海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
初めて会ったときは「ちょっと面倒そうな人だな」と身構えたのに、接しているうちに印象がまるで変わった。そんな相手が身近にいる場面があります。
そんな印象の変化を言い表す「pain in the ass」を、『モダンファミリー』シーズン7第9話の前半、山小屋に居合わせたフィグが、声をかけてくれた相手に第一印象を打ち明ける場面から、一緒に見ていきましょう。
「pain in the ass」の意味とニュアンス
pain in the ass
意味:面倒な人、厄介者、うっとうしいもの(くだけた、やや強い言い方)
pain in the ass は、いらいらさせる人や、手間のかかる物事を指す表現です。直訳は「お尻の痛み」で、体の痛みにたとえて、「気になって仕方がない」「かかわると面倒だ」という感覚を言い表しています。ふつうは a pain in the ass と冠詞を付けて、「面倒な人」「厄介な代物」という名詞のかたまりとして使います。
使い方は二通りあります。ひとつは、人を指す使い方で、He is a pain in the ass のように、その人の性質として言います。もうひとつは、手続きや作業を指す使い方で、It’s a pain in the ass to fill out these forms のように、to 不定詞を続けて「〜するのが面倒だ」と言います。
ass は体の部位を表す語ですが、会話では丁寧さを欠く、強めの語として扱われます。そのため、この表現はくだけた会話向きで、語の強さを意識して、使う相手や場面を選ぶ言い方です。日本語にするときは、「面倒な人」「厄介者」「うっとうしいもの」の中から、人を指すのか物事を指すのかに合わせて選びます。
【ここがポイント!】
- 「pain in the ass」の核は、お尻の痛みのように、気になって仕方がない面倒な存在というイメージ
- 人にも手続きや作業にも使え、a を付けた名詞のかたまりとして置く
- ass を含む強めの語なので、使う相手や場面を選ぶのがコツ
『モダンファミリー』S07E09のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
フィグは、毎年この山小屋を使ってきた家族のひとりですが、山小屋にいるのは別の家族です。荷物を取って坂を歩いて下りると言うフィグに、キャメロンが残るよう声をかけます。今回のフレーズは、それに応えるフィグの最後の一言に出てきます。
— Is it possible the invitation got lost? I mean You seem great.
(招待が届かなかっただけ、ということはありませんか。ほら、感じのいい方ですし。)Fig: Well, I guess I’ll just get my bags and walk down the hill. Hopefully, I’ll get to the bus station before nightfall. It’s wolf season.
(じゃあ、荷物を取って、坂を歩いて下りることにします。暗くなる前にバス停に着けるといいんだけど。オオカミの季節だし。)Cameron: Why don’t you stay here with us? It’s Christmas.
(僕たちと一緒にここにいなよ。クリスマスなんだから。)Fig: Oh. First time I saw you, I thought you were gonna be a pain in the ass, but it turns out you’re my favorite.
(あら。初めて会ったとき、あなたは面倒な人になりそうだと思ったの。でも結局、あなたが一番のお気に入りよ。)Modern Family Season7 Episode9 (White Christmas)
シーン解説と心理考察
フィグは、自分の家族が毎年使ってきた山小屋で、その家族が今年は来ないと知らされます。荷物を持って坂を歩いて下りる、暗くなる前にバス停に着きたい、オオカミの季節だ、と心細い事情を次々に並べます。その前に、招待が届かなかっただけではないか、と声をかける発言も入り、感じのいい人だと添えられています。
そこへキャメロンが、Why don’t you stay here with us? と声をかけます。Why don’t you は提案を持ちかける言い方で、It’s Christmas の一言が、誘う理由になっています。
フィグの返事は、まず短い Oh です。そのあとに続くのが、今回のフレーズを含む一文です。First time I saw you は「初めて会ったとき」、I thought you were gonna be は「〜になるだろうと思っていた」と、過去の予想を語る形になっています。a pain in the ass は、その予想の中身にあたります。but it turns out で流れが反転し、it turns out は「結局〜だと分かった」という意味なので、you’re my favorite という好意に着地します。my favorite は「私のお気に入り」で、数ある中から一番好ましい相手だと位置づける言い方です。gonna は going to のくだけた言い方で、会話らしい調子になります。
ここでは、強い言葉が好意を際立たせる使い方をされています。実際にそう扱ったという話ではなく、第一印象で思い描いた姿として語られているため、過去の予想と今の気持ちの落差が、一文の中でそのまま見えるつくりです。誘ってくれた相手に向けた率直な言葉として響きます。
『モダンファミリー』流・覚え方のコツ
お尻に小さなとげが刺さると、座っても立っても気になって、頭の中がそのことでいっぱいになります。気になるのに、簡単には取り除けない。その感覚が、pain in the ass の「面倒な存在」にそのまま重なります。
フィグの言葉には、このとげが、あとから別のものに変わる動きがあります。初めて会ったときに予想した「とげのような相手」が、最後には「一番のお気に入り」に入れ替わる。とげと好意の落差を並べて思い出すと、「面倒そうだと思った」という過去の予想の意味まで一緒に覚えられます。
例文で覚える「pain in the ass」
人にも物事にも向けられる pain in the ass を、3つの例文で確認していきましょう。
The new reporting system is a pain in the ass for the whole team.
(新しい報告システムは、チーム全体にとって厄介な代物だよ。)
同僚同士が、運用の不満を話す場面です。for the whole team と続けることで、誰にとって面倒なのかがはっきりします。
I thought he’d be a pain in the ass, but he turned out to be really helpful.
(厄介な人かと思ったけど、実はすごく頼りになる人だった。)
第一印象が変わった相手を振り返る、気持ちの場面です。ドラマのフィグの一言と同じく、予想と実際の落差を表しています。
A: How was your trip?
B: The long delay was a pain in the ass, but the hotel was great.
(A:旅行はどうだった?)
(B:長い遅延は面倒だったけど、ホテルは最高だったよ。)
旅行の感想を友人に話す、日常の会話です。but のあとで良かった点を添えて、面倒だった点との対比を作っています。
あわせて覚えたい関連表現
a headache
(頭痛の種、悩みの種)
a headache は、悩みや手間の種になる問題を指します。pain in the ass が人にも物事にも向けられるくだけた強い言い方なのに対し、こちらは考えるだけで頭が痛くなる問題、という見立ての表現です。
a nuisance
(迷惑なもの、厄介者)
a nuisance は、丁寧で中立的な語で、改まった場面でも使えます。pain in the ass と指すものは近いですが、くだけた会話向けの強い言い方か、中立的な言い方かという点がちがいます。
a hassle
(面倒、手間)
a hassle は、手間のかかる状況や作業を指す、くだけた言い方です。It’s a hassle to park downtown のように、物事の面倒さを言うときに使えて、人そのものを指す pain in the ass よりも、手間のほうに重点があります。
Note|pain in the ass と pain in the neck の言い分けと、語の強さ
フィグの一言には、ass という語が含まれています。意味がほぼ同じで、もう少し穏やかな言い方もあるため、ここで使い分けを整理します。
pain in the ass と pain in the neck は、意味がほぼ同じです。どちらも、いらいらさせる人や物事を、体の痛みにたとえた言い方です。ちがいは、体の部位と、それに伴う語の強さにあります。ass を含む表現は、友人同士のくだけた会話で使われる強めの言い方で、丁寧さが求められる場面では避けられます。neck に替えた pain in the neck は、意味はそのままで、ass を避けた穏やかな言い方になります。たとえば、友人同士で It’s a pain in the ass to fill out these forms と言うところを、場面によっては It’s a pain in the neck to fill out these forms のように言い換えます。人を指す He is a pain in the ass も、同じ形で He is a pain in the neck と置き換えられます。
フィグの a pain in the ass も、強い語を含む表現です。ただし、ここでは実際にそう扱ったのではなく、第一印象で思い描いた姿を語る形で使われています。強い語の響きが、そのあとの好意を引き立てるように働いています。
語の強さに応じて、同じ意味の言い方を選ぶ。その選び方が、この表現を使いこなす鍵になります。
まとめ|第一印象のとげが、お気に入りに変わるまで
pain in the ass は、いらいらさせる人や手間のかかる物事を、お尻の痛みにたとえて言い表す表現です。人にも物事にも使える一方で、ass を含む強めの語なので、場面と相手を選ぶ必要があります。
第一印象を振り返るなら、I thought ~ would be a pain in the ass, but it turns out ~ の組み立てで、予想と実際の落差をそのまま言葉にできます。語の強さを考えると、気心の知れた相手との会話に向く組み立てです。


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