海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
午前中ずっと同じ資料とにらめっこして、頭の中がぼんやりしてきたとき、席を立って外の空気を吸いに行った経験はありませんか。
そんな「頭のもやを払う」という意味を持つ「clear away the cobwebs」を、『メンタリスト』シーズン3第8話から見ていきます。事件のない静かな午後、オフィスを抜け出したジェーンが、リズボンからの電話に果物を買っている理由を答える場面です。一緒に見ていきましょう。
「clear away the cobwebs」の意味とニュアンス
clear away the cobwebs
意味:頭をすっきりさせる、気分を切り替える
cobweb は「クモの巣」を指す語です。長いあいだ人が入っていない物置や屋根裏に、うっすらと張っているあの巣を思い浮かべると分かりやすくなります。clear away the cobwebs は、その巣を払い落とすように、頭や気分にたまったよどみを取り払うという意味で使われます。
対象になるのは、眠気やぼんやりした感覚、長時間の作業で鈍った集中力、しばらく使っていなかった勘といったものです。散歩に出る、窓を開ける、冷たい水で顔を洗う、軽く体を動かす。こうした、体を使って気分を切り替える行為と結びついて使われることが多い表現です。
なお、イギリス英語では blow away the cobwebs という形もよく使われます。風で吹き飛ばすという絵が入るぶん、海辺や丘の上を歩くような場面と相性のよい言い方になります。
【ここがポイント!】
- 核にあるのは「長く放置された場所に張るクモの巣を払う」という絵
- 対象は眠気・ぼんやり・鈍った勘といった、頭や気分のよどみ
- 散歩や外の空気など、体を動かす行為とセットで使うのがコツ
『メンタリスト』S03E08のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
事件のない静かな午後、CBIのオフィスでは捜査班が手持ち無沙汰にしています。そこへ、無断で外出したジェーンにリズボンが電話をかけます。「チームの士気を上げている」と言い張るジェーンに、その中身は何なのかとリズボンが問い返す、日常的なやり取りの場面です。ここで cobwebs が飛び出します。
Lisbon: What do you mean, “boosting morale”?
(「士気を上げる」って、どういう意味?)Jane: I’m buying fresh fruit– clears away the cobwebs, chases away the blues.
(新鮮な果物を買ってるんだ。頭のもやが晴れるし、憂うつも吹き飛ぶ)Lisbon: Oh, good. Get me a red delicious.
(あら、いいわね。レッドデリシャスをお願い)Jane: Okay.
(了解)The Mentalist Season3 Episode8(Ball of Fire)
シーン解説と心理考察
ジェーンが果物を買うためだけにオフィスを抜けたと知っても、リズボンは咎めるでもなく、自分の分のりんごを頼みます。この短いやり取りに、二人が積み重ねてきた時間が表れています。
直前、リズボンは「あなたの居場所が分からないと落ち着かない」と正直に口にしていました。相棒の突飛な行動を止められないと知りつつ、それでも所在だけは確かめておきたい。そんな気持ちがにじむ場面です。
ジェーンの側は、捜査とはおよそ関係のない行動を「士気を上げる」と言い切ります。新鮮な果物には頭のもやを晴らす力があるという彼なりの理屈があり、それを cobwebs と blues という二つの絵で軽やかに並べるところに、言葉選びの癖が表れています。
穏やかなやり取りですが、この電話の直後に銃声が鳴り、ジェーンは連れ去られます。何気ない日常が断ち切られる直前の会話として、後から見返すと違う重さで響きます。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
しばらく開けていない物置の扉を開けたときの、あの薄いクモの巣を思い浮かべてみてください。手ではらうと奥まで光が届き、こもっていた空気が入れ替わります。clear away the cobwebs は、その動作をそのまま頭の中に持ち込んだ表現です。
覚えるときは、払う対象を「頭の中のクモの巣」と決めると意味を結びつけやすくなります。cobweb の前半は Middle English でクモを指した coppe に遡り、後半の web と結びついた語です。
果物スタンドの前で「頭のもやが晴れる」と言うジェーンの姿と、赤いりんごの色を一緒に覚えておくと、場面ごと記憶に残ります。
例文で覚える「clear away the cobwebs」
体を動かして気分を切り替える場面で力を発揮する表現です。日常・仕事・会話のやり取りの3つの形で見ていきましょう。
A short walk after lunch clears away the cobwebs.
(昼食後の短い散歩で、頭がすっきりする)
昼休みの習慣を人に話すときの一言です。「行為」を主語に置くのが、この表現のいちばん基本の形になります。
I need a coffee to clear away the cobwebs before the meeting.
(会議の前に、頭をすっきりさせるコーヒーが要る)
朝いちばんの打ち合わせを控えた場面で使えます。to 不定詞で目的としてつなぐと、その行動を取る理由まで一息で伝わります。
A: You’ve been staring at that screen for three hours.
B: I know. I’m going outside to clear away the cobwebs.
(A:3時間もその画面を見つめてるよ)
(B:分かってる。外に出て頭をすっきりさせてくる)
同僚に声をかけられた場面のやり取りです。指摘に対する返しとして使うと、席を立つ理由をひとことで説明できます。
あわせて覚えたい関連表現
clear one’s head
(頭を整理する、冷静さを取り戻す)
考えごとや混乱を整理する方向の表現です。clear away the cobwebs が眠気やよどみを払うのに対して、こちらは頭の中の情報や感情を落ち着かせるときに使われます。
blow away the cobwebs
(頭をすっきりさせる)
ほぼ同じ意味で、イギリス英語でよく使われる形です。払うのではなく風で吹き飛ばすため、海辺や丘を歩くような、外の風に当たる場面と相性のよい言い方になります。
chase away the blues
(憂うつを吹き飛ばす)
劇中で cobwebs と並べて使われていた表現です。対象が「気分の落ち込み」である点が違いで、頭のよどみを指す cobwebs とは払う相手が異なります。
Note|cobweb の cob は何を指す言葉なのか
clear away the cobwebs の中心にある cobweb という語は、いま見ると一つのまとまった単語に見えます。ただ、この語の前半にある cob だけを取り出してみると、現代の英語ではほとんど姿を見かけません。
cobweb の cob は、中世英語でクモを指した coppe に遡ります。後半の web は「織られたもの、網」を表す語で、cobweb は「クモ+網」という構成です。spider と spiderweb のように同じ内容を二度重ねた語ではありません。
現代英語では cob だけを「クモ」の意味で使わないため、語の内部が見えにくくなっています。ただし、前半の意味が薄れたあとに説明語 web が追加された典型例だという成立順序は確認できません。
cobweb は実際のクモの巣を指すほか、頭の鈍さや古びた考えを表す比喩にも使われます。使われていない場所にクモの巣が張る場面を連想することはできますが、「放置時間そのもの」が語義になったとまでは言えません。
clear away the cobwebs は、頭の鈍さや気分のよどみを、巣を払う動作にたとえた表現です。眠気を払う場面にも、休みのあとに感覚を取り戻す場面にも使えますが、選ばれる意味は文脈から決まります。
払っているのはクモの巣ではなく、動いていなかった時間のほうなのかもしれません。
まとめ|頭の中の巣を払うという発想
clear away the cobwebs は、頭や気分にたまったよどみを、クモの巣を払うように取り除くという表現でした。cobweb の比喩が、鈍さを払い、すっきりさせる動きを伝えます。
この一言を持っておくと、「ちょっと外の空気を吸ってくる」「頭を切り替えたい」といった気持ちを、理由まで含めて短く伝えられるようになります。散歩、コーヒー、窓を開ける動作。どれもこの表現とまっすぐつながります。
事件のない午後に果物を買いに出たジェーンのように、気分を変える口実として。仕事の合間に頭を切り替える一言として、表現の引き出しに加えてみてください。


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