海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
ほかにも魅力的な案がいくつも並んでいるのに、結局は最初に決めたものに落ち着く、という経験はありませんか。
そんな場面で使える「stick with」を、『フレンズ』シーズン6第23話の前半、モニカへの婚約指輪を探すチャンドラーが、フィービーの突飛な提案を退けて指輪で通すと返すシーンから、一緒に見ていきましょう。
「stick with」の意味とニュアンス
stick with
意味:〜を変えずに選び続ける、〜で通す、〜から離れない
stick with は、いくつかの選択肢がある中で、今のものや最初に選んだものを変えずに続けるときの口語表現です。stick は「くっつく」という意味の動詞で、いったんくっついたら離れない状態が、「選んだものを変えない」という意味につながっています。
後ろに置く語によって、向きが少し変わります。stick with the old system や stick with the red one のように、選択の対象を置くと、「それを選び続ける」という意味になります。stick with someone のように人を置くと、「その人のそばを離れない、その人についていく」という意味になります。stick with the diet と言うと、「決めた食事の内容を守り続ける、投げ出さない」という意味です。
どの形にも共通するのは、途中で別の道に移らず、今いる場所にとどまる動きです。ほかの案が出てきたあとで使うと、「それでも変えない」という意思がはっきり伝わります。
【ここがポイント!】
- 核は、いったんくっついたら離れない、変えずに続けるイメージ
- 後ろが選択の対象なら「選び続ける」、人なら「そばを離れない」になる表現
- ほかの案が出たあとに使うと、「それでも変えない」意思がはっきり伝わる一言
『フレンズ』S06E23のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
婚約指輪を選ぶために、指輪を扱う店を何軒も回っているチャンドラーに、フィービーが指輪以外の案を次々に出します。ブレスレット、ティアラ、そして独立戦争のマスケット銃。チャンドラーは皮肉まじりに受け流し、指輪で通すと返します。
Phoebe: Okay, so maybe you don’t get her a ring. Maybe you do something different, you know? Maybe you get her an engagement bracelet. Or an engagement tiara. Ooh! An engagement Revolutionary War musket.
(じゃあ、指輪はやめておくとか。何か別のものにしたら、ね? 婚約ブレスレットとか。それか、婚約ティアラ。あっ、婚約用の独立戦争のマスケット銃!)Chandler: You know, I’m so glad I picked you to help me with this.
(いやあ、この件で君に手伝いを頼んで、本当によかったよ。)Phoebe: Can’t you imagine getting down on one knee and handing her this gorgeous piece of weaponry?
(片膝をついて、この素敵な武器をモニカに差し出すところ、想像できない?)Chandler: Yeah, I’m gonna stick with the ring.
(ああ、俺はやっぱり指輪で行くよ。)Friends Season6 Episode23(The One with the Ring)
シーン解説と心理考察
フィービーの最初の発言は、Okay, so maybe you don’t get her a ring. と、指輪を贈らない案から始まります。maybe を重ねながら、engagement bracelet、engagement tiara と続き、最後は Ooh! と声を上げて、engagement Revolutionary War musket にたどり着きます。engagement という言葉を毎回つけたまま、贈り物の候補が指輪からだんだん離れていく並びです。
これに対するチャンドラーの You know, I’m so glad I picked you to help me with this. は、字面だけを見れば感謝の言葉です。ただ、突飛な提案が並んだ直後の一言なので、実際には、手伝いを頼んだことをよかったとは思っていない皮肉として響きます。このあとチャンドラーが別の指輪を探し続けていることからも、言葉どおりの喜びではないと読み取れます。
フィービーは続けて、Can’t you imagine getting down on one knee and handing her this gorgeous piece of weaponry? と、片膝をついて武器を差し出す姿を思い浮かべるよう促します。her はモニカです。この提案を本気で勧めているのか、冗談で言っているのかは、この言葉だけでは決められません。一方、チャンドラーの返事に迷いはありません。
Yeah, I’m gonna stick with the ring. は、フィービーの問いを受けたあとで、the ring と最初の選択を短く言い切る返事です。ほかの案を並べ直す言葉は続きません。選択肢が広がった直後に、元の選択に戻る。stick with が持つ「変えない」という動きが、そのまま出ている場面です。
直後にチャンドラーは、Oh, this one’s nice. I like it this one. と別の指輪に目を向け、店員に見せてほしいと声をかけます。指輪の中から選ぶ作業に、話が戻っていきます。
『フレンズ』流・覚え方のコツ
stick with は、のりのついたシールが、ぴったりくっついて離れない様子を思い浮かべると覚えやすい表現です。ほかの場所へ移そうとしても、貼った場所から動かない。この「離れない」感覚が、「選んだものを変えない」という意味の核にあります。
チャンドラーの場面も、同じ動きに重なります。ブレスレットもティアラもマスケット銃も、目の前を通り過ぎていくだけで、貼りつくのは指輪だけです。ほかの案が並べば並ぶほど、指輪にくっついたまま動かない様子が、はっきり見えてきます。選択肢が増えたときに、元のものにくっつき直す。この動作を頭に置いておくと、変えずに続けたい場面で、この一言がすっと浮かびます。
例文で覚える「stick with」
選んだものを変えずに続ける stick with を、3つの例文で確認していきましょう。
I looked at a few other options, but I’ll stick with the original plan.
(ほかの案もいくつか見たけど、最初の計画で通すよ。)
複数の案を検討したあとで、最初の計画に決める場面です。but のあとに stick with を置くと、「それでも変えない」という流れがはっきりします。
We decided to stick with our current supplier for another year.
(私たちは、もう1年今の取引先で続けることにした。)
取引先を見直したうえで、現状を維持すると決めるビジネスの場面です。for another year のような期間を添えると、続ける長さが伝わります。
A: Do you want to try the new flavor?
B: No, thanks. I’ll stick with vanilla.
(A:新しい味を試してみる?)
(B:ううん、やめとく。バニラにしておくよ。)
店での注文を断る会話です。断りの言葉に続けて stick with を使うと、いつもの選択に戻る軽い言い方になります。
あわせて覚えたい関連表現
go with
(〜を選ぶ、〜にする)
go with は、「〜を選ぶ」という選択そのものを表します。stick with は、すでに選んだものや今のものを、変えずに続ける点に重点があります。
stick to
(〜を守り通す)
stick to は、計画やルール、話題などから外れずに守る向きが強い言い方です。stick with は、選んだものや相手から離れない向きが強くなります。
stick it out
(最後までやり抜く)
stick it out は、つらい状況を最後まで耐え抜く言い方です。stick with は、選択肢の中から今のものを変えずに続ける言い方になります。
Note|「stick with」を日本語にするときの訳語の幅
今回のシーンで、チャンドラーは stick with the ring と言いました。和訳では「指輪にする」「指輪で通す」などが思い浮かびますが、stick with は、場面によって日本語の訳語が変わる表現です。
選択の場面では、「〜にする」「〜で通す」「〜で行く」と訳せます。I’ll stick with vanilla. なら「バニラにしておく」です。計画ややり方の場面では、「〜を続ける」「〜を変えない」となり、stick with the plan は「計画を変えずに進める」という意味です。人が後ろに来ると、「〜についていく」「〜のそばを離れない」になり、Stick with me. は「私についてきて」です。it だけを置いた stick with it は、「投げ出さずにやり続ける」という意味になります。
日本語の「〜にする」は、選ぶ瞬間の決定を表す言い方です。これに対して stick with には、ほかの案が出たあとも元の選択を変えない、という動きが含まれています。訳語がどれになっても、この「変えない」が共通して残っています。
チャンドラーの返事は、フィービーの3つの案を聞いたあとのものです。「指輪にするよ」よりも、「やっぱり指輪で行くよ」のように、「変えない」を出した訳のほうが、原文の動きに近くなります。
訳語は場面で変わっても、「変えない」という芯は動きません。
まとめ|ほかの案が並んでも、選んだものにくっついたまま
stick with は、いくつかの選択肢がある中で、選んだものを変えずに続けるときの口語表現です。後ろが選択の対象なら「選び続ける」、人なら「そばを離れない」、続けるべき行いなら「やり続ける」と、向きが変わります。
チャンドラーは、ブレスレットやティアラ、マスケット銃といった突飛な提案に囲まれても、the ring と短く言い切りました。ほかの案が増えるほど、元の選択を変えない意思が、はっきり見える場面です。
迷いそうな場面で、選んだものに区切りをつける一言として、表現の引き出しに加えてみてください。


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