海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
ある話題を振られた途端に、言いたいことが次々と浮かんできて、止まらなくなりそうになる。そんな瞬間があります。
そんなときにぴったりの「don’t get me started on」を、『フレンズ』シーズン6第7話の後半、部屋の様子が違うことに気づいたモニカが、次々に指摘を並べていく場面から、一緒に見ていきましょう。
「don’t get me started on」の意味とニュアンス
don’t get me started on
意味:〜の話は始めさせないで(語りだしたら止まらないから)
don’t get me started on は、ある話題について言いたいことが山ほどあり、話し始めたら止まらなくなるから、触れないでほしいという言い方です。on のあとに話題を置きます。get me started は「私を話し始める状態にする」という意味で、不満や強い思いのある話題について、あえて「始めさせないで」と先に止めることで、「それほど言いたいことがある」と伝えています。
ドラマの台詞は、強調の even が入った don’t even get me started on の形です。even は「その話題までは」という気持ちを強める働きをしますが、意味の中心は変わりません。ほかの不満をすでに並べたあとに、まだ言い足りない話題をこの形で添えると、話題の多さを示すひと言になります。
話題を出さずに、Don’t get me started. とだけ言う形もあります。この場合は、相手が持ち出した話題そのものが「言い出したら止まらない」対象だと、短く示す言い方になります。
【ここがポイント!】
- 「don’t get me started on」の核は、言いたいことがあふれて、話しだしたら止まらないという予告
- on のあとに、不満や強い思いのある話題を置く
- 実際に「話さない」のではなく、「言いたいことがある」と示すのがコツ
『フレンズ』S06E07のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
部屋に入ったモニカが、部屋の様子が違うことに気づきます。チャンドラーは「部屋が明るくなったこと以外は何も違わない」と取り繕いますが、モニカはエンドテーブル、ソファ、冷蔵庫のマグネットと、次々に違いを指摘します。don’t even get me started on が出てくるのは、その指摘の締めくくりの一言です。
Monica: Why is everything different?
(どうして何もかも違ってるの?)Ross: Bye.
(じゃあな。)Chandler: No, I don’t see anything different other than the fact that the room got so much brighter when you came into it.
(いや、何も違ってなんかないと思うけどな。強いて言えば、君が入ってきたら部屋がぐっと明るくなったことくらいかな。)Monica: Well, the end table is wrong and the couch looks bizarre and don’t even get me started on the refrigerator magnets.
(ええと、エンドテーブルは違うし、ソファは変な感じだし、冷蔵庫のマグネットに至っては話しだしたら止まらないわよ。)Chandler: Okay, look, don’t… don’t be mad, okay?
(いいか、その、怒らないでくれよ、な?)Friends Season6 Episode7(The One Where Phoebe Runs)
シーン解説と心理考察
「どうして何もかも違ってるの?」というモニカの問いに、ロスは「じゃあな」とだけ言って別れを告げます。残ったチャンドラーは、「部屋が明るくなったこと以外は何も違わない」ともっともらしい一言で切り抜けようとします。本心からの称賛ではなく、モニカの機嫌を損ねないための取り繕いとして響きます。
モニカはそれには乗らず、エンドテーブルは違う、ソファは変な感じだと、指摘を重ねます。そして「冷蔵庫のマグネットに至っては話しだしたら止まらない」と、まだ言い足りないことがあると示して、指摘を締めくくります。実際にはすべてを言い切っていないのに、話題の多さと不満の強さが、この一言だけで伝わるところが見どころです。
物の置き場所に強いこだわりがあることは、前の場面でロスも口にしていました。冷蔵庫のマグネットのような細かい部分まで目が届くモニカの視線が、チャンドラーの取り繕いをそのままにしておきません。追い込まれたチャンドラーは、「怒らないでくれ」と切り出します。取り繕いの言葉から、頼みごとの言葉へと、口調が切り替わる瞬間です。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
栓をしてある瓶の口を、もう一度開けたら、中身があふれ出して止まらない。そんな様子を思い浮かべてみましょう。get me started は「私を動き出させる」という言い方で、いったん動き出したら止まらない勢いが表れています。
モニカの台詞では、エンドテーブルとソファの不満を並べたあと、最後に置かれた冷蔵庫のマグネットの話が、栓をしたままの瓶にあたります。「開けさせないで」と先に止めることで、開けたらどれだけ出てくるかを想像させる組み立てです。先に止めて、中身の多さを想像させる。その感覚とセットにして覚えておくと、実際の会話でも使いどころをつかみやすくなります。
例文で覚える「don’t get me started on」
不満や強い思いのある話題を、軽く予告する場面で使える don’t get me started on を、3つの例文で確認していきましょう。
Don’t get me started on the traffic in this city.
(この街の渋滞の話は始めさせないでよ。)
不満のある話題を持ち出された場面です。on のあとに、話題になる名詞を置いた基本の形です。
A: What do you think of the new schedule?
B: Don’t even get me started on that.
(A:新しいスケジュールをどう思う?)
(B:その話は勘弁して、言い出したら止まらないから。)
職場の変更への不満を語る会話です。that で話題を受けて、even で強調した形になっています。
The food was fine, but don’t get me started on the service.
(料理は悪くなかったけど、サービスの話になると止まらなくなるよ。)
食事の感想を伝える場面です。良かった点を述べたあとに、不満を予告する形で添えています。
あわせて覚えたい関連表現
I could go on and on about
(〜について延々と話せる)
don’t get me started on は「始めさせないで」と先に止める形です。I could go on and on about は「延々と続けられる」と、自分の言いたいことの多さを述べる形です。
Let’s not go there.
(その話には触れないでおこう)
Let’s not go there は、話題を避けたい気持ちが中心です。don’t get me started on は、言いたいことがあふれている気持ちが中心です。
Where do I begin?
(どこから話せばいいのか)
Where do I begin? は、多すぎて手がつけられないほど言いたいことがあると、自分から問いかける形です。don’t get me started on は、相手に向けて先に止める形です。
Note|「〜の話はやめて」と訳すとずれる、don’t get me started on
don’t get me started on を日本語にするとき、「〜の話はやめて」と訳したくなる場面があります。ところが、この訳のままだと、英語が持っている気持ちの向きとは、少しずれてしまいます。
「〜の話はやめて」という日本語は、その話題に触れたくない、話を止めたいという気持ちを表します。don’t get me started on は、その逆で、言いたいことがあふれているから、始めさせないでほしいという気持ちです。Don’t get me started on the traffic.(渋滞の話は始めさせないで)と言う人は、渋滞について話したくないのではなく、話し出したら止まらないほど不満がたまっています。日本語なら「〜の話は勘弁して」「〜のことは言い出したらきりがないよ」「〜については話しだしたら止まらないよ」と、文脈に合わせて訳し分けると、この気持ちが伝わりやすくなります。この一言のあとに、実際に不満が続くこともあれば、話題を切り上げることもあります。どちらの場合でも、「言いたいことがある」という前提は変わりません。
モニカの台詞に戻ると、「冷蔵庫のマグネットに至っては話しだしたら止まらないわよ」と訳した部分が、この気持ちにあたります。冷蔵庫のマグネットの話をやめたいのではなく、まだ言い足りないという、指摘の続きを示しています。
止める形をとって、実は気持ちがあふれている。それが、この表現のねじれです。
まとめ|言い出したら止まらない気持ちを、先に伝える一言
don’t get me started on は、ある話題について言いたいことが山ほどあり、話しだしたら止まらなくなるから、始めさせないでほしいという言い方です。「話をやめて」ではなく、「言いたいことがある」と先に示す点が、この表現の核心です。
不満のある話題を持ち出されたときでも、いくつかの不満を並べたあとの締めくくりでも、同じ形のまま使えます。モニカの台詞では、エンドテーブルとソファの指摘に続く最後の一言として、話題の多さと不満の強さを、たった一行で伝えていました。
言い切らずに気持ちをにじませる、それがこの表現の持ち味です。


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