「have a crush on」の意味と使い方|『フレンズ』S03E13で学ぶ英会話

「have a crush on」の意味と使い方を解説

海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。

小説やドラマを見ていて、登場人物の関係にすっかり感情移入してしまう。「この二人はきっと両想いだ」と勝手に確信して、あとから見当違いだったと気づく。そんな瞬間が、誰にでもあるはずです。

そんな熱中ぶりの中で飛び出すのが「have a crush on」、誰かに片思いしている、という表現です。『フレンズ』シーズン3第13話の中盤、レイチェルと本を交換したジョーイが、読みかけの小説の登場人物について語るシーンから、一緒に見ていきましょう。

目次

「have a crush on」の意味とニュアンス

have a crush on ~
意味:~に片思いしている、~に夢中になっている

誰かに恋心を抱いている状態を表す表現です。ただし、love のような重さはありません。多くの場合、相手には伝えていない、あるいは伝えられないでいる一方通行の想いを指します。日本語の「片思い」がいちばん近い訳語です。

中心にあるのは crush という語です。もともとは「押しつぶす」「握りつぶす」という意味の動詞で、名詞として使われるときも、その圧の感覚が残っています。胸がぎゅっと締めつけられるような、あの落ち着かない状態。恋の切なさを、押しつぶす力になぞらえた語だと考えると腑に落ちます。

使われる場面はかなり広く、学生時代の淡い憧れから、同僚への言い出せない好意まで幅広くカバーします。特徴的なのは、実際に関係を持つ可能性がなくても使える点です。俳優や歌手への憧れを celebrity crush と呼ぶように、相手に届く見込みがなくても成立する。この身軽さが、love や be in love との大きな違いです。

【ここがポイント!】

  • crush の核は「押しつぶす」――胸が締めつけられるあの感覚が語のもと
  • love より軽く、伝えていない一方通行の想いを指すことが多い一言
  • 有名人への憧れにも使える、届かなくても成り立つのが特徴

『フレンズ』S03E13のシーンで見てみよう

意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。

ジョーイとレイチェルは、おたがいのお気に入りの本を交換して読むことにしました。ジョーイが手にしたのは、19世紀の名作小説『Little Women(若草物語)』。ふだん本を読まない彼が、めずらしく夢中になっています。ところが、その熱中ぶりには大きな勘違いが混ざっていました。

Chandler: You’re liking it, huh?
(気に入ってるんだな?)

Joey: Oh, yeah. Amy just burned Jo’s manuscript. I don’t see how he could ever forgive her.
(ああ、最高だよ。エイミーがジョーの原稿を燃やしたところなんだ。あいつ、どうやったら彼女を許せるんだよ。)

Ross: Um, Jo’s a girl. It’s short for Josephine.
(あの、ジョーは女の子だよ。ジョセフィンの略なんだ。)

Joey: But Jo’s got a crush on Laurie.
(でもジョーはローリーに片思いしてるじゃないか。)

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シーン解説と心理考察

ジョーイの読書ぶりは、彼らしさが全開です。登場人物に完全に感情移入し、原稿を燃やされた側の心情を本気で心配している。ふだん台本以外はほとんど読まない男が、ここまで物語に入り込んでいる。その素直さが、まず微笑ましく表れています。

面白いのは、勘違いの中身です。彼は Jo を男性だと信じ込んでいた。そこへロスが、Jo は Josephine の略で女性だと訂正する。ところがジョーイは訂正を受け入れる代わりに、「でもジョーはローリーに片思いしてる」と反論してしまう。彼の中では、片思いしている側=男性、という前提が動いていないのです。訂正されてもなお自分の理解を守ろうとする姿勢に、彼の一途さがにじみます。

そして皮肉なことに、ローリーもまた男性の名前でした。訂正すればするほど、ジョーイの混乱は深まっていく。名前だけで人物像を組み立ててしまう危うさと、それでも物語を愛する純粋さが、この一言に重なっています。読書に不慣れな人ほど陥りがちなつまずきを、笑いに変えて見せる場面です。

『フレンズ』流・覚え方のコツ

crush は、缶を片手でぐしゃりと握りつぶす動作でイメージすると、身体に残ります。

思い浮かべたいのは、空き缶ではなく自分の胸です。誰かのことが気になって仕方ないとき、胸のあたりが内側からぎゅっと握られるような感覚になる。あの圧が crush の正体です。息が浅くなって、落ち着かなくて、それでも悪い気はしない。恋の始まりの、あの身体感覚そのものを名詞にした言葉だと考えてください。

ジョーイが本を抱えたまま「ジョーはローリーに crush してる」と大真面目に力説する姿を思い出しながら、胸をぎゅっと握る手つきを一度やってみる。そうすると、have a crush on が「胸を押しつぶされている状態を抱えている」という絵として定着します。

このエピソードの他のフレーズ

例文で覚える「have a crush on」

言い出せない想いから、届かない憧れまで。crush の守備範囲を、三つの場面で確かめてみましょう。

I think I have a crush on my coworker.
(同僚に片思いしてるみたい。)
友人にそっと打ち明ける場面です。I think を添えることで、自分でもまだ確信が持てない、あの初期の揺れた気持ちがそのまま伝わります。

She’s had a crush on him since high school.
(彼女、高校の頃からずっと彼に片思いしてるの。)
長く続く想いを語る場面。現在完了と since を組み合わせると、その気持ちがいまも続いていることが一息で表せます。

A: You’ve watched that movie four times this month.
B: I know. Okay, fine—I have a crush on the lead actor.
(A:今月、その映画もう4回目だよね。)
(B:わかってる。はいはい、主演俳優に夢中なんです。)
友人にからかわれて白状するやりとりです。相手が有名人でも crush はそのまま使えます。恋愛関係になる見込みがなくても成立する、この身軽さが crush らしさです。

あわせて覚えたい関連表現

be into someone
(~が気になっている、~に興味がある)
crush より口語的で、いま現在の関心の強さを表します。crush が「胸が締めつけられる状態」を名詞で切り取るのに対し、こちらは「相手のほうへ気持ちが向いている」という方向性を示す言い方です。

have feelings for someone
(~に好意を抱いている)
crush より真剣で、感情の幅も広い表現です。淡い憧れに限らず、相手を大切に思う気持ち全体を含みます。crush が軽さを保つのに対し、こちらは関係の行方を左右するような重みを持ちます。

be head over heels for someone
(~に首ったけ)
逆さまになるほど夢中、という誇張から生まれた表現で、crush よりずっと強い状態を指します。crush が「気になり始めた段階」なら、こちらは「もう抜け出せない段階」です。

Note|crush は、なぜ物語の中で繰り返し描かれてきたのか

ジョーイが混乱の末に口にした crush は、19世紀の小説を読みながら出てきた言葉でした。この重なりは、実は偶然ではありません。crush は英米の物語の中で、驚くほど繰り返し描かれてきたモチーフだからです。

『若草物語』がまさにその典型です。この作品では、隣家の青年ローリーが Jo に想いを寄せますが、Jo はその気持ちに応えません。想いが一方通行のまま流れていく構図が、物語の骨格のひとつになっています。青春を描いた小説やドラマが crush を手放さないのは、この一方通行という状態が、物語をつくるうえで都合がいいからです。両想いはそこで話が終わってしまう。しかし片思いは、告げるか告げないか、いつ気づかれるか、という緊張を延々と生み続けます。crush は、物語を前に進める燃料として機能するわけです。

さらに crush には、報われなくても物語が成立するという強みがあります。恋が実らなくても、その経験が人物を成長させる。だから青春ものは crush を出発点に選び続けてきました。ジョーイがのめり込んだ『若草物語』も、彼が同時に語っていた『フレンズ』の仲間たちの恋模様も、根はここでつながっています。

そう考えると、ジョーイの勘違いも見え方が変わります。彼は誰が誰に crush しているかを取り違えました。ちなみに原作では、Jo がローリーに片思いしているのではなく、ローリーのほうが Jo を想っています。矢印の向きが逆なのです。しかし彼が「この物語には片思いがある」と嗅ぎ取ったこと自体は、まったく的を外していません。crush を探し当てる嗅覚だけは、確かだったと言えます。

矢印の向きを間違えても、恋の存在は見抜いていたのですね。

まとめ|ジョーイの勘違いが教えてくれること

have a crush on が指しているのは、成就した恋ではありません。相手に届いていない、けれど確かに胸を占めている想いです。crush という語が持つ「押しつぶす」感覚が、その落ち着かなさをそのまま抱えています。

この一言があると、恋の話が語りやすくなります。love と言えば重すぎる、like では軽すぎる。その中間にある、言葉にしにくい段階をひとことで置ける。だから英語圏の会話では、恋の入り口はたいてい crush から始まります。

気になる人の話をするとき、あるいは好きな俳優への熱を語るとき。ジョーイが本を抱えて力説したこの表現を、会話のレパートリーに加えてみてください。

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