海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
期待していることほど、口に出す直前に、ふと言葉を飲み込みたくなります。話したとたんに、うまくいきそうな流れが崩れてしまいそうな気がするからです。
そんなときに添える前置きとして使えるのが「jinx it」です。『モダンファミリー』シーズン10第19話の前半、マニーが入会を目指す団体について話す場面から、一緒に見ていきましょう。
「jinx it」の意味とニュアンス
jinx it
意味:(口に出して)縁起を悪くする、運を逃す
jinx itは、うまくいきそうなことを先に口にしたせいで、かえって悪い結果を呼び込んでしまう、という感覚を表す口語表現です。jinxは「縁起の悪さ」や「縁起の悪いものをもたらすこと」を指す語で、動詞として使うと「縁起を悪くする、運を逃させる」という意味になります。itの部分には、うまくいきそうな物事が入ります。
この表現が登場しやすい形は、I don’t want to jinx it, but …です。直訳すると「それの運を逃させたくはないけれど、」で、「まだ決まったわけではないけれど」「口に出すのは控えたいけれど」という前置きになります。前置きを置いてから期待を話すことで、「当てにしすぎているわけではない」という慎重な気持ちを示せます。
もう一つの形は、相手に向けて使うDon’t jinx it.やYou’ll jinx it.です。順調なことを話題にしそうな相手を、「それを言うと運が逃げるよ」と止める言い方になります。どちらの形でも、中心になるのは「口にしたことが原因で運が逃げる」という考え方です。
日本語にするときは、「縁起でもないことは言いたくないけど」と訳すと、前置きとしてのつながりが自然です。「運を逃したくないんだけど」と言い換えても、意味は大きく変わりません。
【ここがポイント!】
- 「口にしたせいで運を逃す」という感覚を表し、期待を話す前の前置きとして使える
- I don’t want to jinx it, but …の形でひとまとまりとして覚えると、会話で使いやすい
- Don’t jinx it.のように、相手を止める一言としても使える
『モダンファミリー』S10E19のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
入会を目指す団体の課題について、マニーが話している場面です。マニーが首に着けている襟についてグロリアが感想を言い、マニーが課題を説明し、ジェイが口をはさみます。最後にマニーが期待を語る一言の前置きとして、今回の表現が登場します。
Gloria: I don’t hate it. I think it makes your head look like one of those fancy cookies.
(悪くないわよ。頭が、おしゃれなクッキーみたいに見えるわ。)Manny: I also have to recite several Shakespearean monologues and festoon our dining hall with some bawdy bunting.
(シェイクスピアの独白をいくつか暗唱して、食堂を下品な飾り旗で飾りつけなきゃいけないんだ。)Jay: What happened to hazing? It used to be macho stuff, you know, like making a guy drink a shot out of your belly button or passing an orange around only using your butt cheeks.
(しごきはどうなったんだ? 昔は男らしいことをやらされたもんだろ、ほら、ヘソから酒を一杯飲ませるとか、オレンジをお尻だけで回していくとかな。)Manny: Look. It’s one of the most selective groups on campus. I don’t want to jinx it, but a week from now, I could be learning the steps of the secret minuet.
(いいかい。キャンパスでもいちばん選抜が厳しい団体の一つなんだ。縁起でもないことは言いたくないけど、1週間後には、秘密のメヌエットのステップを習っているかもしれないよ。)Modern Family Season10 Episode19 (Yes-Woman)
シーン解説と心理考察
グロリアのI don’t hate it.は、「嫌いではない」という控えめな言い方です。itは、マニーが首に着けている襟を指しています。続くI think it makes your head look like one of those fancy cookies.は、makes A look B(AをBのように見せる)の形で、頭がおしゃれなクッキーのように見えると、軽い冗談を添えた感想になっています。
マニーのI also have to …は、「ほかにも〜しなければならない」という意味で、入会のために課されていることを並べています。recite(暗唱する)とfestoon A with B(AをBで飾る)の二つを、andでつないだ形です。our dining hallは、マニーたちが使う食堂のことです。
ジェイは、ここで昔と今を比べて、物足りなさをぼやくように皮肉を挟みます。What happened to …?は「〜はどうなったんだ」と、あるはずのものが見当たらないと嘆く聞き方です。この一言のあと、話はマニーの団体の説明へと戻ります。
マニーのLook.は、「いいかい」と相手の注意を引く切り出しです。It’s one of the most selective groups on campus.は、one of the most + 形容詞 + 複数形の名詞で、「最も〜な〜の一つ」という言い方になります。selectiveは、入れる人を厳しく選ぶことを表します。選抜の厳しさを先に述べているので、これから話すことが大きな期待であることが伝わってきます。
そのあとのI don’t want to jinx it, but a week from now, I could be learning the steps of the secret minuet.が、今回の表現を含む一言です。a week from nowは「今から1週間後」、could be learningは「〜しているかもしれない」という見込みを表します。itは、入会がうまく運びそうな見通しを指しています。期待を口にする前に、運を逃したくないという前置きを置くことで、うれしさを抑えながら話している様子が伝わります。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
ぴんと張った糸にたとえてみます。うまくいきそうな話を口にした瞬間に、その糸がぷつんと切れてしまう、という見立てです。話さなければ切れなかったはずの運が逃げる、というのがjinx itの感覚です。
マニーの前置きも、この糸を切らないための用心でした。I don’t want to jinx it, butを、ひとまとまりの決まり文句として声に出して覚えておくと、期待を話すときの切り出しに使えます。
例文で覚える「jinx it」
jinx itは、スポーツ、仕事、日常の会話などで、期待を話す前に使えます。次の例文は、前置きの形、相手を止める形、往復会話の順に並べています。
I don’t want to jinx it, but I think we’re going to win this game.
(縁起でもないことは言いたくないけど、この試合は勝てそうな気がします。)
試合の展開に期待しながら話す場面です。butのあとに、口にしたい期待の中身が来ます。
Don’t say that out loud, or you’ll jinx it!
(それを口に出さないで。運が逃げちゃうよ!)
順調なことを言いかけた相手を止める場面です。or you’ll jinx itが、止める理由になっています。
A: Do you think you’ll get the job?
B: I don’t want to jinx it, so I’d rather not say.
(A:その仕事、決まりそう?)
(B:運を逃したくないから、今は言わないでおくよ。)
結果を待つ間の往復会話です。前置きのbutではなくsoでつなぐと、「だから話さない」という判断になります。
あわせて覚えたい関連表現
knock on wood
(悪いことが起きないよう願って、木を叩く)
knock on woodは、悪いことが起きないよう願って言う決まり文句です。jinx itは、口にしたことで運を逃すという結果のほうに注目します。
tempt fate
(運命を試す、危ない橋を渡る)
tempt fateは、わざわざ不運を招くような言動をすることです。jinx itは、期待を口にした結果として運を逃す感覚を表します。
keep one’s fingers crossed
(うまくいくよう祈る)
keep one’s fingers crossedは、うまくいくよう祈る気持ちを表します。jinx itが運を逃す側に注目するのに対して、こちらは運を呼び込みたい気持ちを表す言い方です。
Note|前置きにも制止にも使える、jinx itの形の幅
jinx itは、同じ「口にして運を逃す」という考え方から、使う場面によって三つの形に分かれます。形ごとに、誰に向けた言葉なのかが変わります。
一つ目は、自分に向けた前置きです。I don’t want to jinx it, but …の形で、期待を話す直前に置きます。マニーの発言はこの形で、前置きのあとに期待の中身が続いています。話し手が自分の運を気にかけている点が特徴です。
二つ目は、相手を止める一言です。Don’t jinx it.やYou’ll jinx it.の形で、順調なことを言いそうな相手に向けます。前置きで運を気にかけるのは話し手自身ですが、制止では、話し手が聞き手の言動を気にかけています。
三つ目は、結果が出たあとの冗談です。悪い結果になったあとで、You jinxed it!と言えば、「君が言ったせいだ」と軽くとがめる言い方になります。過去形のjinxedになるので、結果が出る前の前置きや制止とは、時間の位置が違います。
この三つは、前置き、制止、結果のあとの冗談、という順に並べると整理できます。同じjinx itでも、自分に向けるのか、相手に向けるのか、結果が出たあとなのかを見分ければ、意味を取り違えません。
まとめ|期待を話す前の一言として、運を気にかける
jinx itは、口にしたせいで運を逃すという感覚を表す口語表現です。I don’t want to jinx it, but …の形で、期待を話す前の前置きとして使えます。
似た表現のなかでjinx itの特徴を一言で言えば、「口にしたこと」と「運が逃げること」が、原因と結果としてつながっている点です。
選抜の厳しい団体への期待を話す前に、マニーはまずこの前置きを置き、そのあとで1週間後の見込みを口にしています。期待が大きいほど、先にこの一言を置く意味が見えてきます。


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