海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
目上の人や立場が上の相手に、礼儀を保ちつつ「それは違います」と伝えたい。そんな難しい場面に出くわしたことはありませんか。
そんなときに使えるのが「with all due respect」、お言葉ですが、失礼ながら、という前置きの表現です。『ビッグバン★セオリー』シーズン9第15話の、予約していたのに長く待たされ、ペニーが給仕長に食い下がるレストランのシーンから、一緒に見ていきましょう。
「with all due respect」の意味とニュアンス
with all due respect
意味:お言葉ですが、失礼ながら、ご無礼を承知で申し上げますが
with all due respect は、相手に反論・拒否・異議を述べる直前に置く、前置きの定型句です。「あなたへの敬意は十分払ったうえで、あえて申し上げますが」という形で、これから言う不同意の角をやわらげる役割を持ちます。
due は「当然支払うべき」という意味で、直訳すると「しかるべきすべての敬意を込めて」となります。ただし実際には、この丁寧な前置きの後には、たいてい相手の意見への反対や要望の拒否が続きます。つまり「敬意」とは裏腹に、はっきり異を唱えるときに使われることが多い表現です。目上の人、客、立場が上の相手に対して、礼儀を崩さずに反論を切り出したいときに重宝します。
【ここがポイント!】
- with all due respect は「敬意は払いますが」と、反論の角をやわらげる前置き
- 丁寧な見た目とは裏腹に、この後にはたいてい反対意見が続く一言
- 目上や公式の場で、礼儀を保って異を唱えたいときに効く改まった表現
『ビッグバン★セオリー』S09E15のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
予約していたはずなのに長く待たされ、レナードとのディナーを楽しみにしていたペニーが、給仕長に食い下がります。給仕長は丁重な物腰を一切崩さないまま、しかしきっぱりと無理だと線を引きます。
Penny: …we have been waiting a while, and I just…
(もうずいぶん待ってるんですけど、それで私……)Maitre d’: With all due respect, ma’am, there’s nothing I can do.
(お言葉ですが、お客様、私にできることは何もございません)Penny: You don’t have to call me ma’am.
(“お客様”なんて呼ばなくていいわよ)Maitre d’: Okay.
(承知しました)The Big Bang Theory Season9 Episode15(The Valentino Submergence)
シーン解説と心理考察
給仕長が、最後まで丁寧な物腰を崩さないまま「できることは何もない」ときっぱり言い切るところに、with all due respect の本領が表れています。表向きは最大限の敬意を示しながら、中身は明確な拒否。この丁寧さと拒絶の同居が、プロの接客らしい慇懃さとして響きます。
おもしろいのは、その丁重な ma’am(お客様)という呼びかけに、ペニーがすかさず「そんなふうに呼ばなくていい」と返す点です。敬意を込めた呼びかけのはずが、若さを気にするペニーにはかえって引っかかってしまう。丁寧な言葉ほど、受け手によっては思わぬ波紋を呼ぶという空気が、この短いやりとりににじむ場面です。礼儀正しさと、その裏にある「これ以上は譲れません」という本音のギャップが、会話の温度を静かに引き締めています。
『ビッグバン★セオリー』流・覚え方のコツ
with all due respect は、「due(当然支払うべき)respect(敬意)を all(すべて)込めて」という直訳から、”前置きのお辞儀”だとイメージすると覚えやすくなります。まず深々と頭を下げ、それから本題に入る。その一礼の所作が、この表現の正体です。
ただし、このお辞儀の直後にはたいてい「でも、お断りします」という本音が続きます。劇中の給仕長が、丁寧に頭を下げる物腰そのままに、内心では「これ以上は無理です」と線を引く。その姿を思い浮かべれば、with all due respect が「礼儀正しい拒絶のサイン」だということが、その一礼の所作ごと記憶に残ります。
例文で覚える「with all due respect」
with all due respect は、丁寧に反論したい場面で活躍します。ビジネスから日常まで、3つの例文で使いどころを見てみましょう。
With all due respect, I think that plan won’t work.
(お言葉ですが、その計画はうまくいかないと思います)
会議で上司の案に反対する場面です。いきなり否定するのではなく、この前置きを挟むことで、敬意を保ったまま異論を切り出せます。
With all due respect to the author, I disagree with the conclusion.
(著者には敬意を払いますが、私はこの結論には反対です)
書評や議論で反対意見を述べる場面です。to のあとに対象を付け足すと、「誰に対する敬意か」を明示しながら反論できます。
A: I think we should just cancel the whole project.
B: With all due respect, I’m not sure that’s the right call.
(A:このプロジェクト、もう全部中止にすべきだと思う)
(B:失礼ながら、それが正しい判断とは思えません)
会議で相手の提案に異を唱える場面です。with all due respect が、対立をやわらげる緩衝材として機能しています。
あわせて覚えたい関連表現
no offense
(悪気はないけど、気を悪くしないでね)
カジュアルな前置きです。with all due respect がフォーマルで目上向きなのに対し、no offense は対等な関係や砕けた間柄で使います。同じ「失礼ながら」でも、相手との距離感がまったく違います。
if I may
(もしよろしければ、僭越ながら)
発言の許可を丁寧に求める前置きです。反論の色は弱く、控えめに口を挟みたいときに向いています。with all due respect ほど強い異論を含まず、もっと穏やかに発言権を求めるニュアンスです。
I hear you, but…
(言いたいことはわかるけど)
相手の言い分を一度受け止めてから反対する表現です。with all due respect より共感寄りでカジュアルなぶん、親しい間柄での反論に向いています。
Note|with all due respect のフォーマル度と使い分け
「失礼ながら」と前置きしてから反論する表現は英語にいくつもありますが、それぞれフォーマル度が大きく異なり、場面を取り違えると印象を損ねます。
with all due respect は、その中でもっとも格式の高い部類に入ります。会議、商談、法廷、公式の議論といった、対立しながらも礼節を保つべき場で力を発揮します。一方、友人同士の会話でこれを使うと、急にかしこまりすぎて、かえって嫌味や慇懃無礼に聞こえることがあります。そうした砕けた場面で活躍するのが no offense です。「悪気はないんだけど」と軽く前置きするこの表現は、対等な関係でこそ自然に響きます。逆に、上司への異論や公式な反論で no offense を使うと、今度は軽率に聞こえてしまいます。つまり、この二つは「失礼ながら」という同じ役割を担いながら、使える相手と場面がほぼ正反対なのです。劇中の給仕長が客に対して with all due respect を選んだのも、接客という改まった関係だからこそ自然だったといえます。
同じ前置きでも、相手との距離と場の格式に合わせて選び分けることが、丁寧さを正しく届けるコツになります。
まとめ|給仕長の慇懃さに学ぶ「丁寧な反論」
with all due respect は、最大限の敬意を示す前置きでありながら、その後には反論や拒否が続くという、二面性を持った表現です。だからこそ、対立を避けられない場面でも、相手の面子を立てながら自分の立場を伝えることができます。
目上の人や立場が上の相手に「それは違います」と言わなければならないとき、この一言を頭に置くだけで、反論の角が驚くほどやわらぎます。劇中の給仕長のように、丁寧さを保ったままきっぱり線を引きたい場面で、頼りになる表現です。
礼儀を崩さず異を唱えるための備えとして、会話のレパートリーに加えてみてください。


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