「can’t bring oneself to」の意味と使い方|『ホワイトカラー』S01E11で学ぶ英会話

「can't bring oneself to」の意味と使い方を解説

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

思い出の詰まった品を、そろそろ手放そうと心では決めていたのに、いざその場面になるとどうしても踏ん切りがつかなかった、ということはありませんか。

そんな心の動きにぴったりのcan’t bring oneself toを、『ホワイトカラー』シーズン1第11話の序盤、元詐欺師ニールと旧知の仲である女性アレックスが、長年気にかけてきた思い出の品について本音をこぼす場面から、一緒に見ていきましょう。ニールとアレックスの再会という個人的なやり取りだからこそ、素の感情がふと表に出る瞬間でもあります。

目次

「can’t bring oneself to」の意味とニュアンス

can’t bring oneself to
意味:どうしても〜する気になれない、〜するに忍びない

can’t bring oneself toは、理屈では分かっていても、感情的な抵抗があって行動に踏み切れない状態を表す口語表現です。bringには「持っていく」「至らせる」という意味があり、oneselfを目的語に置くことで「自分自身をその行動に至らせる」というニュアンスが生まれます。それができない、つまり心が体を動かすところまで至らない、という構造がこの表現の核にあります。単に「〜したくない」という好みの問題ではなく、罪悪感や愛着、後ろめたさといった感情がブレーキとなって、頭では正しいと分かっている行動を妨げている状況で使われるのが特徴です。別れを告げる、大切な物を処分する、悪い知らせを伝えるといった、心理的なハードルの高い場面でよく登場します。日常会話でもフォーマルな文脈でも自然に使える汎用性の高い表現で、感情の機微を丁寧に伝えたいときに重宝します。

【ここがポイント!】

  • 核は「行動に至らせる自分」を作れない、心と体のギャップを表す感覚
  • 罪悪感や愛着など、感情的なブレーキがかかる場面で使われやすい表現
  • can’tやcouldn’tなど否定形で使われることがほとんどのフレーズ

『ホワイトカラー』S01E11のシーンで見てみよう

意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。

エピソードの序盤、ニールは長年気にかけてきた音楽箱の行方を確かめようと、旧知の女性アレックスのもとを訪ねます。かつて二人で探し続けたその音楽箱について力を貸してほしいと持ちかけても、アレックスの返事はすげないものでした。ニールはさらに、彼女が今も箱の欠片を肌身離さず持ち歩いていることを指摘します。

Neal: Maybe it will this time.
(今度は、うまくいくかもしれないよ。)

Alex: Sorry. I can’t help you. I gave up on that a long time ago.
(悪いけど、力にはなれないわ。とうの昔にあきらめたの。)

Neal: Oh, yeah? Then why do you still carry this in your purse? It’s a piece from the box, right?
(そう? じゃあ、なぜ今もそれをバッグに入れて持ち歩いてるんだ? 箱の欠片だろう?)

Alex: Don’t fault me for nostalgia. I couldn’t bring myself to part with it.
(懐かしさくらい、大目に見てちょうだい。どうしても手放す気になれなかったの。)

White Collar Season1 Episode11 (Home Invasion)

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シーン解説と心理考察

音楽箱への興味はとうに手放したと言い切っていたアレックスが、バッグの中の小さな欠片について問い詰められた瞬間、それまでの余裕のある態度から一転、素っ気ない一言で本音をこぼす様子が見どころです。力を貸すつもりはないと突き放す駆け引きの態度と、思い出の品を今も手放せずにいる私的な弱さとの落差が、この短い一言に凝縮されています。ニールに指摘されるまでその矛盾を隠し続けていたことからも、彼女自身が自分の未練を認めたくなかった様子が伝わってきます。かつて共に追いかけた宝物が、今では実利よりも感傷の対象になっていることが読み取れる瞬間です。強気な物言いの多いキャラクターだからこそ、この一言に滲むわずかな弱さが際立ちます。

『ホワイトカラー』流・覚え方のコツ

can’t bring oneself toを覚えるときは、一歩を踏み出せずにその場に張り付いた足をイメージしてみましょう。頭ではゴールまでの道筋が見えているのに、足だけが動かない、という感覚です。アレックスが音楽箱の欠片を手放せずにいたように、理屈と気持ちが引っ張り合う状況を思い浮かべると、bringという「連れていく」動詞の持つ物理的な手触りが記憶に残ります。自分の心を、行きたくない方向へなんとか連れていこうとしてもうまくいかない、そんな綱引きのイメージです。

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例文で覚える「can’t bring oneself to」

can’t bring oneself toは、別れや処分、告白といった感情的なハードルの高い場面で幅広く使えます。日常のちょっとした片付けから、ビジネスの気まずいやり取りまで応用範囲が広い表現です。3つの例文でその使い方を見ていきましょう。

I can’t bring myself to throw away his old letters.
(彼からもらった昔の手紙を、どうしても捨てる気になれない。)
思い出の品を前にして、頭では整理すべきと分かっていても手が止まってしまう場面です。日常生活の片付けや断捨離の話題で自然に使える表現で、物への未練を率直に語れる言い回しでもあります。

She couldn’t bring herself to tell him the bad news.
(彼女はどうしても彼に悪い知らせを伝える気になれなかった。)
相手を傷つけると分かっている知らせを前に、言葉を飲み込んでしまう場面です。人間関係の気まずさを説明する場面でよく使われ、伝える側の躊躇を丁寧にすくい取ってくれます。

A: Have you told your boss you’re quitting?
B: Not yet. I just can’t bring myself to do it.
(A:上司に辞めることは伝えた?)
(B:まだなの。どうしてもその気になれなくて。)
職場での気まずい報告を先延ばしにしている場面です。ビジネスの会話でも、決断を先送りする心理を軽く伝える言い方として使え、深刻になりすぎずに本音を打ち明けられます。

あわせて覚えたい関連表現

be reluctant to
(〜するのに気が進まない)
can’t bring oneself toが感情的な抵抗の強さを表すのに対し、be reluctant toはより軽い気乗りのなさを表す表現です。行動を完全に妨げるほどではない、日常のちょっとした渋りにも使われることがあります。

can’t help but
(〜せずにはいられない)
can’t bring oneself toが「したいのにできない」抑制のニュアンスなのに対し、can’t help butは「したくないのについやってしまう」衝動を表す、方向性が逆の表現です。感情が理性に勝つ場面で使われる点も対照的なのです。

have the heart to
(〜する気になれる、非情になれる)
can’t bring oneself toとほぼ同じ場面で使える表現で、否定形のdon’t have the heart toは、思いやりに焦点を当てた言い換えとして使えます。相手を思う気持ちが行動を止めているというニュアンスが前面に出てきます。

Note|「bring oneself to」に見る、日本語にはない体の比喩

can’t bring oneself toという言い回しを直訳すると、「自分自身をその行動へ連れていくことができない」という、少し不思議な言い方になります。この体を使った比喩には、日本語にはない発想が隠れています。

日本語で「気が進まない」「する気になれない」と言うとき、主語になるのはたいてい「気持ち」そのものです。一方、英語のbring oneself toでは、「自分」という一人の人間全体を、まるで荷物のように目的地(to以下の行動)へ運ぼうとする構図になっています。頭の中の意志と、それに従わない体という、ふたつの自分が存在しているかのような感覚です。実際、bringには「持参する」「連れてくる」という物理的な移動の意味が根っこにあり、それを目に見えない心の動きに転用しているところに、英語話者らしい発想の飛躍があります。似た構造の表現にはdrag oneself to(気の進まない場所へなんとか自分を引きずっていく)などがあり、英語には「自分を運ぶ」というイメージで心理状態を語る言い回しが複数存在します。

この体の比喩を意識すると、アレックスが音楽箱の欠片を手放せなかった場面も、単なる未練以上の重みを持って見えてきます。頭では手放すべきと分かっていた自分を、最後まで行動へ連れていけなかった、という一歩手前の抵抗が、このフレーズの奥には潜んでいます。

体ごと運ぶという発想は、感情の重さを言葉にする、ひとつの知恵と言えそうです。

まとめ|手放せない気持ちを言い表す一言

can’t bring oneself toは、頭では分かっていても心と体がついていかない、そんなもどかしさを一言で言い表す表現です。理屈と感情のあいだで揺れる場面を説明できる汎用性の高さから、別れ話から日常の片付けまで、幅広い状況で活躍します。ドラマの中でアレックスがこぼした短い一言も、強気なキャラクターの奥にある人間味を垣間見せる瞬間でした。ニールに指摘されるまで頑なに隠していた未練が、たった一言でこぼれ落ちる様子も印象的です。頭では踏ん切りがついているのに、最後の一歩だけがどうしても踏み出せないという感覚。そんな経験を語りたいとき、この表現を会話のレパートリーに加えてみてください。

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