海外ドラマを使って英語表現を学ぶ『ドラマdeエイゴ』へようこそ。
何が怖いのかうまく説明できないのに、その人や場所を思い出すだけで背中がぞわりとする。そんな感覚を持て余したことはありませんか。
その居心地の悪さをそのまま言葉にする「give someone the creeps」を、『メンタリスト』シーズン3第9話の後半、自称霊能者が語る狼男の説を聞かされた保安官事務所の面々が反応するシーンから、一緒に見ていきましょう。
「give someone the creeps」の意味とニュアンス
give someone the creeps
意味:〜をぞっとさせる、気味悪がらせる
creep はもともと、虫や小動物がゆっくり這う動きを表す語です。その動きから生まれた the creeps は、皮膚の上を何かが這うような、落ち着かない不快感を指します。give を添えることで、その感覚を誰かに手渡す、という形になります。
はっきりした恐怖とは少し違います。銃を突きつけられた恐ろしさではなく、理由を説明しきれないまま身体が先に反応してしまう、あの感じです。だから対象は人でも場所でも物でもよく、古い建物、動かない人形、じっと見てくる相手など、幅広く使えます。
文の形では、怖がらせる側が主語に立つ点に注意が必要です。日本語では「私はあれが怖い」と自分を主語にしがちですが、英語では That gives me the creeps. と対象を主語に置きます。the が付いた複数形で固定されているので、この形ごと覚えてしまうのが確実です。
【ここがポイント!】
- 核は「皮膚の上を何かが這う」という、身体で先に来る感覚
- はっきりした恐怖ではなく、理由を言葉にしにくい不快さを表す言い方
- 怖がらせる側が主語に立つので、日本語と主語の位置が入れ替わるのがコツ
『メンタリスト』S03E09のシーンで見てみよう
意味を押さえたところで、実際のドラマシーンを見ていきましょう。
捜査に協力を申し出た自称霊能者エリス・マーズが、被害者の家で見つけたという狼の歯を持ち出し、犯人は自分を狼だと信じ込んでいる、と語ります。あまりに突飛な説にジェーンはあえて乗ってみせ、話を丘の上の現場へと運んでいきます。その横で、聞いていた保安官補が思わず本音を漏らします。
Ellis Mars: HE BELIEVES HE’S A WEREWOLF OR A WOLF MAN. HENCE, OF COURSE, THE MONTHLY PATTERN OF HIS CRIMES. HIS BEHAVIOR IS DRIVEN BY THE PHASES OF THE MOON.
(犯人は自分を狼男だと信じている。だから犯行が月ごとの周期になるのです。彼の行動は月の満ち欠けに支配されている)[…]
[…]
(この間の複数発話は、引用の焦点とネタバレ範囲を保つため表示付きで省略)Jane: AND SINCE SERIAL KILLERS ALWAYS HAVE A VERY STRONG URGE TO RETURN TO THE SCENE OF THEIR CRIMES… YEAH. WOULDN’T WANNA BE UP IN THOSE HILLS TONIGHT.
(連続殺人犯というのは、現場に戻りたいという強い衝動を必ず持っているものだから…そう。今夜あの丘の上には、行きたくないね)Jane: THAT WEREWOLF STUFF GIVES ME THE CREEPS.
(狼男うんぬんの話は、ぞっとするな)Ellis Mars: WELL, NO, IT’S EASY TO BE SCARED OF THE UNKNOWN, HMM?
(いやいや、未知のものを怖がるのは無理もないことですよ)The Mentalist Season3 Episode9(Red Moon)
シーン解説と心理考察
同じテーブルに、三種類の態度が並んでいるのが見どころです。霊能者は自分の説を疑っていません。保安官補は素直に怖がっています。そしてジェーンは、怖がってもいなければ信じてもいないまま、その場の空気を利用しています。
ジェーンの相づちは会話をつなぐためのものではありません。犯人は現場に戻る、今夜は丘に行きたくない。そう口に出すことで、聞いている誰かの耳に一本の道筋を通そうとしています。数分後に彼が保安官補へ持ちかける提案を見ると、この雑談がすでに仕掛けの一部だったことが分かります。
その企みに気づかないまま、the creeps という言葉で場の空気を代弁してしまうのが保安官補です。怖がる人と、怖がらせる仕掛けを組み立てる人が、同じ会話の中に並んでいる。短いやり取りに、このエピソードの構図がそのまま縮んで入っています。
『メンタリスト』流・覚え方のコツ
腕まくりをした腕の上を、小さな虫がゆっくり這っていくところを想像してみてください。痛くもないし、危険もない。それなのに背中がぞわりとして、思わず手で払いのけたくなります。この、理由を説明する前に身体が動いてしまう感じが the creeps です。
give は、その感覚を相手に手渡す動きを表します。だから主語は、怖がっている人ではなく、ぞわりとさせてくる側に立ちます。劇中では、狼男の話を聞かされた保安官補が「あの話はこっちに the creeps をよこす」と言っています。話のほうが差し出してきて、こちらが受け取ってしまう。この受け渡しの向きで覚えると、主語の位置を間違えません。
例文で覚える「give someone the creeps」
対象が主語に立つ表現です。物、人、場所という三つの向け先で見てみましょう。
That doll gives me the creeps. Can we put it in another room?
(あの人形、ぞっとするんだけど。別の部屋に置いてもいい?)
家の中の物について話す、いちばん身近な使い方です。危険ではないと分かっていても落ち着かない、という気持ちがそのまま伝わります。
Something about the way he smiled gave me the creeps.
(彼の笑い方の何かが、どうにも気味悪かった)
違和感をうまく言葉にできないときの言い方です。Something about … と組み合わせると、説明しきれなさごと表現できます。
A: How was the old hotel you stayed at?
B: Beautiful building, but the hallway on the third floor gave me the creeps.
(A:泊まった古いホテル、どうだった?)
(B:建物は綺麗だったよ。ただ、三階の廊下だけはぞっとした)
旅先の話をする会話です。褒めたうえで but でつなぐと、怖がりというより率直な感想として響きます。
あわせて覚えたい関連表現
creep someone out
(〜を不快にさせる、気味悪がらせる)
同じ creep から生まれた表現ですが、相手を不快にさせるという行為のほうに焦点があり、より口語的で直接的です。今回のフレーズは、感じている側の身体反応が前に出ます。
send shivers down someone’s spine
(背筋をぞくぞくさせる)
恐怖だけでなく、感動や興奮でも使えるのが違いです。今回のフレーズは基本的に不快な方向に限られるため、褒め言葉として使うことはできません。
be spooky
(不気味だ)
対象の性質を述べる形容詞で、誰が感じたかは示しません。今回のフレーズが必ず感じている人を文の中に置くのに対し、こちらは対象だけを描きます。
Note|説明できない不気味さは、どこから来るのか
the creeps のやっかいなところは、なぜ怖いのかを聞かれても答えにくい点にあります。危険があるわけではない。それなのに身体が先に反応してしまう。この感覚には、実はある共通した特徴が指摘されています。
不気味さを扱った研究では、対象が危険かどうかを判断しきれない曖昧さが、この感覚を強めるという見方が示されてきたとされます。明らかな脅威なら、逃げるか身構えるかという反応が決まります。ところが、安全とも危険とも決めきれない対象に出会うと、その判断が宙づりのまま残る。人形や作り物の顔に対する居心地の悪さが繰り返し研究の対象になってきたのも、人間に似ているようで少し違う、という宙づりの状態が典型的だからだと説明されることが多いようです。
劇中の狼男の話も、まさにこの宙づりを作り出しています。犯人が本当に狼になるわけではない、と霊能者自身が断っています。それでも、自分を狼だと信じている人間が丘のどこかにいるかもしれない、という状態は残る。危険の輪郭が定まらないまま、想像だけが具体的になっていきます。
理由を言えない感覚に、英語がわざわざ the creeps という名前を与えているのは、名指しできないものを名指しするためだといえるかもしれません。
説明できないから、ひとまず名前をつけておく。言葉にはそういう仕事もあります。
まとめ|言葉にしにくい感覚に、名前を与える
give someone the creeps は、恐怖の強さを測る表現ではありません。理由を説明できないまま身体が反応してしまう、あの宙づりの感覚を名指しする言い方です。だからこそ、危険がないと分かっている相手や場所にも使えます。
主語が「ぞわりとさせてくる側」に立つことを押さえておけば、日常の感想から旅先の思い出話まで、そのまま応用できます。うまく説明できない違和感を、無理に理屈へ変換せずに伝えられる表現でもあります。
言葉にしづらい感覚に出会ったとき用の一言として、表現の引き出しに加えてみてください。


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