海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
特定の人の言動が頭から離れず、思い出すたびにじわじわとイライラさせられる、そんな相手が一人くらいいませんか。
そんな気持ちを言い表す「get under one’s skin」を、『ビッグバン★セオリー』シーズン10第1話の中盤、式を欠席して帰ろうとするレナードの母ベバリーを、ペニーが巧みに引き止めるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「get under one’s skin」の意味とニュアンス
get under one’s skin
意味:人をいらだたせる、神経に障る
直訳は「人の皮膚の下に入り込む」です。皮膚の下に異物やトゲが入り込んだときの、あのチクチク・ムズムズして取れない不快感が語源とされています。
そこから転じて、相手の言動が頭にこびりついて離れず、じわじわと苛立たせる感覚を表すようになりました。一瞬カッとなる怒りというより、「気になって仕方がない」「思い出すたびに腹が立つ」という、持続的でしつこい苛立ちを言い表すのが特徴です。one’s の部分には my / your / his などが入り、誰が苛立っているかで形が変わります。なお文脈によっては「(良い意味で)心に深く入り込む、夢中にさせる」という逆の意味で使われることもある、表情の幅が広い表現です。
【ここがポイント!】
- 核は「皮膚の下のムズムズ」がそのまま苛立ちになるイメージ
- 一瞬の怒りより「じわじわ・しつこく」効いてくるのが持ち味
- 文脈次第で「夢中にさせる」と真逆の意味にもなる、油断できない一言
『ビッグバン★セオリー』S10E01のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
元夫への不満から式を欠席して帰ると言い張るベバリーを、息子レナードが情に訴えて引き止めようとします。しかし彼女の心を動かしたのは、続くペニーのひと言でした。プライドの高いベバリーの急所を突く、見事な殺し文句です。
Leonard: Mother, Penny and I really want you to be part of this. Please stay.
(母さん、ペニーと僕は本当にあなたに参加してほしいんだ。お願いだから残って。)Penny: Yeah, plus if you leave, Alfred will know he got under your skin.
(そうよ、それに帰ったら、自分があなたをイラつかせたってアルフレッドに気づかれちゃうわ。)Beverley: Well, we can’t have that.
(あら、それは困るわね。)The Big Bang Theory Season10 Episode1(The Conjugal Conjecture)
シーン解説と心理考察
レナードが「お願いだから」と誠実に訴えても動かなかったベバリーが、ペニーの一言であっさり態度を変えるところに、この場面の面白さが表れています。著名な精神科医であるベバリーが、論理ではなくプライドで動く人物だと見抜いたペニーの観察眼が光ります。
ペニーは「帰る=アルフレッドにあなたが動揺させられたと悟られること」という構図を示し、ベバリーの対抗心に火をつけています。残ることが自分の意思ではなく「相手に勝ちを譲らないため」にすり替わる、その心理の動きが会話の温度を変えています。「それは困るわね」という短い返しに、負けず嫌いな本性がにじむ場面です。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
虫やトゲが皮膚の下に入り込んで、掻いても掻いても取れず、ずっとムズムズし続ける感覚を思い浮かべてみてください。その「奥に入り込んで、取り除けないしつこさ」が、そのまま「人にイライラさせられて、忘れられない」気持ちに重なります。
このシーンでは、ペニーが「帰ったらアルフレッドの思うつぼ」とベバリーの神経をくすぐる形で使っていました。相手の言動が皮膚の下にもぐり込んで、ちくちくと刺激し続ける——そのビジュアルと一緒に覚えると、意味がしっかり根を張ります。
例文で覚える「get under one’s skin」
日常の小さなストレスから、相手をわざと苛立たせる場面まで、幅広く使えるフレーズです。3つの例文で感覚を掴んでいきましょう。
My coworker’s constant humming really gets under my skin.
(同僚がずっと鼻歌を歌っているのが、本当に神経に障る。)
職場の地味なストレスを愚痴る場面です。「大事ではないけれど、じわじわ効いてくる」苛立ちにぴったりはまります。
She knows exactly how to get under her brother’s skin.
(彼女は弟をイラつかせる方法を完全に心得ている。)
わざと相手の神経を逆なでする様子を描いています。know how to と組み合わせると「苛立たせるのが上手い」という意味になります。
A: Just ignore his comments. He’s only trying to provoke you.
B: I know, but somehow they always get under my skin.
(A:あいつの言葉なんか無視しなよ。挑発したいだけなんだから。)
(B:分かってるんだけど、なぜかいつも神経に障るんだよね。)
挑発に乗りそうな相手を落ち着かせる会話です。「頭では分かっていても気になってしまう」という、このフレーズらしいしつこさが出ています。
あわせて覚えたい関連表現
get on someone’s nerves
(人の神経に障る)
ほぼ同義で、よりストレートな言い方です。get under one’s skin の方は「奥深くまで入り込む」分、根深さや「忘れられなさ」の含みが出ることがあります。
rub someone the wrong way
(人をなんとなく不快にさせる、カチンとさせる)
第一印象や言動が「どうも癇に障る」感覚です。get under one’s skin が繰り返し・継続的に苛立たせるのに対し、こちらは瞬間的な引っかかりを表します。
drive someone crazy
(人をひどくイライラさせる、おかしくさせる)
「気が狂いそうなほど」という強い苛立ちです。get under one’s skin の「じわじわ」よりも、感情の振れ幅が大きいときに使われます。
Note|「イライラ」と「夢中」が同じ表現になる不思議
英語の苛立ち系イディオムの中でも、get under one’s skin は少し変わった性格を持っています。同じ表現が、正反対の感情まで表してしまうのです。
基本の意味は「人を苛立たせる」ですが、文脈次第で「(誰かが)心に深く入り込んで離れない=夢中にさせる」というポジティブな意味にもなります。たとえば古いジャズのスタンダードナンバーに “I’ve Got You Under My Skin”(邦題「あなたはしっかり私のもの」)という有名な曲があり、ここでの under my skin は「あなたのことが頭から離れない、すっかり夢中」という熱烈な愛情を指しています。苛立ちも恋情も、どちらも「相手が自分の内側に入り込んで、取り除けない」という一点で共通しているわけです。だからこそ同じ皮膚の比喩が、真逆の感情を背負えるのですね。聞き手は、トーンや前後の文脈で「イライラ」なのか「夢中」なのかを読み分けています。
このフレーズに出会ったときは、まず「相手が内側に入り込んで離れない」というコアを押さえ、それが苛立ちに転ぶのか愛情に転ぶのかを、文脈で見極めるのがコツです。
ひとつの皮膚の下に、苛立ちと恋情が同居しています。
まとめ|ベバリーのプライドに学ぶ「神経に障る」の一言
get under one’s skin は、相手の言動が頭から離れず、じわじわと苛立たせる感覚を表すイディオムです。皮膚の下に入り込んだトゲのような、しつこく続く不快感がそのコアにあります。
この一言を知っておくと、「ムカつく」を漠然と伝えるのではなく、「気になって仕方がない」という持続的な苛立ちのニュアンスまで描けるようになります。文脈によっては「夢中にさせる」と逆の意味にもなる、奥行きのある表現です。
ペニーにプライドをくすぐられて思わず残ってしまうベバリーの姿とともに、神経の機微を映す言い回しとして、表現の引き出しに加えてみてください。


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