海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
打ち合わせの冒頭で話がいきなり細部に飛んでしまい、「その前に決めることがある」と言いたくなった経験はありませんか。
そんなときに使える「まずは大事なことから」という意味の「first things first」を、『メンタリスト』シーズン3第8話から見ていきます。収監中の人物がリズボンを呼び出し、ジェーンの失踪について取引を持ちかける場面です。一緒に見ていきましょう。
「first things first」の意味とニュアンス
first things first
意味:まずは大事なことから、順番に片づけよう
first things(大事なことがら)を first(最初に)。同じ語を二度置くだけの、とても単純な作りの表現です。用件が複数あるときに、優先順位の高いものから片づけようと宣言する定型句として使われます。
使われる場面は幅広く、会議の切り出し、作業の段取り、家事の手順まで、順序を整える必要があるところならどこでも登場します。文の頭に置いて、そのあとに何を先にするかを続けるのが基本の形です。
もうひとつ、覚えておきたい働きがあります。話が先走った相手に対して「その話はあと」と伝える、やわらかい制止です。命令の形を取らずに順序だけを示せるため、相手の面子を保ったまま話を戻せます。劇中で使われているのも、この用法です。
【ここがポイント!】
- first things を first に。同じ語を重ねただけの覚えやすい定型句
- 会議の切り出しから家事の段取りまで、順序を整える場面全般で使える一言
- 先走った相手をやわらかく制止する働きもあると押さえておくのがコツ
『メンタリスト』S03E08のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
ジェーンが連れ去られ、捜査が行き詰まるなか、リズボンのもとに一本の電話が入ります。かつてジェーンが逮捕に導いた医師ワグナーが、収監先から情報があると言ってきたのです。急いで面会に向かったリズボンに、彼はゆっくりと話を切り出します。ここで first things first が飛び出します。
Lisbon: What’s the information?
(情報というのは?)Wagner: I’ve been in contact with the person behind Jane’s disappearance.
(ジェーンの失踪の背後にいる人物と、私は連絡を取っていました)Lisbon: Who’s that?
(それは誰?)Wagner: First things first.
(まずは順番に)Lisbon: What do you want?
(何が望みなの?)The Mentalist Season3 Episode8(Ball of Fire)
シーン解説と心理考察
名前を尋ねられた瞬間に返された first things first が、会話の温度を変えています。答える代わりに順序の話にすり替えることで、話の主導権が静かに移ります。
急いでいるのはリズボンの側です。ジェーンの命がかかっており、一分でも早く名前が欲しい。対してワグナーは収監中の身で、時間だけはいくらでもあります。この非対称を彼は正確に把握しており、丁寧な物腰を崩さないまま、決めるのは自分だと示しています。
言い方そのものは、会議でも使えるほど穏やかです。声を荒らげることも、条件を先に突きつけることもしていません。それでいて、次に何を話すかを決めたのは彼のほうだった。この落差が、静かな圧力として響きます。
続けて彼が持ち出したのは、自分の裁判と量刑の話でした。順序を握った側が、その順序に沿って自分の望みから並べていく。定型句がそのまま交渉の道具として使われる場面と言えます。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
やることを書き出したリストの、いちばん上の項目に指を置く。first things first は、その動作をそのまま言葉にした表現です。指を上に置いたまま口に出すと、形ごと定着します。
同じ語を二度使うだけなので、覚えるための工夫はほとんど必要ありません。むしろ押さえておきたいのは、この一言を口にした人が「順序を決める側に回る」という点です。
名前を聞かれた瞬間に穏やかな笑みでこの言葉を返し、話を自分の条件に引き戻すワグナーの姿を重ねておくと、単なる段取りの表現ではないことまで一緒に記憶に残ります。
例文で覚える「first things first」
順序を整えたい場面で、角を立てずに使える表現です。会議・日常・会話のやり取りの3つの形で見ていきましょう。
First things first — let’s confirm the deadline.
(まずは大事なことから。締め切りを確認しよう)
打ち合わせの冒頭での一言です。ダッシュでつないで本題を続けると、議題の順序を自然に示せます。
First things first, are you hurt?
(何よりまず、けがはない?)
事故の知らせを受けた場面で使えます。優先すべきものが人の安全であることを、短く伝えられる形です。
A: I’ve already picked the colors and the font for the logo.
B: First things first. Have we agreed on what the logo is for?
(A:ロゴの色とフォントはもう決めたよ)
(B:まずは順番に。そのロゴが何のためのものか、合意はできてる?)
社内でのやり取りです。先走った相手を止めるとき、否定から入らずに順序の話へ移せます。
あわせて覚えたい関連表現
one thing at a time
(一度にひとつずつ)
同時にいくつも進めようとする相手を落ち着かせる表現です。first things first が「どれを先にやるか」を扱うのに対して、こちらは「同時にやらない」ことを求めます。
let’s start with
(まずは〜から始めよう)
直後に必ず具体的な内容が続きます。first things first は内容を言わずに置くこともでき、それだけで順序を戻す働きを持つ点が違います。
hold that thought
(その話はいったん置いておいて)
相手の発言を一時保留する表現で、あとで戻る前提があります。first things first には、戻る保証までは含まれません。
Note|会議で順序を戻すとき、いちばん角が立たない一言
話が先走った相手を止めたいとき、英語にはいくつもの言い方があります。どれを選ぶかで、相手に残る印象はかなり変わります。
first things first の強みは、主語がないことです。誰かを主語に立てて「あなたは先走っている」と言う形にならないため、批判の矛先がどこにも向きません。順序という中立な話題だけが置かれます。これに対して Let me stop you there は、let me という主語が入るぶん「私があなたを止める」構図が表に出ます。相手が目上の場合、この差は小さくありません。We need to prioritize は主語が we で対等ですが、硬さがあり、雑談まじりの打ち合わせではやや浮きます。
もうひとつの違いは、その後に何を続けるかの自由度です。first things first は単独で置いてもよく、そのあとに質問を続けても、議題を宣言しても成立します。制止としても、切り出しとしても使える。この二役をこなせる表現は、会議で使える定型句のなかでも多くはありません。
一方で、注意しておきたい面もあります。順序を決める側に立つ言い方であるため、同じ言葉でも、立場が上の人が使えば穏やかな整理に、下の人が使えばやや強い主張に聞こえることがあります。劇中のワグナーが交渉の道具として使えたのも、この性質があってこそでした。
first things first を使うときは、「何を先にするか」を自分が示す立場に回る、と意識しておくと使いどころを外しません。締め切りの確認から始めるのか、目的の合意から始めるのか。その一言目が、その場の議論の順番になります。
短い定型句ほど、置く位置で役割が変わります。
まとめ|順序を決める側に回る一言
first things first は、同じ語を二度重ねただけの、覚えやすい定型句でした。用件が複数あるときに優先順位の高いものから片づけようと宣言し、ときには先走った相手をやわらかく制止します。
この一言を持っておくと、会議の切り出しでも、慌てている相手への声かけでも、否定から入らずに話の順番を整えられるようになります。主語を立てないぶん、相手を責める形にならないのも使いやすさにつながります。
急かされても慌てず、何から片づけるかを自分の側で決められる。そんな一言です。


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