海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
『フレンズ』シーズン5第19話では、ピザを届けに来た女性とのちょっとした会話をめぐって、「あれは口説いていたのか」という言い合いが何度も起こります。同じ flirting という語が、人によって違う意味合いで使われていきます。
気のあるそぶりと、ただの世間話の境目はあいまいです。その境目をめぐって交わされる言い分と聞き返しの英語を、場面の順に見ていきます。
「that was just casual conversation」口説いたのか、世間話か
チャンドラーとジョーイの部屋で、チャンドラーがモニカとのデートの支度をしているところに、ロスがやって来ます。そこへピザの配達のケイトリンが現れ、チャンドラーは Somebody got a haircut. と、彼女が髪を切ったことに触れます。ケイトリンが帰ってドアが閉まると、ロスはチャンドラーを問い詰めます。
Chandler: I was not flirting.
(口説いてなんかないって。)
Ross: Well, it was totally flirting!
(いや、完全に口説いてただろ!)
Ross: “Somebody got a haircut..”
(「誰かさん、髪切った?」)
Chandler: Okay, first of all, the impression, uncanny.
(いいか、まず第一に、そのものまね、そっくりだな。)
Chandler: And second, that was not flirting, that was just casual conversation between two people.
(それから第二に、あれは口説いてたんじゃない。二人の人間の、ただの世間話だ。)
Chandler: That is all!
(以上!)
Friends Season5 Episode19(The One Where Ross Can’t Flirt)
flirt は、相手に気があるようなそぶりを見せたり、軽く口説くような言葉をかけたりすることを指す動詞です。日本語の「口説く」よりも軽く、冗談めかしたほめ言葉や目配せまで含む幅の広い語として使われることが多いようです。一方の casual conversation は「気軽な会話」「世間話」で、特別な意図のないやりとりを指します。
チャンドラーは、自分の言葉はただの世間話の側だと主張しています。totally は「完全に」と強める副詞で、ロスはそれを真っ向から否定する形です。ロスがチャンドラーの口調をまねると、チャンドラーは the impression, uncanny と、ものまねの出来を皮肉まじりにほめてから反論に入ります。first of all と second で論点を並べ、最後に That is all! と言い切って話を終わらせる流れです。
同じ一言でも、言った本人は世間話のつもりで、見ていた側には口説き文句に聞こえることがあります。この場面では、その食い違いが flirting と casual conversation という2つの語で言い分けられています。
「It doesn’t mean anything.」気のあるそぶりに意味はあるのか
場面がモニカとレイチェルの部屋に移り、皆が集まっているところで、ロスは仲間の前でも「チャンドラーが配達の女性を口説いていた」と持ち出します。ところがモニカは、大したことではない、自分もしょっちゅうしていると答えます。今度はチャンドラーのほうが聞き返す番です。
Chandler: So, uh..
(で、その……)
Chandler: …you-you-you flirt with guys all the time?
(……君、しょっちゅう男に気のあるそぶりをしてるわけ?)
Monica: Sure. It doesn’t mean anything. Just like I know it doesn’t mean anything with you.
(もちろん。何の意味もないわよ。あなたのだって何の意味もないって分かってるのと同じ。)
Friends Season5 Episode19(The One Where Ross Can’t Flirt)
flirt with ~ は「〜に気のあるそぶりを見せる」で、相手は with のあとに置きます。all the time は「しょっちゅう」「いつも」という頻度の表現で、チャンドラーはそこに引っかかって聞き返しています。
モニカの It doesn’t mean anything. は「深い意味はない」「本気じゃない」と、行為と気持ちを切り離す言い方です。続く Just like I know it doesn’t mean anything with you. は、チャンドラーのケイトリンへの言葉も同じく意味がないと分かっている、と付け加える一文です。チャンドラー自身の言い分と同じ形で返している一文です。
最初の場面でロスに責められていたチャンドラーが、ここでは責める側に回っています。flirting に意味があるかないかという問いは、立場が入れ替わると答えも変わる、という流れになっています。
「That was flirting?」本人のつもりと相手の受け取り方
ロスはもう一枚ピザを頼むと言い出し、次にケイトリンが来るまでの間、台所でフィービーに話しかけます。ベジタリアン用のピザの話を振られたフィービーは、こう返します。
Phoebe: Why are you being weird?
(なんで変な感じなの?)
Ross: Do you like it?
(気に入った?)
Phoebe: No. That would be, “Why are you being cute?”
(違う。それなら「なんでかわいい感じなの?」って言うでしょ。)
Ross: Okay. I’m working on my flirting.
(そうか。口説き方の練習中なんだ。)
Phoebe: Oh! I did not get that.
(ああ!全然わからなかった。)
Friends Season5 Episode19(The One Where Ross Can’t Flirt)
be being + 形容詞 は、その人の普段の性格ではなく「今だけそう振る舞っている」ことを表します。Why are you being weird? は「なんで今日は変なの?」という問いです。フィービーは、好意的に受け取ったなら weird ではなく cute と言うはずだと説明しています。work on ~ は「〜に取り組む」「〜を練習する」で、ロスは自分の言葉を口説く練習だと明かします。
その後ロスはケイトリン本人にガスの話を続け、彼女は帰ってしまいます。追いかけたレイチェルが、建物の外の通りで事情を説明します。
Rachel: But, it’s actually, uh, my friend Ross..
(でも、実は、その、友達のロスのことなの……)
Rachel: …he, uh, he just gets really nervous when he’s flirting.
(……彼、えっと、口説くときにすごく緊張しちゃうだけなの。)
Caitlin: Oh, my God! That was flirting?
(うそ!あれ、口説いてたの?)
Friends Season5 Episode19(The One Where Ross Can’t Flirt)
That was flirting? は、平叙文の語順のまま語尾を上げて驚きを示す聞き返しです。冒頭でチャンドラーが「あれは口説いてない」と言った場面とは逆に、ここでは本人が口説いたつもりなのに、相手には伝わっていませんでした。
まとめ|flirting をめぐる言い分
flirting と casual conversation、It doesn’t mean anything.、be being + 形容詞、That was flirting? を見てきました。同じ語でも、言った側と受け取った側で意味合いがずれていく様子が、この回の会話からよく分かります。
言葉のつもりと伝わり方のずれに注目しながら、ロスたちのやりとりを観てみるのも一つの楽しみ方です。
同じエピソードのほかのコラムやフレーズ記事では、この回の別の場面の英語を扱っています。


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