海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
力を貸してもらったつもりが、後になって、その助けそのものが誰かに仕組まれた策略の一部だったと知り、複雑な気持ちになった経験はありませんか。
そんなときに使いたい「set ~ up」を、『ホワイトカラー』シーズン1第11話、囮捜査の標的だった女に正体を尋ねられたニールが、事件の発端そのものを仕組んだのは自分だったと、悪びれもせず打ち明ける場面から、一緒に見ていきましょう。
「set ~ up」の意味とニュアンス
set ~ up
意味:(人を)陥れる、罠にはめる、仕組む
set upは、本来「物を所定の位置に据える、準備を整える」という中立的な意味を持つ動詞句で、set up a meeting(会議を設定する)やset up a tent(テントを張る)のように、日常のさまざまな場面で広く使われます。ここに人を目的語に取り、set someone upという形になると、意味合いは一気に反転します。相手が気づかないうちに罠や仕掛けをあらかじめ用意しておくという、だます・陥れるというニュアンスが前面に出てくるのです。「段取りを整える」という核となる感覚自体は変わらないのに、誰のために、何を目的として準備するのかによって、善意にも悪意にもなる振れ幅の大きい表現と言えます。日常会話では「(恋愛相手を)紹介する、お膳立てする」という前向きな意味で使われることも多く、文脈から善意か悪意かを見極める必要がある表現です。似た形にset the stage for(〜のお膳立てをする)がありますが、こちらは状況や出来事を対象にする表現で、人を対象に取るset someone upほど欺きの含みは強くありません。
【ここがポイント!】
- 核は「準備する」という中立の動詞が、人を目的語に取ると「罠にはめる」へ転じる二面性
- お膳立てから謀略まで、目的語と文脈次第で意味の振れ幅が大きい表現
- 誰が誰のために何を「セットした」のかを読み取るのが理解のコツ
『ホワイトカラー』S01E11のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
五つの翡翠像を巡る事件で、FBIは容疑者ピアースに接近させるため、友人ダンをおとり役としてバーに送り込みます。ところが待ち合わせの席に現れたのはダンではなくニールで、正体を尋ねられた彼は、事件の発端そのものを自ら仕組んだのだとあっさり打ち明けます。
Pierce: Who are you?
(あなた、誰?)Neal: I’m the guy who set you up. The FBI was sitting on Christopher Gray’s house ‘cause I tipped them off.
(君を罠にはめた張本人だよ。FBIがクリストファー・グレイの家に張り込んでいたのは、僕がタレ込んだからさ。)Pierce: And why would you do a stupid thing like that?
(どうしてそんな馬鹿な真似をしたわけ?)Neal: So I could get to these first.
(先にこいつらを手に入れるためだよ。)Pierce: You got Daniel Picah’s? How did you get to it so quickly?
(ダニエル・ピーカーの分も手に入れたの? どうしてそんなに早く?)Neal: Dan just needed a friend.
(ダンにはただ、友達が必要だっただけさ。)White Collar Season1 Episode11 (Home Invasion)
シーン解説と心理考察
「あなた、誰?」という短い問いに対し、ニールは動揺する様子もなく、自分がすべての発端だったことをすぐに認めます。追い詰められた側というより、種明かしを楽しんでいるかのような余裕が伝わってきます。FBIがグレイの家を張っていたのも、ダンをおとりに立てたのも、すべて自分の仕掛けだったという告白には、罪悪感よりも達成感がにじみます。「どうしてそんな馬鹿な真似を?」と問い詰められても、ニールは「先にこいつらを手に入れるためだよ」と目的を淡々と語るだけで、言い訳めいた素振りを見せません。ダンについて聞かれた際の「友達が必要だっただけさ」という一言には、利用した相手への軽い罪悪感と、それでも計画を優先する詐欺師らしい割り切りが同居しています。正体を明かすという通常なら不利な状況を、逆に主導権を握る場面へと変えてみせる駆け引きが、このやり取りの見どころです。
『ホワイトカラー』流・覚え方のコツ
set ~ upを覚えるときは、舞台裏で誰かが小道具や仕掛けをそっと配置していく様子を思い浮かべてみましょう。表舞台に立つ本人は何も知らないまま、その仕掛けの上で動かされているというイメージです。ニールが「君を罠にはめた張本人だよ」と種明かしをした瞬間、それまでの出来事の裏側にあった仕込みが一気に見えてきたように、set someone upという表現も、後から振り返って初めて「あれは仕組まれていたのか」と気づかせる響きを持っています。誰かの行動の裏に、見えない準備があったかもしれないと考えるときの一言として、覚えておくと便利です。
例文で覚える「set ~ up」
set ~ upは、恋愛のお膳立てから犯罪的な罠まで、善意にも悪意にも転ぶ幅の広い表現です。3つの例文で、その振れ幅を確認していきましょう。
My sister tried to set me up with one of her coworkers.
(姉が自分の同僚と、私を引き合わせようとした。)
友人や家族が良かれと思って恋愛のお膳立てをする場面で使われる、日常的でポジティブな用法です。相手のことを思っての行動なので、悪意はまったくありません。
He claimed he was set up by a rival company to take the blame.
(彼は、ライバル企業に罪を着せられるよう仕組まれたと主張した。)
ビジネスの場面で、誰かが意図的に自分に責任を押し付けようとしたと訴えるときの使い方で、悪意を伴う典型例です。
A: Why didn’t you tell me the meeting was actually a performance review?
B: Sorry, I didn’t set you up on purpose. I only found out myself this morning.
(A:あの打ち合わせが実は人事評価だったって、どうして教えてくれなかったの?)
(B:ごめん、わざと仕組んだわけじゃないんだ。僕自身、今朝知ったばかりでさ。)
誤解を招いた側が、悪意はなかったと弁明する場面での使い方で、疑いを晴らしたいときにも役立ちます。
あわせて覚えたい関連表現
frame someone
(人に罪を着せる)
set someone upが「罠を仕込む」という準備段階全体を指す広い表現であるのに対し、frame someoneは無実の人物に具体的な罪を着せるという、より限定的で強い意味を持つ表現です。
trick someone into ~
(人をだまして〜させる)
set someone upが状況そのものを仕込むニュアンスであるのに対し、trick someone into ~は相手に特定の行動を取らせることに焦点があり、対象とする範囲がより狭く具体的です。
set the stage for ~
(〜のお膳立てをする)
人ではなく状況や出来事を目的語に取る表現で、set someone upのような欺きの意味合いは薄く、次に起こることへの準備を中立的に表す点が異なります。
Note|「据える」がなぜ「罠にはめる」に変わるのか
set upという表現が持つ「準備する」という顔と「陥れる」という顔、この二面性はどこから生まれたのでしょうか。
setという動詞は古英語の時代から「物をある場所に置く、据える」という基本的な意味を持ち続けてきました。そこに方向・完了を示す副詞upが加わることで、「きちんと据え付ける」「組み立てて機能する状態にする」という、準備の完了を表す句動詞set upが生まれます。舞台装置を組み立てる、店を開業する、テントを張る――upにはこうした「作業を仕上げて使える状態にする」という感覚が一貫して流れています。この「仕上げる」という感覚が、20世紀初頭のアメリカで、賭博場や暗黒街の隠語の中で転用され始めたのが、人を目的語に取るset someone upです。おとり捜査や詐欺の世界で、相手が気づかないうちに状況や証拠を「仕上げて」おき、その仕込みの上で相手を陥れるという用法が定着し、その後ハードボイルド小説やフィルム・ノワールの台詞を通じて一般の口語表現として広く定着していきました。組み立てるという行為そのものは変わらず、何を、誰のために組み立てるかによって、善意の準備にも悪意の罠にもなるという構造です。
『ホワイトカラー』は、元詐欺師のニールがFBIと組んで捜査に協力するという設定そのものが、正規の手続きと裏社会の駆け引きの境界線上に成り立つドラマです。ニールが「君を罠にはめた張本人だよ」と口にした瞬間も、彼がしていたことは「事件の舞台をあらかじめ組み立てておく」という、まさにset upの語感そのものであり、詐欺師としての経歴が捜査の道具として生きている場面と言えます。
準備と策略は、案外紙一重の関係にあるのかもしれません。
まとめ|正体を明かしてなお崩さなかったニールの余裕から学ぶこと
set ~ upは、「据える、準備する」という中立的な行為が、人を対象にした瞬間に「罠にはめる」という意味へと転じる表現です。お膳立てという前向きな響きと、謀略という後ろ暗い響きの両方を併せ持つからこそ、誰が何のために「セット」したのかという文脈が、理解の鍵を握ります。正体を明かしてなお余裕を崩さなかったニールの姿からも読み取れるように、種明かしの瞬間には、それまで見えなかった仕込みの全体像が浮かび上がってきます。誰かの言動の裏に、まだ見えていない準備が隠れているかもしれないと考えるときの一言として、表現の引き出しに加えてみてください。


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