海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
誘われた話に乗りたい気持ちはあっても、今日はどうにも力が出なくて、断り方に迷った経験はありませんか。
そんな場面にぴったりの「have it in someone」を、『モダンファミリー』シーズン5第6話の前半、孫のルークの誘いにフランクが「今日はそこまでの気力が出ない」と答えるシーンから、一緒に見ていきましょう。
「have it in someone」の意味とニュアンス
have it in someone
意味:(人に)〜するだけの気力・力がある
have it in someoneは、何かをやりきるための気力や力が、その人の内側にあるかどうかを言う表現です。実際の会話ではsomeoneの部分が me、him、her のように具体的な人に置き換わり、have it in meなら自分、have it in himなら第三者の話になります。itは必要な力を漠然と受ける語で、have(持っている)とin me(自分の内側に)を組み合わせた文字どおりの意味は、「自分の中にそれがある」です。
to不定詞を続けて have it in me to do の形にすると、「〜するだけの力や度胸がある」と内容をはっきり示せます。to不定詞を続けずに単独で使うと、何をやりきる力なのかは、その前後の会話から補う形になります。
否定形のdon’t have it in meは、体を動かす体力が尽きたというより、そこまでの余力が残っていない、その気になれないという気持ちの面を表します。肯定形のhe has it in himなら、「彼にはそれだけの力がある」と、相手の力量を認める言い方になります。
【ここがポイント!】
- 「have it in someone」の核は、自分の内側にやりきるだけの力が入っているかどうかを言うイメージ
- 否定形では、体力の限界よりも、そこまでの余力がない気持ちを伝える表現
- to不定詞を続けると、何をやりきる力なのかを言葉にできるのがコツ
『モダンファミリー』S05E06のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ルークがフランクに念を押すように声をかけ、フランクがそれを断る場面です。断りの一言のあとに、クレアとフィルが、フランクの様子をどう受け止めるかを言葉にします。
Luke: Are you sure, grandpa? It might be fun.
(本当にいいの、おじいちゃん? 楽しいかもしれないよ。)Frank: Sorry, Luke. I just don’t think I have it in me today.
(悪いな、ルーク。今日はどうも、そこまでの気力が出ないんだ。)Claire: Did you see that? When has your dad ever not wanted to pull Luke’s finger? He’s hurting, Phil. I think he needs to see a therapist.
(見た? お義父さんがルークの指を引っ張りたがらないなんて、今までにあった? 傷ついてるのよ、フィル。セラピーを受けたほうがいいと思うの。)Phil: Claire, he doesn’t need a therapist.
(クレア、あの人にセラピーなんていらないよ。)Modern Family Season5 Episode6 (The Help)
シーン解説と心理考察
フランクの返事は、誘いを断る言葉でありながら、その理由を「気力」の側に置いているところが目を引きます。予定があるとも、体調が悪いとも言わず、「今日はそこまでの気力が出ない」と自分の内側の状態だけを伝えています。ルークが「本当にいいの」と念を押しても、「悪いな」と詫びる一言が先に立ち、断る気持ちは変わりません。
このやり取りを見たクレアは、「今までにあった?」とフィルに問いかけます。フランクがルークの誘いを断ることを、これまでにない出来事として受け止めていることが伝わってきます。そのうえで、クレアはフランクが傷ついていると読み取り、セラピーを勧めます。
対するフィルは、「あの人にセラピーなんていらないよ」と返します。同じ一言を前にして、深刻な変化と見るクレアと、そこまでは見ないフィルという、2人の温度差が、やり取りの雰囲気を変えています。
そのなかで、have it in meという一言は、断る理由をはっきり説明しないまま、ほのめかすように働いています。何に気力が出ないのかを言わないからこそ、周りの人が意味を補って受け取る余地が生まれ、クレアとフィルの意見が分かれる展開へとつながっています。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
コップに水が入っている様子を思い浮かべてみましょう。「自分というコップの中に、それをやるだけの分が入っているか」を言うのが、have it in meです。中身が十分に残っていればhave it in me、空になっていればdon’t have it in meと、コップの水位で覚えます。
フランクの「今日はそこまでの気力が出ない」は、まさにコップが空に近い状態を示した一言でした。誘いに乗りたくないというより、乗るだけの水が今日は入っていない、という言い方になっています。
コップのイメージを持っておくと、体力の話にも気持ちの話にも当てはまる表現だと、直感的につかめます。
例文で覚える「have it in someone」
気力や力が内側にあるかどうかを言う場面で使えるhave it in someoneを、3つの例文で確認していきましょう。
I want to apologize, but I don’t have it in me right now.
(謝りたいのに、今はそこまでの気力が出ないんだ。)
気持ちに余裕がなくて、行動に移せない場面です。butのあとに否定形を置くと、やりたい気持ちと余力のなさの落差が伝わります。
Do you think he has it in him to lead the team?
(彼にチームを率いるだけの力があると思う?)
職場で人事について意見を交わす場面です。to leadを続けることで、何をやりきる力なのかがはっきり示されます。
A: Are you coming to the party?
B: Sorry, I just don’t have it in me after this week.
(A:パーティーには来る?)
(B:ごめん、今週のあとだと、もうそんな気力がなくて。)
疲れた週の終わりに、誘いを断る友人同士の会話です。after this weekという言葉が、余力が残っていない理由をさりげなく添えています。
あわせて覚えたい関連表現
have the energy to do
(〜する体力・気力がある)
have it in meが「it」で必要な力を漠然と受けるのに対し、have the energy to doはenergyという語で体力や元気を直接指す形です。have it in meは、能力や度胸まで含めて使える点が違います。
be up for something
(〜に乗り気だ)
be up forは、気持ちがそちらに向いているかどうかを表します。have it in meは、力や気力が内側に残っているかどうかを表す点で焦点が異なります。
feel like doing
(〜したい気分だ)
feel like doingは、そのときの気分を言う表現です。have it in meは、気分よりも「やりきれるだけの余力があるか」という力の問題を言う点で違いがあります。
Note|have it in meを「体力がない」と訳すと外れる場面
have it in meを日本語にするとき、「体力がない」と訳したくなる場面があります。
フランクの「今日はどうも、そこまでの気力が出ないんだ」を、「今日は体力がない」と訳し替えてみると、印象が変わります。「体力がない」は、走り続けられない、動けないといった体の状態を指す言葉として響きます。一方で、フランクが伝えているのは、ルークの誘いに乗るだけの気持ちの余力が、今日は出せないということです。ルークが「本当にいいの、おじいちゃん? 楽しいかもしれないよ」と誘ったあとの返事なので、体を動かせるかどうかよりも、その誘いに向かう気持ちが動くかどうかが問われています。「元気が出ない」と訳せば近づきますが、「気力が出ない」と訳すほうが、余力を内側から引き出せない感覚に寄ります。
このように、have it in meは体力・元気・気力のうち、気持ちの余力に焦点があります。「体力がない」と訳すと体の話に、「気力が出ない」と訳すと気持ちの話になり、聞き手が受け取る内容が変わります。訳を選ぶときは、誘いや頼みを受け止めるだけの気持ちがあるかどうか、という側面を残すのがコツです。
体の状態を言いたいときはenergy、気持ちの余力を言いたいときはhave it in me、と使い分けると、伝えたい内容がずれにくくなります。
まとめ|自分の内側に、それをやる分が残っているか
have it in someoneは、何かをやりきるための気力や力が、内側に入っているかどうかを言う表現です。否定形にすると、体力の限界というより、そこまでの余力がないという気持ちの面を伝えられます。
フランクの一言は、断る理由をくわしく説明しないまま、気持ちの状態だけを伝えるものでした。その受け止め方が、クレアとフィルで分かれるところも、この一言の余白の大きさを物語っています。
誘いを断りたいとき、あるいは誰かの力量を認めたいときに、have it in me や have it in him の形で口にしてみる場面を思い浮かべながら、表現の引き出しに加えてみてください。


コメント