell: And you cannot imagine the sense of contentment.
(この満ち足りた感じは、想像もつかないと思うよ。)Cameron: Imagine how much more satisfying it would be after a good day’s work.
(一日しっかり働いたあとなら、どれだけもっと満たされるか想像してみてよ。)Modern Family Season7 Episode1 (Summer Lovin’)
ミッチェルの you cannot imagine ~ を受けて、キャメロンは同じ imagine を使い、Imagine how much more ~ it would be after ~. と返します。相手の満足を否定せずに、「仕事のあとならもっと」と比べる形で別の道を示しているのが見どころです。a good day’s work は「一日分のしっかりした仕事」で、仕事を勧める言葉を使わずに、働くことの良さだけを差し出しています。相手の言葉をそのまま借りて返すと、押しつけがましさが薄まる点も参考にできます。
ミッチェルの側の言葉にも注目すると、tap into ~ は「(内にあるものを)引き出す、活用する」という句動詞で、tap into my emotions は「自分の感情を手がかりにする」という意味になります。see where that takes me は「それがどこへ連れていくか見てみる」で、成り行きに任せる姿勢を表します。the sense of contentment は「満ち足りた感覚」です。
この3つの表現がそろうことで、ミッチェルが今の暮らしに満足していることがはっきり伝わります。キャメロンのひと言は、その満足を受け止めたうえで比べる形の返しになっていると読み取れます。
まとめ|遠回しに働きかける英語
So, you didn’t ~. で事実だけを示す言い方、I couldn’t be the one to ~ で自分からは言えない事情を表す形、Imagine how much more ~ で相手の満足を認めつつ別の道を示す返し。どれも、はっきり言わずに気持ちを伝える工夫が詰まった英語と言えます。
『モダンファミリー』の夫婦の会話を観ながら、言葉の裏にある気持ちにも耳を傾けてみると、英語の幅がさらに広がります。
ミッチェルが休みのあとに再開しにくい気持ちを話す場面や、プレスクール探しの英語は、同じ回のほかのコラムでも扱っています。


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