海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
友人の家に上がるとき、「あそこの引き出しだけは開けないでね」と先に念を押された経験はありませんか。
そんな場面にぴったりの「go through」を、『フレンズ』シーズン6第8話の前半、隣に越してきたチャンドラーを迎え入れたジョーイが、同居人の私物について注意を伝える場面から、一緒に見ていきましょう。
「go through」の意味とニュアンス
go through
意味:(持ち物などを)くまなく調べる・あさる
go throughは、直訳すると「〜の中を通り抜ける」という句動詞です。throughには「端から端まで貫く」という感覚があり、対象の中身を一つずつ確かめながら進んでいくイメージが根底にあります。
この表現は、目的語によって日本語の訳が大きく変わります。バッグや引き出し、他人の私物が目的語なら「中をあさる」。書類やメモなら「ひととおり目を通す」。つらい時期や手続きなら「経験する」「くぐり抜ける」になります。日本語では別々の言葉になりますが、英語ではどれも「対象の中を順に通っていく」という同じ動きが土台にあります。
場面で使われている形は「don’t go through her stuff」です。原形のgo throughが、ここでは否定の命令文になり、目的語が「彼女の持ち物」を表すher stuffに置き換わっています。stuffは物を広く指す口語で、「彼女の物をあさらないで」という注意になります。
【ここがポイント!】
- 「go through」の核は、対象の中を端から端まで通っていくイメージ
- 目的語が持ち物なら「あさる」、書類なら「目を通す」、つらい時期なら「経験する」
- 目的語の種類を見れば、どの訳が合うかを読み取れるのがコツ
『フレンズ』S06E08のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
隣に引っ越してきたと名乗ったチャンドラーが、ジョーイに招き入れられる場面です。チャンドラーはジャニーンが留守だと確かめると、彼女が自分の部屋をどうしたのか見たいと頼みます。ジョーイは快く応じたあと、ひとつだけ注意を添えます。その一言に、go throughが登場します。
Joey: Sure, neighbor. Come on in.
(ああ、いいぜ、お隣さん。入れよ。)Chandler: So, is Janine around?
(で、ジャニーンはいるの?)Joey: Uh, no, she’s at dance class.
(あー、いないよ。ダンスのクラスに行ってる。)Chandler: Can I see what she did with my room?
(彼女が俺の部屋をどうしたのか、見てもいい?)Joey: Yeah, but, hey, don’t go through her stuff. She gets really mad.
(ああ、いいよ。でもさ、彼女の物をあさっちゃだめだぜ。すごく怒るんだ。)Friends Season6 Episode8(The One with Ross’s Teeth)
シーン解説と心理考察
ジョーイの「Yeah, but, hey」という切り出しは、頼みを受け入れたうえで条件を足す運びです。部屋を見たいという願いは断らず、そのすぐ後に「don’t go through her stuff」と続けています。見てもいいが触ってはいけない、という線引きを先に言葉にしている点が見どころです。
理由の説明は「She gets really mad.」の一言だけです。ジャニーンが怒るという事実を、ジョーイは長く語りません。ルームメイトの反応を知っている人の、短くて実感のこもった警告に聞こえます。
「見る」と「あさる」の落差にも注目です。チャンドラーが頼んだのはseeで、ジョーイが禁じたのはgo throughです。seeは目で確かめるだけの動作で、go throughは中身を動かしながら探っていく動作です。同じ部屋の中でも、許される行為と許されない行為が、動詞ひとつで分けられています。
留守にしているジャニーンの持ち物を、本人のいないところで調べてはいけない。ジャニーンが怒ることを知っているからこその、短い警告です。
また、ジャニーンが不在だと分かった直後に出てくる注意という点も、この場面の運びを支えています。本人がいないからこそ、見えない場所での振る舞いに先回りして釘を刺しておく必要が生まれます。短い会話の中に、その先回りの一言がきちんと収まっています。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
引き出しの中に片手を入れて、奥の端から手前の端まで、指先がずっと通り抜けていく様子を思い浮かべてみましょう。中身に触れながら全体をたどっていく感覚が、go throughの芯にあります。
ジョーイの場面でも、「見る」だけなら部屋の入り口に立っていれば足ります。ところが「go through」は、持ち物の中へ手を入れて端から順にたどる動作です。だからこそジャニーンは怒るのだ、と場面ごと頭に置いておくと、動作のイメージが残りやすくなります。
日本語でも「のぞく」と「あさる」は別の言葉です。その使い分けの感覚に重ねると、go throughの訳し分けにも役立ちます。
例文で覚える「go through」
目的語によって訳が変わるgo throughを、3つの例文で確認していきましょう。
Please don’t go through my bag without asking.
(聞かずに私のバッグをあさらないで。)
私物に触れてほしくない場面で使える一文です。without askingを添えると、「許可なく」というニュアンスがはっきり伝わります。
I need to go through these documents before the meeting.
(会議の前に、この書類にひととおり目を通さないと。)
仕事の書類を確認する場面です。目的語が書類になると、「あさる」ではなく「端から端まで確認する」という意味に変わります。
A: Have you seen my keys?
B: I’ll go through the drawers in the kitchen.
(A:私の鍵、見なかった?)
(B:キッチンの引き出しを探してみるよ。)
探し物を手伝う往復会話です。引き出しの中を順に確かめる動作が、そのまま「探す」という意味になっています。
あわせて覚えたい関連表現
look through
(ざっと目を通す・探す)
look throughは、目で見て探したり目を通したりする動作に重点があります。go throughは、手で中身を動かしながら調べる感覚まで含む点が異なります。
rummage through
(かき回して探す)
rummage throughは、中身をかき回して探すという動作そのものを指します。go throughは、探す場面に限らず「経験する」「目を通す」まで幅広く使える点が異なります。
go over
(見直す・確認する)
go overは、すでにある内容を確認し直す動作に寄った言い方です。go throughは、中身を一つずつ順にたどって調べるという意味でも使われます。
Note|withが付くだけで別の表現になる、go throughとgo through with
go throughと形のよく似た表現に、go through withがあります。withが付くと、意味は「あさる」や「経験する」から「(計画などを)最後までやり遂げる」へ変わります。
go throughは、目的語の中や過程を「通っていく」表現でした。一方のgo through withは、決めたことや計画をやり抜くという意味で、目的語に来るのは計画や約束といった、これから実行する物事です。同じ2語でも、後ろにwithが付くかどうかで、目的語との関係が変わります。
たとえば「go through her stuff」のように、目的語が持ち物なら、withは付きません。「go through with the plan」のように、目的語が計画なら、withが必要になります。目的語が「調べる対象」か「やり遂げる対象」かを見れば、どちらの形になるかの見当が付きます。
ジョーイの注意は、目的語がher stuffなので、withのない形です。彼女の持ち物の中を調べる、という動作をそのまま表しています。
小さな前置詞が、表現の方向を決めています。辞書で意味を調べるときも、後ろにwithが付いているかどうかを先に確認すると、目当ての項目にたどり着きやすくなります。
まとめ|「見る」と「あさる」を分ける一言
go throughは、対象の中を端から端まで通っていくイメージを持つ表現です。目的語が持ち物なら「あさる」、書類なら「目を通す」、つらい時期なら「経験する」と、日本語の訳は変わります。
人の持ち物や引き出しに触れてほしくないとき、「見るだけなら構わないが、中は調べないで」と線を引く一言として使えます。動作のイメージを一つ持っておくと、訳し分けに迷いにくくなります。書類に目を通す場面でも、つらい時期をくぐり抜ける場面でも、「中を順にたどる」という感覚は変わりません。
ジョーイは、部屋を見たいという頼みを受け入れながら、ジャニーンの持ち物だけは守るように伝えていました。許す範囲と許さない範囲を、動詞ひとつで分ける言い方を、表現の引き出しに加えてみてください。


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